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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
闇夜の蛇
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闇夜の蛇

「ヒナコデス!貴様此処で何をしている!!説明してもらうぞ!!」

マッサーが興奮している。此処での対応を間違えてはいけない、地下牢を破壊した事がバレたら大変な事になってしまう。幸いな事にこの相良日菜子は元・演劇部のスタァ。スターの更に上であるスタァだった俺の演技力があれば、地下牢爆破を誰かの仕業にしてしまう事など容易いのだ。

しかし注意しなければいけない事が一つ、一人称を「俺」から「私」に変更しなければならない。

何故ならば「俺」は犯人っぽいからだ。そして「私」が探偵っぽいからだ。

「おいヒナコデス!黙っていないで何か答えろ!!」

「ああ、すみません。この地下牢爆破事件について考えていました」

「地下牢爆破事件だと!?さっきの爆発音は貴様の仕業だろうが!!」

此処だ!俺の演技力で切り抜ける第一関門だ!!

「えっ!?私の仕業ですって!?そんな馬鹿な、一体何の為に私が地下牢を爆破するんですか?」

完璧な驚き方、そして「何の為」此処がポイントだ。実際は事故であって何かの為に地下牢を爆破した訳では無いのだから理由を追求すればする程俺への疑いは晴れていく筈だ。

「何の為だと!?貴様が逃げる為に決まっておるだろうが!!」

「私、今逃げてませんよね。下の階から避難して来ただけであって逃走なんてしてませんよ。

大体逃げるならもっと上手くやりますよ」

「むぅ、確かに...」

勝った!第一関門突破!!まずは容疑者リストから外れる事に成功、第二関門は新たな容疑者を作り出す事、最終関門はそいつに罪を全部擦りつける事だ!

「ところでマッサーさん、私が爆破で狙われた時間何をされてました?私は必死で助けてを求めていたんですけど」

まずは冒険者ギルドのトップであるマッサーを標的にする、勿論これは撒き餌だ。本命は別だがマッサー自身が容疑者に含まれた状態を作り出しておく事で本命への食い付きを良くする作戦なのだ。

「なっ!?何故ワシの行動を言わねばならない!?」

「私、考えたんですよ。犯人の動機は何かと。考えられる動機は2つ、一つは私が狙いだった説。もう一つは冒険者ギルド自体が狙いだった説ですね。私が狙いだった場合、帝都に来て間も無い私を恨む人間の心当たりは、冒険者ギルドを燃やされた事を根に持つギルドマスターであるマッサーさん、貴方しか居ないんですよ」

「貴様!!ワシがギルドを爆破する訳があるかー!!このギルドはワシの生き様!!

それを爆破するなど!!」

「マッサーさん、貴方にとっての生き様であったギルドを燃やされた恨み、相当でしょうね。だからこそ聞いているんですよ、爆発当時、貴方が何処で何をしていたのかと」

決まった!これで俺への容疑は晴れたと思って良いだろう!後は真犯人を作るだけだ!

「つまりこれはアリバイの確認ですね、アリバイが立証されさえすればマッサーさん、貴方の容疑が晴れるのですよ」更に俺のターン、アリバイの確認をドロー。これで俺は容疑者から探偵ポジションにクラスチェンジした事になる。

「その時間は部下達と今後の事を話し合ってたわ!!明日からのギルド運営をどうするか!問題が山積みなんじゃ!!」

マッサーさん青筋立ててるよ。確かに家爆破された上に犯人から容疑者扱いされたら青筋立つな。

「マッサーさんのアリバイが証明されるのであれば、やはりもう一つの動機の方が真相らしいですね。

つまりこの帝国冒険者ギルドへの攻撃と言う事です!」

俺は顎に手をやりながら目を閉じ思い出している風を装う。

「そう言えば....爆発した瞬間、音に吊られて見た壁に何か文字が見えた様な...。アレはそう『闇』?」

それらしいキーワードを適当に言って架空の犯人像をこれから作り出して行くのだ。

「まさか...闇夜の蛇...」

兵士の誰かが呟いたのをヒナコデスイヤーは聴き逃さない。

勝った!何と言う幸運!そいつに罪を被って貰おう!

「そう!それだ!確かに闇夜の蛇と書いてありました!この名前に聞き覚えが?」

「闇夜の蛇は帝都で暗躍する犯罪組織だ。殺しや盗みは勿論の事、無法都市国家ウィングスから違法な薬品を密輸し帝都にばら撒いておる忌むべき奴らじゃ。くっ、おのれ闇夜の蛇の仕業か!」

勝った!悪いのは全部闇夜の蛇。この方程式を知ってしまった俺は無敵だ。

「何故その闇夜の蛇に冒険者ギルドが狙われるのですか?」

質問する事で完全に探偵ポジションを不動の物にする俺の演技力が我ながら恐ろしい。

「先日、冒険者ギルドが主導して闇夜の蛇の下部組織の一つを潰した。その報復だろう」

「犯罪集団でありながら摘発されての報復とは、正義の何たるかを教えてやらないといけませんね。どうでしょう、私は多少腕に自信があります。爆破に巻き込まれた恨みもある事ですし、この私に闇夜の蛇の対処を任せて頂けませんか?」

「むぅ.....。闇夜の蛇は人を人とは思わぬ集団ぞ。捕らえられた帝国兵士が拷問された上で無残に殺された事もある。危険じゃぞ?」

え、何それ怖い。あーでも脱容疑者になるにはノーとは言えないよねー。

「大丈夫です、闇夜の蛇にこの私が本当の恐怖を教えてあげましょう」

「そうか....。頼む!ワシのギルドを破壊された恨みも全てお前に託す!」

「お任せ下さい、では調査が有りますので行ってもよろしいですよね?」

俺はマッサーの目を正面から見つめ言った。マッサーは強くうなづく。

「では私はこれで」

俺は無事地上へ上がる事が出来たその足で、そのままウェイジェイの屋敷へ向かう。

地下牢を詳しく調べられ、俺の嘘がバレる前に闇夜の蛇に罪を押し付ける為には情報収集が必要であり、その手のコネが俺にはウェイジェイしか無かったからである。



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