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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
第2部 帝国編
152/256

ベイラー帝国

エルビア王国の西方に広がるベイラー帝国は、初代皇帝ベイラーから代々皇族は名を持たず、ベイラーの名のみを名乗っていた。現在8代目になる皇帝ベイラー八世は今年45歳になる巨漢で、頭の毛は生まれた時から生えておらず、更には鋭い眼光を持っていた為見た目だけで言えばならず者の様な風貌であった。

家臣達がベイラー八世の迫力ある風貌を恐れた事、特に問題が無い彼の治世、この二つの事からベイラー八世にとっては反抗する人間が居ない、安定した国営を行う事が出来ていた。2年前までは。


2年前、エルビア王国の王ゴールズ・フォン・エルビアが急死し、王位を継承した女王がエルビアの国力を急激に上げたのである。

エルビア女王ロウジー・フォン・エルビアは王位を継承する際に敵対した貴族マリーンドルフ伯爵家を滅ぼし、その財を全て民衆に分け与える事で国内の支持を集め、更には廃墟と化したマリーンドルフ伯爵領を新興貴族に与える事で復興景気を呼び込む事に成功。

又、新技術による回復薬の開発成功や保存食の開発で他国への輸出を高め、経済的な国力だけで言えば一年で帝国を超えてしまったのである。


今玉座に座るベイラー八世の前では、帝国宰相であるウェイジェイ・フォン・スターズ、

帝国軍長官であるワルク・フォン・モーガン、帝国国務長官であるワルター・フォン・テイラー、

帝国魔術長官ザストウィー・フォン・トラキアを筆頭に多数の文官達が意見を繰り広げていた。

「ミリノク共和国へ攻め込むべきだ!!」

「前回の敗戦を忘れたのか!!」

皇帝の前で怒号が飛び交う。それには理由があった。

急速に力をつけるエルビア王国に対し、周辺の小国が次々とエルビアへ併合される事を望みそして併合されたのである。

併合された小国には、エルビア王国の資金が流れ込み一気に発展した。そしてその事を知った周辺国が更に併合を求めた。そんな流れの中で、遂にはベイラー帝国の属国であった国の一つであるミリノク共和国がエルビア王国への併合を宣言した事が事の始まりであった。

当然ベイラー帝国としては認可出来る訳も無く、武力を持って威嚇するべくミリノク共和国へ12万の大軍で進軍する。ミリノク共和国はエルビア王国へ救援を求め、エルビア王国は6万の兵をミリノク共和国へ派遣する。ミリノク共和国のベイラー帝国の国境付近で両者は激突する。

エルビア軍の指揮を女王自らが取ると言う情報を得たベイラー八世は、その美貌が近隣諸国まで伝わる美しい女王の敗れ捕縛された姿を見る為に自ら出陣する。

12万対6万、誰もが帝国軍の勝利を信じて疑わなかった。


「余は帝国軍があの仮面女王に勝てるとは思えぬ、帝国軍長官はアレに勝てると思っているのか?」

ベイラー八世の言葉に家臣達が静まる。

ミリノク共和国における12万対6万の戦い、先陣を切ったのは女王であるロウジー・フォン・エルビアであった。ロウジーは騎馬隊を率いベイラー帝国軍へ突入、陣形を食い荒らす様に崩しエルビア王国を勝利へ導いたのである。実際にはロウジー個人の活躍よりも、サボテンポーションによる無限回復で兵士たちが何度でも立ち上がって戦った事が勝因だったのであるが、帝国軍にはロウジーの突撃が印象的だった為にそれこそが敗因だと思い込んでしまっていた。

「陛下、申し訳ございません。仮面女王に勝てる要素がありませぬ」

帝国軍長官モーガンは苦しげに答えた。

「前回の戦いだけでは無い、冒険者達の格も今やエルビア王国の方が上。余のベイラー帝国は落日の帝国と言った所ではないか。のう帝国魔術長官!」

ベイラー八世の鋭い眼光を受けた帝国魔術長官ザストウィーであったが、彼は動揺もせずに答えた。

「陛下、最早軍事力でも、経済力でもエルビア王国には遅れを取っております。こうなってしまった以上あの方法を試すし無いのでは?」

「勇者召喚か」

ベイラー八世の言葉に全員に緊張が走る。

勇者召喚は帝国に伝わる秘術であり、その手法は代々帝国魔術長官によって秘匿とされて来た。

帝国の勇者召喚には特徴があり、「武力の勇者」か「智力の勇者」を召喚する事が出来た。

但し1度使えば次回に使えるのは100年後であり、軽率に使える様な術ではなかった。

「武力の勇者」を得る事が出来れば武力によってエルビア王国を抑え、「智力の勇者」を召喚する事が出来れば画期的な開発を期待出来、経済力でエルビア王国に対抗出来ると考えられた。

200年前に召喚された「智力の勇者」は紙を開発し、それまで羊皮紙だった社会を変革させ、帝国に多大な利益をもたらせた為、今回も「智力の勇者」か召喚された場合にはどれだけの利益がもたらされるのかと、人々は固唾を呑んで見守る。

「良かろう!帝国魔術長官ザストウィー・フォン・トラキアに命じる!今この場にて勇者召喚を行うのだ!」

「ハハッ!」

ザストウィーは部下達に目配せすると直ぐに召喚用の装置が部下達の手で玉座の前に用意される。

4本の石柱とそれぞれを繋ぐ金属の糸、1本の柱には窪みがありザストウィーはその窪みに赤い宝石を嵌め込み呪文を唱え始める。

「vnp)xwloq)ixlbeq&wmly)]]][^valmz(ーーーー勇者召喚!!!!」

柱を繋ぐ金属の糸に光が走り白煙が上がる。

白煙の中に人影が見え、人々は感嘆の声を上げる。

白煙が消え一人の女性の姿が人々の目に映る。

女性は黒く長い物をくわえ一心に食べ続けていた。

「なんだアレは!?何を喰っている!?」

「何故此方を無視出来る!?普通なら無視出来る状況では無いだろう!?」

人々の動揺を無視し続ける女性。

「余がベイラー八世である!勇者よ!汝は武力の者か?智力の者か?」

ベイラー八世の言葉を無視して黒い物を食べ続ける女性、相良日菜子、ヒナコデス・フランケンシュタイナーは恵方巻きを食べる事に必死であった。


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