勲章
俺が事件を解決してから3日後、事態は急変する。
爆破された冒険者ギルドの地下から多数の遺体が発見されたのだ。
どうやら冒険者の遺体をギルド職員の1人が埋葬せずに保管していたらしい。
で、ここからが怖い。遺体を隠していた職員は直ぐに判明して身柄を確保されたが、取り調べの最中に体内から多数の蛇がそのギルド職員の体を食い破って出て来てそのまま死んでしまったらしい。
ホラーだ、スプラッターだ、フグリアンより全然怖いよ体を食い破って出て来る蛇。
その蛇も普通の蛇じゃなかったらしく、退治するのに苦労したとかなんとか。
怖いデスネー、ホラーですねー。
それで捜査機関がそのギルド職員の自宅を調査して判明したのが死体50体を生贄にした邪神さま復活計画!
邪神さま!邪神さまって!!!
えっ!?なんだって!?って思ったよ聞いた時。
邪神さまよ、邪神さま。今時、邪神さまなんて無い無い!ダサい!!
ダサ過ぎる!
よこしまな神様だってか!おかしいよねそれ!!よこしまな神様信仰するって頭おかしいよね!!
いや絶対おかしいって。
つか失礼じゃ無い?邪神さまに対して。せめて名前付いてたら良かったのに。
邪神ハルマゲドーンとか邪神サファリパークとか邪神アウトレットとか邪神フリーマーケットとか。
なんでも良いんだよね、それらしく聞こえるから名前さえ付いてたら。
邪神の部分が役職名なのかなぁって納得出来るからね、治部少とか織部正とかみたいに。
でも邪神さまって聞いた瞬間吹き出して白い目で見られたよ。
しょうがないじゃんツボに入ったんだもん邪神さま。
説明にきた役人が言うには、邪神復活計画を冒険者ギルド地下で企てていたのはやはり『闇夜の蛇』で、その企みを阻止する事が出来たのは組織を裏切ったミッキーの暴発だそうだ。
ただミッキーはあくまでも犯罪者なので表立って表彰する訳にはいかないから、司法取引的な物で別人になって幸せに暮らせるらしい、良かったなミッキー!!
んで表向きには爆破実行犯であるミッキーを突き止めた俺が表彰され勲章を貰える事になった。
これは完全にウィンウィンの関係だなミッキー!お前の甲高い声、なかなか良いんじゃないかと思ってたところだったんだよ。
そして今、ベイラー皇帝から勲章を授与されパーティ会場で酒をがぶ飲み中な訳である。
ベイラー皇帝のハゲデブ具合に吹き出さなかった自分を褒めてやりたい。
あのハゲ、知的な感じで「勲章を授ける」って似合ってねーんだよ!
あー酒うめー、ビール、ビールでブランデー。ブランデーは香りが良い!
うわぁブランデー流石にアルコール強いなぁ、美味いけど。
「これはこれは邪神復活を阻止した英雄殿」
ん?誰か話し掛けてきた、召喚された日にやらかした俺の周りには誰も来ない感じだったのに、
誰だコイツ?でもまぁ酔いが回って良い気分な俺は、率先して会話をするのだ!
会話のリードレディなのだ!
「これはこれはで邪神(笑)復活を阻止したヒナコデス・フランケンシュタイナーどえーす!
チェキ!!」
目元にチェキボーズ、これは惚れる!!どうする?痩せた貴族のおっさん。
「....私はキース・フォン・デギンと言う、英雄殿には覚えておいて貰いたいものですな」
何言ってんだこのアホ、酒飲んでるのに人の名前覚えられる訳無いだろうが。
「無理無理、酒入ってるから名前覚えるのむーりー」
「...ヒナコデス殿は邪神復活を阻止された訳だが邪神に関してどう思われるか?」
吹いた、ブランデー吹いたよ。邪神ってコイツも中二病か?いい歳して未だ中二病か?
「邪神ダサい!!つか邪神って呼んでて恥ずかしく無いのかな信者は、
ブヘ、ブフェフェぶはははははは!!邪神だって!恥ずかしいーーー!!無理無理!
邪神さまーって無理無理!!ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!アホだ!信者アホだ!」
「何故!邪神様を!!」
「邪神さまだってか!!うヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!苦しい苦しい!お腹痛い!お腹痛い!
邪神さまタスケテー!!うヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!ひーひーひー」
「貴様!!!!!!」
「へ?」
目の前の男の顔がいきなり爬虫類に変身し、俺の顔面目掛けてカメレオンの様に舌を伸ばしてくるのがゆっくりモードでハッキリと確認出来た。何これ、コイツ邪神さまの信徒?
俺は伸びてくる舌を袈裟斬りチョップで迎撃する。
「え?何?喧嘩売ってるの?」
舌を床に叩きつけられた爬虫類男の目が糸目に変わる。オーケー喧嘩売ってるのね。
周囲の人々が悲鳴を上げる中、爬虫類男が腰の剣を抜く。
「邪神様を愚弄する事は許さん!!」
吹いた。
「邪神さまをグロウする事は許さんだって!!!ひーひーぶひゃひゃひゃひゃひゃーー!!!」
お腹痛い!何という攻撃だ!涙が出て来た!辛い!
「ちょっと待て、邪神様の名前は?」
「邪神様は邪神様だ!死ね!!」
爬虫類男が剣を振り下ろす、邪神様に名前は無いらしい...。
「ブフェフェぶはははははは!!」
笑いながら振り下ろされた剣をエルボーで横から叩く、肘にカツーンと響くような感じがしたなと思った瞬間、爬虫類男の剣が折れ刃先が床に突き刺さる。
「馬鹿な!?」
「馬鹿なのは邪神さまを信仰してるお前ですからー!!!」
俺は一発エルボーを発動し怯んだ爬虫類男の首を俺の股間へ押し込み腰をロックする。
散々笑わせてくれたがコイツはどうやら人類の敵らしい。
「残念ー!!!」
ヒナコデスボムを発動、一気に爬虫類男を抱え上げ走りながらジャンプする。
爬虫類男のの表情が驚愕している様にも見えたが種族が違うのでよくわからない。
床に爬虫類男の後頭部を叩きつけ立ち上がった俺は酔った勢いで周囲の人々へ声を掛けてしまう。
「元気デスカー!!!」
周囲の人々からの返答はなかった。