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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
パーティ対決編
182/256

ラザライオン4

ベイラー帝国宰相であるウェイジェイの命を受けヒナコデスに付き従うマホーナとナギーの2人は、ウェイジェイの配下の中では最も目立たない人材で、ただのメイドと雑用係と思われていたが、実際にはウェイジェイが信頼する優秀な工作員であった。マホーナとナギーはこれまで幾度もウェイジェイの命令に従い、彼の期待に応え続けていた。マホーナは主に表社会の情報収集を、ナギーは裏社会の情報収集を行う事で役割分担をしつつ、互いにフォローし合う事でより完全な情報をウェイジェイへと伝えていた。そんな2人に今回ウェイジェイから与えられた任務は2人にとって理解し難い物であった。

マホーナに与えられた任務はヒナコデスを「道案内」する事。取り入るでも誘導でも無く、ただ道案内する事。この事に何の意味があるのかとマホーナは疑問には思ったが、ナギーに課せられた任務に比べれば何も悩まずに済んだ。問題はナギーに課せられた任務であり、その任務に2人は悩む事になる。

ナギーに課せられた任務とは、諜報部にヒナコデスの情報をリアルタイムで送りつつ、その情報をウェイジェイとヒナコデスにも伝えるという理解不能な任務であった。

「諜報部もウェイジェイに情報が伝わる事は想定しているだろうがヒナコデス本人にまで伝わっているとは考えもしまい」そう笑いながら話すウェイジェイの言葉に、2人は「何故そんな事を?」と口にする事が出来ず悩み続ける事になる。ナギーにはウェイジェイより更に注意事項が伝えられる。

諜報部にはヒナコデスにリアルタイムで情報が伝わっている事も伝えつつ、その原因は隠匿する事。

諜報部へ情報を伝える際にはヒナコデスが聞いていて不快にならないよう気がける事。

ナギーは注意事項を聞く内に、これはヒナコデスへの諜報活動ではなく諜報部への活動なのでは無いのか?と考えるようになる。ただマホーナとナギーはどんな理不尽な指示であっても応えてみせると言う自負があった為、2人は本気で任務に取り組む事になる。

ナギーは諜報部から受け取った音声を遠方へ飛ばす魔具を調整を行い、ウェイジェイとヒナコデスも会話を聞ける小型受信機を2個用意し、一つをウェイジェイの元へもう一つをヒナコデスの背中へ貼り付けた。

こうしてナギーの声は諜報部とウェイジェイの元だけで無くヒナコデスにも聞こえる様になった。

ナギーはヒナコデスが本気で不快にならない様に注意しつつ諜報部とウェイジェイへと情報を送っていた。

そんなナギーが今まで苦労して伝えていたヒナコデスの情報が全て水泡に化す事態が目の前で起きてしまう。ラジャの群れへ単身突撃したヒナコデスに、四天王達が敵の意識を全て集め逃走したのである。

ヒナコデスは何十匹ものラジャに押し倒されナギーからは見えなくなってしまう。

ただ姿は見えずともラジャの動きによりヒナコデスが貪り尽くされている事は容易に想像出来た。

「ヒナコデス...完全に沈黙しました」

マホーナが望遠鏡で観察しつつ、ウェイジェイへ音声報告を入れている姿を見て、ナギーも諜報部への報告を始める。「ラジャの群れに襲われました、終わりです」

何かこれから面白い事が始まるかもしれないと思っていたナギーは、少しだけ残念かもなと考えつつマホーナとサワーへ振り返えり撤退を伝えようとして固まってしまう。

望遠鏡を覗くマホーナの表情が恐怖に固まり、無表情だったサワーは、見ているナギーが恐怖を感じるような狂気の笑い顔を浮かべていたのである。

「何が起きた!?」

ナギーが叫びつつ2人の視線の先を追い振り返って見ると、ヒナコデスの居た辺りが緑色の煙に包まれていた。「マホーナ!何が見える!」

「ヒナコデス!再起動!!立ち上がってきます!!」

「何だと!?」

信じられないマホーナの言葉だった。何十匹ものラジャに押し倒され立ち上がれる筈が無かった。

緑色の煙が風に飛ばされ、ナギーの目にもヒナコデスの姿が見えた。

ヒナコデスは脳天をラジャに噛み付かれたままの状態で、顔面は頭から流れた血で血だらけでありながら、気にも留めない様子で周囲のラジャへキックの連打を放っていた。

「バケモノか!?」

「バケモノじゃねーよ!ナギー!!くっそ痛いなー!!!オー!!!」

思わず任務を忘れ自身の感情を漏らしてしまったナギーへ、ヒナコデスの返事が魔具を通して聞こえて来る。その声に心底驚いてしまったナギー。

「アイツは何!?」

今度は何だとナギーはマホーナの指差した方角を見る。そこに居た者を見てナギーは更に驚く。

ナギーとヒナコデスを挟んで反対側に立つ1人の漆黒の鎧を着た男、顔はフルフェイスの兜で判らないが彼の行為が理解不能であった。彼はヒナコデスへ向けて何かを叫びつつ旗らしき物を振っていた。この状態で旗を振る意味がわからない。しかも旗に書いてある文字が見た事も無い。

ナギーとマホーナは混乱するが1人サワーだけは違う事を感じていた。

(ラジャの群れへ単身突撃する面白さ、頭をかじられながら戦う面白さ、ヒナコデスも面白いが、しかし読めない旗を振る男、貴様が一番面白いかもしれない。ここに来て良かった。さてラジャは終わりだがラザライオンはどうするか、あの巨体で私を楽しませてくれるとは思えないな....。もう狩るか)

ラジャの群れはヒナコデスの毒霧とミドルキックの連打で壊滅しつつあり戦況は一気に逆転した。

そんな中旗を振り続ける男。その旗には日本語で『心を燃やせヒナコデス』と書かれていた。

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