ヒナコデス・フランケンシュタイナーvsサワー・タイガン
「次はどこ行く?」
そう俺がマホーナに尋ねた時だった。
「テメー何ふざけた格好で騒いでるんだよ!」
「お嬢さんら、ちょっと良い所で治療してあげるからついてきな」
見た瞬間に嫌悪感が湧く二人組がアゴを突き出しながら威嚇して来た。
年は25〜30歳位だろうか、セリフは完全なチンピラなのだが見た目がEUな感じなので違和感があるが、身なりが見窄らしいのと犯罪者臭が強いので完全に恋愛対象外だ。
ここでコイツらが雨に濡れた子犬にエサを与えている所を目撃したとしても恋には落ちないと断言出来る。
相良家の人間は父ちゃん以外正義感が強いのだ。父ちゃんだけは速度違反で警察に捕まっているので正義感があるとは認められないが、相良家は犯罪者には厳しいのだ!なので見た目が犯罪者なだけでアウト!恋愛対象にはなりません!残念!
いやちょっと待て、良い所で治療って治療の意味がわからん。
「あの〜治療って何の治療ですか?」
「オメーの頭の中身だよ!!ぶひゃひゃひゃひゃひゃブゴッ!!」
男の笑い声、笑えなくしてやると思った時には既にローリングソバットが男の顔面に炸裂していた。
あまりの怒りに思考より先に本能で体が動ける様になっていた。
右足の裏に爽快感が残ってはいるが正直まだ足りない。あの蹴りを耐えてフラフラしてる所にウェスタンラリアットを叩き込んで初めてストレス発散になったのに!!ローリングソバットで終わりにしてんじゃねーよ!!
「ローーーラーー!?テメー!!ローラにウギャッ!!」
ローリングソバットで吹っ飛んだ男ローラって言うのか、と思いいつ逆水平チョップを叩き込む。
敢えて手加減しウェスタンラリアットを狙ってみるが、男は逆水平チョップの威力で尻餅をついてしまう。
何と言う事だ、俺に「頭を治療する」等とぬかした奴らが打撃技の一発で終わりとは。
人に口撃するその口!ネジ切ってやるか!?
俺はローラのお友達にドラゴンスリーパーを仕掛ける。口に腕を敢えて当てて。
「むごーーーー?????!!!!?」
喋れまい!貴様の口は塞いだのだ!!この状況がどれだけ危険かローラのお友達!貴様に判るか!?
言えまい...。ギブアップの一言が言えまい!!貴様は「この俺に暴言を吐いたローラのお友達だった」の罪でドラゴンスリーパーによって永遠にもがき苦しみ続けるのだローラのお友達よ!!
そして敢えて言おうでは無いか、『ask him』彼に(ギブアップか)尋ねろとの意味であるアスキムを。
レフリーは居ないから聞いても誰も止めてくれないけどねー!!!
「アスキム!!??」
次の瞬間俺はこの世界に来てから最も驚いてしまう。
いきなり赤毛の若い男性が駆け寄りローラの友達の顔の前で手を振り意識の無い事を確認すると、俺の目の前で上腕筋をアピールする筋肉ポーズと共に叫んだのだ。
「マッソー!マッソー!」
赤毛若い男性は、見た目が古く如何にも使い込んでいる皮鎧を装備しているのだが、両肩と頭に冠を乗せている。肩に冠を乗せる意味がわからないしマッソーマッソーも意味がわからない。
試合終了的な?ギブアップ的な意味なのか?マッソー??
いや待て、それだと筋肉ポーズの意味がわから無くなる。ヤバイ、もしかしてコイツ変質者じゃない??
そっとドラゴンスリーパーを外す。ローラの友達は泡を吹いて気絶している。
冠お兄さんと目を合わせるのが怖い。どうしよう。
「サワー・タイガン...何故此処に...」
「ヒナコデスさん、サワーさんに出会ってしまいました」
うぉ!?マホーナとナギー知ってるんだ!コイツの事!つか有名な変質者なのか!?
「マホーナ!?この人何!?」
「この方は帝国最強の冒険者、四天王の一人。三冠王者サワー・タイガンさんです」
帝国最強の冒険者だって!?三冠王者って頭と肩に冠乗っけてるからか??
ん?四天王って俺をパーティから追放した奴らじゃね?コイツで5人目じゃね?
フューチャリングで6人にしてやったのに元々5人なら四天王の名前どうでも良かったじゃねーかよ。
まー良いや、帝国最強の冒険者なら挨拶はしとかないとな。
「ども日菜子です。よろしくお願い申し上げます。」
若い赤毛の男、サワーが俺を睨む。怖えよその目。なんだろう細マッチョで切れ目のイケメンなんだけど、家に帰れば人形とおしゃべりしてそうな感じが凄くする。ヤバイよ間が持たないよ、早く喋ってくれよ。
「こんばんは、サワーです」
朝だよ!!まだまだ朝だよ!!あと声小さい!!マッソーマッソーの声の張りは何処行った!?
「***###****@@#」
声小さくて聞こえねーよ!?
「ヒナコデスさん、サワーさんと会話を楽しんでいます」
ナギーの独り言のがハッキリ聞こえるわ!!てか会話楽しめてねーよ!!
「***##***@@###@@@#」
「えー私サワーは、貴方、貴方のハッスル、ハッスルに。大変、感銘を。受けました」
マホーナさんの同時通訳始まったよ!?ってそんな長く喋ってたか!?
「**##**」
「ええ、もう一度。私は。貴方のハッスルを。見たい。見たいでしょう」
マホーナ、それ絶対違う。俺を騙そうとするな。
此処で俺の脳裏に一つのアイテムが浮かび上がる。
異次元ポケットに入れてあるマイクだ!これが有れば直接会話が楽しめる!って楽しむんかーい!!!
一人ノリツッコミの虚しさは置いといて俺はマイクを取り出してサワーへ渡す。
「これを使って喋ってみて下さい、声が大きくなる機械です」
サワーはマイクを受け取ると興味深そうに観察してからマイクへ向かい声をだした。
「マッソー!!マッソー!!」
その叫び声は街中に響き渡っていた。