生贄3
すっかり素直になったミッキーが冒険者ギルド爆破を自白してくれた。
これにて一件落着なのだが、流石にこのままギルドに引き渡すのは可哀想な気がするし、俺の捜査方法が問題になるかも知れない。
俺は3人の怪我をサボテンエキスで治しながら話し始めた。
「俺の国の言葉に、『罪を憎んで人を憎まず』と言う言葉がある。ミッキー、君のやった爆破事件は決して許される事では無い。しかしミッキー君!君にも更正する機会を与えようじゃないか!この国を出て静かにそして真面目に暮らすんだ!」
俺はミッキーへ頷く、ミッキーは地面に手をつき涙を流している。
「良いか!?二度と悪さをするんじゃないぞ!?行け!!もう二度と顔を見せるな!!」
ミッキーは立ち上がって帝都の城門がある方へ走って行った。何か一言あっても良かったのに。
ミッキーの背中を見送った後振り向くとヘルメットとモヒカンを切られた只のハゲが何処かに行こうとしていた。
「お前たちは待て」
俺の声に二人の背筋が伸びる。
「あの...一件落着って....」
只のハゲがモゴモゴ言っている、言いたい事が有るならハッキリ言えと思うが聞くつもりも無いのでハゲの言葉を無視する。
「お前ら2人には爆破事件の証人としてミッキーを帝都に訴える仕事が残っている」
「な!?ミッキーを国に訴えるのか!?」
「うるさいな〜当たり前だ、何か問題でも有るのか?」
「いやだってお前見逃したんじゃ無いのか!?罪を憎んで人を憎まずなんだろ!?」
「お前?」
「いえ、スミマセン」
元モヒカンうるさいな、犯人を国に訴えとかないと真犯人探しが終わらないじゃないか。そんな事も解らないのか。
「それとこれは別だ!ミッキーには更正の機会を与えてやった!この国を出ていれば何も問題無い!
出る前に捕まったら『ついてないな』だ!」
「アワワワワ」
ヘルメットがあわあわ言ってる。
「さぁ行くぞ!証人達!先ずはミッキーが破壊尽くした冒険者ギルド跡地だ!逃げようと思うなよ?
最後まで付き合ってもらうからな?」
俺は二人に先導させ冒険者ギルド跡地へ向かった。
今回の事件はこれで無事解決だが『闇夜の蛇』の件が未だ片付けて無かった事に歩きながら気付く。
コイツらを『闇夜の蛇』にするか?でもスラム街出て人通り増えて来たから厳しいかもな。
「なぁ、お前ら闇夜の蛇か?」
「違います!!」
「チガーウ!チガイマース!」
二人の返事が早い、闇夜の蛇はやっぱりヤバイ感じなのかも知れない。
「闇夜の蛇に関して知ってる事を俺に話せ」
「無理だ!殺される!」
「ダメだ!殺される!」
二人の反応が被っている、どんだけ怖ろしい団体様なのよ闇夜の蛇。
「んじゃ聞かない」
コイツらは冒険者ギルド爆破事件の大切な証人だ、殺される訳にはいかない。
「でも判ってるだろうけどミッキーは闇夜の蛇の構成員だからね」
「な!?」
「アワワワワー!!」
ヘルメットうるさいな。長いよアワワ。
「爆破事件が起きた爆破地点には闇夜の蛇の犯行声明文が描かれていたからね、ミッキーが闇夜の蛇だったのは当然でしょー。そこの所キチンと証人になってね」
「バカだ!出来る訳がねー!」
「俺の国の言葉に『案ずるより生むが易し』と言う言葉が有ってな、出来る訳がねーって思っていても案外簡単に出来るよって言葉なんだけど....。バカ!?バカって俺の事か!?テメーコラ!!エー!?」
元モヒカンの後頭部に逆水平チョップを叩き込む。
「俺の国の言葉に『バカって言う奴がバカ』って言葉が有ってな!!聞いてんのかコラー!!ザケンナ!」
俺の熱い説得により30分後二人は証言する事を違う。二人の見た目がヨレヨレになったが気にしない、スラム街の人間が多少ヨレヨレでも変じゃ無いのだ。
冒険者ギルド跡地に着くと俺を牢屋へ入れたギルドマスターのマッサーが何やら忙しそうに部下達へ指示を出している所だった。
「マッサーさん!有力な証人を連れて来ました!!この二人がギルド爆破犯人を知っているそうです!」
マッサーは俺の顔を見た後に二人の証人を見て叫んだ。
「な!?ナミーフェイ!マーリオ!!まさか貴様らが証人だと!?どう言う事だ!?
ヒナコデス!コイツらは帝都でも指折りの極悪人だぞ!?決め手になる証拠が無い上にスラム街の組織に守られて手が出せないでいた大物だぞ!?それが証人だなどと!!」
へー、コイツら結構有名なのか。つか極悪人なのか、セーブしなくても良かったかもな。
「マッサーさん!先ずは二人の話を!!さぁ話してください、ナミーフェイさんマーリオさん!」
良かったギリで名前言えた。あれ?ナミーフェイどっちよ、つか喋れよ早く。
「ナミーフェイさん?マーリオさん?あれれー?お兄さん達、お話してくれるって言ったよねー?
それとも....一度場所を変えちゃう〜???」
俺の殺気を込めた笑顔を二人に向ける、マッサーには背を向けているので、その顔を見られなかったがマッサーの部下に見られてしまう。
「ひっ!!」
マッサー部下、お前失礼だ。
元モヒカンとヘルメットの歯がカチカチ音を立てている。どうやら震えているようだ。
「マッサーさん、真冬ですから二人は寒さに震えています。少し暖かい場所に移動しましょう、我々は後から行きますよ」
「待ってくれ!!喋る!!証言もする!!冒険者ギルド爆破の犯人はミッキーだ!
奴は闇夜の蛇のメンバーだ!!」
「そうだ!ミッキーが犯人だ!証言する!」
二人が夢中になってマッサーに喋り続ける。
「どうやら私の仕事は此処までのようですね、マッサーさん後はお任せします。
闇夜の蛇、その全貌を知る事は出来なかった事は残念ですが爆破実行犯を突き止めた事で今回は良しとしましょう。では私はこれで!」
俺はマッサーへ挨拶を済ませると冒険者ギルド跡地を後にした。
俺とすれ違う時にナミーフェイとマーリオが震えていたのは我慢出来たが、
例の失礼なマッサー部下も一緒になって震えてたのが少しだけイラついた。