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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
第2部 帝国編
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人々の困惑

ベイラー帝国皇帝、ベイラー八世は背後に響いた爆音に振り返る。

凄まじい震動が城全体に広がった事を感じつつ理解する。

(アレは武力の者だ、断じて智力の者では無い!)

自身の言葉を無視される経験など一度も無かったベイラー八世は、ふつふつと湧き上がる怒りの感情を抑える事が出来ず、隠し通路を抜け自身の部屋に着いた途端に近くにあった花瓶を床へ叩き落とす。

にやけたアホ顔と不釣り合いな露出の高い服、存在そのものが人を馬鹿にしていた。

「陛下!ご無事で!?」

数刻の後、部屋へ文官達が集まって来る。

「アレはどうなった!?」

ベイラー八世が言うアレとはヒナコデスの事であり、文官達は皆がそれを理解したが誰も答えようとしなかった。

「逃げられたのか!!」

ベイラー八世は怒りを爆発させる。あの様な無礼な人間をみすみす逃した家臣達が許せなかったのである。

「いえ....陛下。逃げられてはおりません」

ベイラー八世が声の主を見ると国務長官であるワルター・フォン・テイラーが立っていた。

テイラーは現在50歳、腰まで伸ばした黒い長髪と鋭い眼光が特徴的で、性格的に潔癖な所があり融通性がなく、部下達からは陰で「辛気臭い長髪」と呼ばれ嫌われていた。

「おお!捕らえたか!良くやった!!あの娘どうしてくれよう!!」

「いえ...陛下。捕らえた訳でもございません」

「何!?どう言う事だ!?」

ベイラー八世の問いに国務長官テイラーは目を逸らしつつ答えた。

「現在ヒナコデス・フランケンシュタイナー殿はスターズ宰相が国賓として迎えており、迎賓館にて歓迎の宴が開かれております」

「なんだと!?何故そんな勝手な真似を!!何故捕らえようとせぬ!!」

ベイラー八世の怒声にテイラーは頭を下げつつ答える。

「捕らえようと致しました、結果、城の護衛に当たっていた二個小隊は壊滅しております。陛下。アレは勇者などではありません!化け物です!」テイラーは震えつつ話を続ける。

「陛下!私はこの目で見てしまったのです!奴の口から吐き出される緑色の吐息を!!その息を吹きかけられた警備兵達は泡を吹いて皆倒れてしまいました!!なんとおぞましい光景だったか!」テイラーの目には涙が光っていた。

「スターズ宰相が機転を利かせ取り入って下さったから良かった物の、あのままではこの城は一人の娘に落とされる事になっておったのですぞ!陛下!一体何を召喚したのですか!?」

「知らん!!ザストウィーに聞け!!」

「魔術長官ザストウィー殿は現在病室で治療中でございます!」

「何!?」

「ヒナコデス殿はザストウィー殿に喧嘩を売られたと言いザストウィー殿の館を聞き出した後に乗り込み、屋敷の護衛諸共全員を病院送りにしてみせたのです。トラキア家の屋敷はヒナコデス殿が口から吐いた火で全焼し灰と化してしまいました....。陛下!ヒナコデス殿に逆らってはなりませぬ!今はスターズ宰相に任せヒナコデス殿の怒りが陛下へ向かわぬ様にする事が大事であります!」

「皇帝である余に逆らうなと言うのか!!」

「陛下!例え皇帝であろうとも人外の存在には勝てぬ事をご理解下さい!!」

必死になって訴える国務長官テイラーにベイラー八世の心が動く。

本来冷徹で融通の利かないテイラーが、ここまで追い詰められ融通を利かせまくる姿を見た事が無かったからである。

「判った、貴様の意見に従おう....」

ベイラー八世は苦渋に満ちた表情でテイラーに答えたその時、ベイラー八世の部屋の扉が勢いよく開かれる。そして響く声。

「おーいハゲいるか?一応お前偉いらしいからウェイジェイ君の顔を立てて許してやるけどあんまり調子に乗るなよ?」

右手に骨つき肉、左手にワイングラスを持ったヒナコデスであった。

両手がふさがっていた為扉は足によって蹴破られていた。

重厚な扉に足で蹴られた穴が出来ていたのを見たベイラー八世は静かにヒナコデスへ答える。

「正直スマンかった....」

「んー?良いねー!!良い謝罪の仕方だよー!お前名前はなんて言うの?」

「ベイラー帝国8代皇帝ベイラー八世である...」

「ベイラー八世ね、おけヨロシクー。んじゃ俺はウェイジェイ君の所戻るから!いや〜良い部下持ってて良かったねー!ベイラー八世」

呼び捨てかよ!!ベイラー八世の心の叫びは誰の耳にも届かなかった。

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