言語習得
剣での拍手をしていた男が拍手を止め、突然こちらへ向かい何かを叫んだ。
俺は正直言うと耳が悪い。よく聞き間違いをしてしまうのだ。
だからあまり自信は無かったが「今日はいい天気ですなー!!」と聞こえた。
流石に両手剣の男が天気について叫ぶとは思えない。これは流石に聞き間違えたと思った瞬間、俺は閃いてしまった。
ここは「異世界」!聞き間違えたのでは無く、おそらく男は雨乞いの儀式関係、か逆に異世界天気予報士で
剣での拍手はお天気関係者の儀式に違いないと言う事に。
俺は森から出て必殺の笑顔を振りまきながら言った「良いお天気ですよね〜予報は当たりました?」
男はハリウッド映画に出て来そうなイケメンだった。
俺のトークで上手くコイツを利用して、異世界ライフの踏み台にしてくれよう。
そう思いつつ話しかけると予想外の事が起きた。
「&@&@##*^(z@()^[s[^^^!!」
どうやら天気の話は聞き間違いだったらしい。
ヤバイこれ言葉が通じないパターンだ!
そう思った瞬間、またあの脳内アナウンスが響いだ。
マイク攻撃を受けた為、プロレスラーとしてマイクの返しが必要と判断。
異世界言語スキルを習得しました。
キタ!助かるわーこれ。マイク攻撃が何なのかは知らんが兎に角助かった!
イケメンを見ると明らかに殺気を発している。
ヤバイぞこれは、友好的に異世界文化交流をしなければ!
考えろ俺!!記憶喪失設定はダメだ、「記憶喪失のおでん屋」は違和感がありすぎる!
旅人だ!俺は旅人になるんだ!
「待って下さい、私は旅の物売りです!食べ物を売りに来ました!」
完璧なセリフだった。もちろんスマイル0円付きだ!
俺の笑顔に瞬殺されたのか、男は両手の剣を鞘に収めつつ笑顔で答えて来た。
「そうか、一体どんな食べ物を売ってくれるんだ?」
おお、俺のトークは異世界でも通用した!!ちょっと嬉しいぞ?
両手剣のイケメンスマイルも中々良いじゃないか、良い踏み台になりそうだ。
「おでんです!」
俺が全身全霊のスマイル0円を発動させた瞬間、目の前の景色が緩やかに流れるのを感じた。
オークキングにフランケンシュタイナーを決めた時の感覚だ。
男の両手が緩やかに剣へと伸びている。
マズイ!マズイ!俺はリュックに手を入れようとするが、俺の動きも緩やかにしか動かない。
男の両手剣はまるでハサミの様に俺の首を目掛け閉じに来ている。
間に合えー!!!!
俺は有刺鉄線バットを両手剣が閉じようとしている支点に叩き込んだ。
コイツは俺を殺しに来ていた!
俺の怒りのストレスは限界を超え、目元の痙攣で眉が激しく上下するのを感じた。
「何するんですかー!?このイケメンが調子に乗ってー!?」
俺はイケメンを倒す事を決意したが、もしイケメンが正義の味方とかだとマズイので言い訳をしておく事にした、これで後で何かあっても誤解で切り抜けよう。
「お前盗賊だな!これは正当防衛だ!!」
俺は剣を離しバックステップしようとしているイケメンの顔目掛け毒霧を吹き付けた。
効果があるか判らないが、一応意識上で(弱目の毒!弱目の毒!)と念じつつ吹き付けたので死なないはずだ。
「馬鹿だ」
イケメンが倒れる瞬間に残した捨て台詞に俺のストレスは限界を更に超えスーパーストレスモードに突入した!
「馬鹿って言う奴が馬鹿だ馬鹿!!!バーカバーカ!!」
例え馬鹿イケメンでも殺してしまうと後味が悪い。
俺はサボテンポーションを用意し、気絶した男の口に突っ込んでやった。
当然口移しなどでは無い。
「うううう」
どうやら回復しそうだ。すぐに動けるようになるだろう。此処に置いて行っても問題はないな。
俺は男の体から金貨の入った小袋を奪い取り慰謝料として受け取る事で許してやる事にした。
「これに懲りたら女を襲うのは辞める事だ、女を舐めると火傷をする事になる。こんな風にな」
俺は意識を取り戻しつつあるイケメンにそう言うと、おでんの卵をイケメンの口へ投げ入れた。
「ホフッ!!!」
「さらばだ!!」
俺は金貨を手に入れ上機嫌で馬車の向かった方角へと走り出すのであった。




