帝都冒険者ギルド
なんと言う生意気なガキ!
魔道士なのか赤いローブを身に纏ってるけど、貴方それ赤ずきんちゃんですから!!
冒険者を舐めきったその態度!看過できませんな!第一フグリアンは俺が退治するつもりだったんだから臆病じゃないし!
「あー?テメー何言ってやがる!?」
俺の声がギルド内に響く、赤ずきんちゃんが俺の方を見て一度目を閉じて挑発的に鼻を鳴らしたが直ぐに目を開き口を半開きで俺の全身を舐める様に何度もガン見してきた。どうやらヒナコデススタイルが気に入ったらしい。
「なっ!?何よアンタ!?私は帝都の冒険者達と話しをしているの!変態は引っ込んでなさい!」
「はー?変態だと?このヒナコデススタイルを理解出来無いお子様が!!大体ガキの癖に生意気なんだよ!!」
俺の叫びを聞いた周囲にいる冒険者達の声が聞こえて来た。
「あんな子供に絡むバカがいたぞ、何処のバカだ?」「扉蹴って直ぐに扉に飛ばされてたぞあのバカ」
「あの格好酷いな、寒さも感じ無いバカか」「バカは風邪をひかないらしいしな」
「誰か止めてやれよ、バカに絡まれてガキが可哀想だぞ」
俺の頬が軽く痙攣を始める、あー来てます、ストレス来てるよー。
「今バカって言った奴!!全員其処に並べーー!!!」周囲の奴らを指差しながら叫ぶ。
厳つい奴らがニヤつきながらゾロゾロと集まって来た、コイツらは俺の心を傷つけた。
「名誉損傷に対する賠償金を要求する、一人金貨1枚出せ」
「はぁー!?舐めてるのかてめー!!」
反抗的態度を取った奴の顔面に速攻でローリングソバットを叩き込む。
反抗期だった冒険者は壁まで吹き飛んで行った。壁に飾ってあった何かが落ちる音だけがギルド内に響く。
「アイツの攻撃で俺の足は傷んでしまった、アイツには慰謝料も請求するとしよう」
俺の言葉に冒険者達の表情が殺意を感じさせる物に変わる。遠巻きの連中まで近づいて来た。
「ちょっとアンタ!いくらなんでも無茶苦茶よ!タダじゃ済まないわよ!?」
赤ずきんちゃんが俺を心配してくれたらしい、ならこの娘っ子は許してやろう。
「喋れなくなる前に聞いといてやる。テメー何者だ!?」
冒険者達の中で斧を持った一番大きなハゲヒゲデブが俺を指差しながら言った。
この国はハゲヒゲデブが流行してるらしい。てか何者って言えば何だろう。
軍師はもう違うし、この世界では仕事してないし、よくよく考えてみたら冒険者の資格はあるけど冒険者だって言い切れる程冒険してないよなぁ。『冒険者だ』って答えて『何処何処のダンジョンについて言ってみろ』って問われたら困るしなぁ。俺って一体なんなんだろう、自分探しの旅に出る必要があるのかなぁ。
「テメー!!何者だって聞いてるんだ!!」
うぉ!トリップしてたわ!マズイ!急いで答えよう!
「俺の名前はヒナコデス・フランケンシュタイナー!探偵さ!」
そう!俺はシャーロック・ホームズに憧れていたんだ!つまり俺は今日から探偵なのだ!
「タンテー?なんだそりゃ!聞いたことねーぞ!やっぱコイツ唯のバカだぜ!皆コイツの蹴りだけは気をつけとけよ!」ハゲヒゲデブが周囲の奴らに言う。
「あれれ〜?ハゲでヒゲでデブのおじさん。ハゲでヒゲでデブのおじさんはどうして俺が蹴りだけの女と思ったのかなぁ〜?」
俺はハゲヒゲデブの顔面へナックルアローを叩き込む。ハゲヒゲデブは腰から崩れ落ち床で意識を手放した。「あー、手を挫いた。慰謝料追加しないと」
周囲の冒険者達が一斉に襲い掛かって来た、その数25名。
俺はゆっくりモードを発動し、前屈み気味に襲い掛かって来た先頭の冒険者のアゴ元へカウンターのラリアットを叩き込む。その冒険者が空中で1回転しソイツの後ろに居た4人の冒険者を巻き込みながら壁へ激突する。その光景を目で追ってしまった冒険者の背後を取り、後方へブリッジをしつつ手を離す。投げっぱなしジャーマンだ。投げられた冒険者が別の冒険者達と激突しまとめて5人戦闘不能にする。25人引く9人だからえーと、えーと....。面倒臭いので周囲に毒霧(軽)を吹き全員をノックアウトする。
一人一人から慰謝料を受け取っていると後ろから声を掛けられた。
「アンタ....酷すぎ...」
赤ずきんちゃんのローブが今は口元を覆う形になっている。防毒マスク効果があるようだ。
「後で解毒剤飲ませるから、あ。解毒剤料金も上乗せしないと」
「タンテーって恐ろしい職業なのね。あのお爺さんまで巻き込まれて気絶してるわよ」
それは遺憾の意。俺は先にお爺さんやギルド職員へ解毒剤を飲ませてから慰謝料の徴収を再開した。
途中ギルド職員が遠慮気味に「ギルド内での追い剥ぎ行為は...」等と言っていたので、コレは慰謝料と名誉損傷に対する賠償金徴収と解毒剤の代金だからと言って安心させてあげた。
冒険者達への俺の徴収力により俺の懐に大金が入り込む。
意識を取り戻した冒険者達は感謝の涙を流しているが喧嘩を売った相手に救われた事が恥ずかしいのだろう、何も言葉を発しない。
「よし!フグリアン退治に行くか!」俺の言葉がギルド内に響く。ギルド内は俺の言葉以外には音が無く、静寂に包まれていた。