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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
激闘フグリアン編
162/256

フグリアン退治2

帝都を出て1時間程でお爺さんの言う村へ到着した。

俺のイメージで村とは過疎で寂れた場所だったけど、到着した村は区画整理された牧場って感じだった。

牛が沢山牧場で自由に草を食べている。どうやらこの村は乳製品で成り立っているっぽい。

「結構見晴らし良いけどフグリアンって此処に居るの?」

俺はお爺さんに聞く。

「村長!冒険者は来てくれましたか!?」

なんか若者達がお爺さんの周囲に走り込んで来た。

「村長...あの二人は?」

皆が俺達を見る、俺はアスカを見る、アスカは俺を見ている。

俺は理解した、アスカを冒険者と見抜ける推理が出来る様な奴が此処に居ないであろう事と、俺の質問が無視された事を。

「赤いローブの魔道士様とその下僕だろう?真冬にズボンも履かせてもらえないんだから」

「いや魔道士様に従属させられた犯罪奴隷だろう、真冬にズボンも履かせてもらえないんだから」

酷い言われようだ。しかもアスカは魔道士確定されてるし。

「ちょっとヒナコデス!アンタの所為で私が酷い言われようなんですけど!」

「なんでよ!?俺なんも悪くないよ!?このスタイルがこれから流行するヒナコデススタイルだよ!?」

「すまんが少し静かにしてくれんか。皆の衆このズボンを履かせてもらえない娘がヒナコデス様じゃ、儂の目の前で帝都の冒険者を皆殺しにした強者じゃ!」

「皆殺しなんてしてねーよ!!」

「なんと....。あんなアホそうな顔で恐ろしい...」

「このヒナコデス様であればフグリアン退治は安心してお任せ出来るぞ!」

「おおおお!」

なんか若者達盛り上がってる。フグリアンってそんなヤバイのか??

「此処へ早くマイケルを呼ぶのじゃ!」

「マイケル誰よ!?さっきから完全放置じゃんよ!」

俺は爺さんを指差して叫んだ。

「おお、これは済まない事でしたじゃ。マイケルは異国の獣使いでしてな、楽器を使って獣を操る術を持ってったのでこの村で雇った、専属の冒険者ですじゃ。この国の言葉は話せないんじゃが此方の言いたい事は理解出来る頭の良い奴なんですじゃ。フグリアン退治に役立つので連れて行って欲しいのですじゃ」

じゃーじゃー分かりにくいぞ爺さん。まー良いや、正直フグリアンに少し不安を感じてたからマイケル役立つなら頼もしいし。しばらくするとイケてるデザインの白いスーツっぽい服を着たすっげーイケメンの黒人さんがバイオリンを持ってやって来た、この人がマイケルか!

背が高くドレッドヘアで白いスーツでバイオリンの黒人さんって反則気味にカッコよすぎる!!何このイケメン!!

「ども!日菜子です!!マイケルさんよろしくお願いします!」

マイケルさんははにかんだ笑顔で軽くお辞儀をした!!

うぉー!!かっこええええ!!

「マイケルはその楽器の演奏で村のネズミを誘導し川へ流したりもしたんじゃよ」

え...。なんかそれ怖い童話で聞いた事ある。最終的に子供たちさらってなかったか?

もう一度マイケルの顔を見る。さっきまで爽やかな笑顔に見えていたのに今は何か企んでいる笑顔に見える。爺さん、その情報要らなかった、俺のときめきメモリアルを返せ。

爺さんの説明では、森にあるフグリアンの住処は判っており、昼間はフグリアン達が寝ているので、寝ているフグリアンを一匹ずつマイケルが音楽で誘導する作戦はたてていたが、誘ったフグリアンを退治する手段が無かったらしい。だから今回は俺が退治する役割な訳だ。

俺とアスカはマイケルの誘導で森の奥へ進む。

「しかしフグリアンって何が怖いの?」

俺の質問にアスカがやっと答えてくれた。

「ヒナコデスは本当に何も知らないのねー。フグリアンは猛毒を口から吐くし、体を切ると酸が飛び出すしで面倒なのよ。一流の剣士ならフグリアンの体を断ち切れるけど、二流以下だとフグリアンの外殻で刃物が止められて酸によって溶かされてしまうわね。魔法に対しても耐性が強いしやりにくい魔物と言えるわね。そして一番の問題はフグリアンの素材は使い道が無いから狩ったとしてもお金にならないのよ、食べられる訳でも無いし」

俺食ったよ!お代わりしたよ!

「アー.....」

マイケルが指差した方角に葉っぱで作ったドームが有り、その中に一体の魔物が見えた。

黒い甲殻の二足歩行な痩せた昆虫、そして頭だけトラフグ。なるほどフグリアンだ!俺はそう思った。

もし俺がこの魔物の第一発見者なら確実にフグリアンと名付けるし、そしておそらく第一発見者は地球出身だろう。

マイケルが俺の目を見つめお辞儀をした、これから始めると言う意味だろう。

俺は日本人だ、お辞儀はお辞儀で返す。

マイケルのバイオリン演奏が始まる。

激しくも何処か物悲しいマイケルの奏でるバイオリンの音色にフグリアンの一体が此方へふらふらと誘導されて来る。後は俺が倒せば良いだけだ。胴体は酸を出すみたいだから顔面を殴ろう。

そう思ってフグリアンの正面に立ったと同時にバイオリン演奏が止まる。

確かに曲調的には終わりだった、良い曲だったよマイケル。でもね、このタイミングで曲止めたらさー、フグリアン意識取り戻しよるよね!?

フグリアンの目が大きく見開くと同時に口が上下左右に割れる様に広がる。ホラーじゃん!!そう思った瞬間ゆっくりモードが発動、フグリアンの口から乳白色の液体が飛び出して来るのが見えた。

俺は華麗にブリッジをしながら乳白色の液体を回避する、まるでアイススケートのイナバウアーの様な華麗な回避だが、俺にイナバウアーを維持するテクニックは無い。左手で森の木の枝を握りイナバウアーを維持している。俺って華麗だ、そう思った瞬間異変に気付いた。乳白色の液体、つまりフグリアンの唾のスピードが想像以上に遅い事に。そしてイナバウアーを決める俺の頭上を越えて行く事無く重量に負け俺の顔面目掛けて落下している事に。

「あーーーーーーーーーー!!??!?!?!」

俺の顔面にかかる謎の液体!臭い!臭い!臭い!!粘ってる!!粘ってる!!

左手は木の枝を握りイナバウアーを維持したまま右手の手のひらでゆっくりと顔に付いた粘液を取る。

広がらないよう慎重に、ゆっくりと、そして右手を思いっきり大地へ振り下げその勢いで粘液を地面に落とす。しかしである。臭い!臭い!臭い!!気持ち悪い!!

「あああああああーーーーーー!?!??!?」

気持ち悪さに叫び声を上げながらフグリアンを見るとフグリアンが「ゲヘッ」と口から音を発した。

笑ったのである。

俺のストレスゲージは一瞬でリミッターを振り切る。

怒りのあまりに右足はガクガクと震えている。右手にはまだ粘液がこびりついている。

手を振る!手を振る!落ちろ粘液!落ちろ粘液!何が悪い?何が間違えていた?全部テメーの所為だろうが!!

「あああああああーーーーーー!?!??!?」

叫びながらフグリアンに走り込む!俺の怒りの全てを込めたヒナコデスニーを喰らいやがれー!!!!

「きしょ!!!きーんしゃさー!!」

マイケルが俺を指差して笑っていた、気色悪いと言いたい事が理解できた。


キンシャサ

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