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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
第2部 帝国編
155/256

帝国宰相ウェイジェイ・フォン・スターズ

ベイラー帝国の国政を司る帝国宰相ウェイジェイ・フォン・スターズはこの年40歳、金髪の優しい目をした美形で背も高く見た目だけで言えば舞台役者として食べて行けそうな男であった。

帝国宰相の地位は代々スターズの者が務めてはいたが、数年前までは誰もウェイジェイがスターズの家督を継ぎ宰相になると考えもしなかった。

ウェイジェイには3人の優秀な兄がおり、ウェイジェイ自身は側室の子だった事から幼い頃より期待されず放置され育った結果、正に放蕩息子と呼ぶに相応しい堕落した大人へと成長する。

大貴族であるスターズ家の者であるが故に資金をふんだんに使用出来る遊び人は、家督を継ぐ事が出来ない貴族の次男や三男に慕われ、その外見によりウェイジェイの30歳までに交遊した女性の数は数知れず、所謂世間から爪弾きされた者達には人気のある男であった。

そんなウェイジェイの境遇が彼が30歳の時に激変する。

ある日スターズ家に落雷による火災が発生し、職務の為に城に入っていた当時の宰相である父親と、娼館に居たウェイジェイを除く家族が皆亡くなってしまったのである。

父親は嘆き悲しみつつもウェイジェイを後継として30歳からの再教育を始める。

多数の鉱山を持つスターズ家はベイラー帝国内で最も力を持つ貴族であったが、ウェイジェイの放蕩振りは帝国内に知れ渡っていた為、人々はウェイジェイの父親が最後のスターズになると思い込んでいた。

父親の願いも虚しく、38歳になったウェイジェイは、見た目だけの中身の無い中年になっていた。

ウェイジェイに教育する事は砂漠に水をやる様な物だと言って最後の家庭教師が匙を投げた時、ウェイジェイの父親は涙を流したとの噂が帝国内に広まり、人々はスターズ家の終わりを噂した。

そんなある日、スターズ家に旅の宝石商が現れウェイジェイに一つのサークレットを差出す。

ウェイジェイはそのサークレットを一目で気に入り購入したと言う。

宝石商はウェイジェイに気に入られ、その日より毎月何かしらの宝石をウェイジェイに売りに訪れた、そして宝石はウェイジェイに高くで買い取られていった。

サークレットを身につけた日からウェイジェイの行動が変化する。

スターズ領主は代々家長は国政に携わる為、領内の政務は家督を継ぐ者が執り行う事になっていたが、ウェイジェイにはこれまで実務をする能力が無かった為、外部の政務官を雇い入れスターズ領の運営を行っていた。しかしウェイジェイはスターズ領運営の的確な指示を行い始め、最終的には政務官の不正を暴き追放してしまう。スターズ領運営の実権を握ったウェイジェイは、私財を使い領内の道整備を始める。

領内の道は全て石畳となり、馬車での移動速度が格段に上がると、今度は帝都との道を整備し始める。

この時点でスターズ家の私財はその5割を失っていたが、ウェイジェイは気にも留めていなかった。

私財の5割を失った時点で初めてその事を知った父親だったが、ウェイジェイが最後の後継者なのだからと黙認する。

スターズ家の私財がほぼ失われた時に帝都とスターズ領は石畳で結ばれる。

結果何が起きたか、流通革命である。

他領へ向かう3倍の速度で着く目的地、危険な野営も無く、馬車の速度が速い為盗賊達にも襲われ難い帝都とスターズ領の交易ルートは商人達を集める事になる。商人達が集まり活気が付きスターズ領は一気に税収が上がる。その税収をウェイジェイは産業の発展に投資する。数々の新商品が開発されスターズ領の繁栄は帝国一となる。この頃にはウェイジェイは智の勇者の生まれ変わりではとの噂が帝都内で囁かれる事になる。

そして今年、40歳になったウェイジェイの活躍を認めた父親は家督を相続させウェイジェイは帝国宰相となる。宰相になったウェイジェイは内政面で数々の改革を断行し無駄を削る事で帝国経済を安定させる事に成功する。民衆達は「元遊び人が民衆の為の政治をする」と言う事に喜び、ミリノク共和国での敗戦の報が入るまでは自分達の行く末を楽観視していた。

帝国内の全ての民が「智の勇者の生まれ変わり」ウェイジェイ宰相を英雄視していたが、スターズ家のメイドの一人であるミターだけがウェイジェイを恐れていた。

彼女は見てしまったのである。

毎月訪れる宝石商から高値で買ったばかりの宝石を暖炉へ投げ入れながら笑う主人の姿を。


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