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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
はじまり
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B級北斗のキージーその2

B級冒険者チーム北斗にとってその日の護衛依頼は簡単に終わるはずであった。


チーム北斗はリーダーである「二刀流のキージー」を攻撃の中心に、「鉄壁テルー」、回復魔法の使い手である「僧侶スラハラ」、氷の攻撃魔法を使いこなす「氷結サムソン」の4人パーティで、メンバー全員がB級冒険者である為、ハルバット領ではナンバーワンチームとの呼び声も高かった。

そんなナンバーワンチーム北斗はメンバー全員が同じ孤児院で育っていた為、高位冒険者となった後も率先し

マガナ商会の護衛依頼を受けていた。

今回の依頼はとなり村からの調味料の輸送護衛であり、モンスターの狩場であったカミルの丘をオークキングごと封印した今、敵となり得る存在が居なかったからである。


しかし半日前にカミルの丘の封印の要、封印石の砕け散る破壊音を聞いた瞬間から、今回の護衛依頼の難易度が跳ね上がった事をパーティメンバー全員が理解していた。


「キージー!今の聞いたか!?」

痩せたマント姿の男、サムソンが怯えを隠そうともせずキージーに聞いてきた。

「ああ、確かに聞いた。あれは間違いなく封印石の砕けた音だった」

いつもより増して厳しい表情で答えるキージーだったが、そこに怯えは無かった。

「どうするよキージー、オークキング相手だと流石に守りきれんぞ」

全身を鉄の鎧で包んだ巨漢、テルーが低い声でメンバーに尋ねる。

「逃げの一択だね、逃げ切れるかわからないけれど」

小柄なまだ少年と呼んでも違和感がない男、スラハラは軽く答える。


「まず可能な限りカミルの街へ近づこう。そして街の近く、あの森の辺りで俺が残って足止めする」

キージーの両拳が強く握りしめられているのを見たパーティメンバーはキージーの意見に反対することは無かった。

互いに幼い頃から育ってきた為、キージーが一度決めた事を曲げたりしないと知り尽くしているからである。

「森の近くで足止めって事は、ある程度時間を稼いだら森に避難してくれるんだよね?」

スラハラが上目遣いでキージーに尋ねるとキージーは短く「ああ」と答えた。

「氷結魔法なら多少の援護になるんじゃないか?俺も残るぞ?」

サムソンは冷や汗をかきながらもキージーに意見を言うがキージーは首を横に振りながら答えた。

「いや、いざ逃げるとなった時は一人の方がいい、それに前回は戦う事が出来なかったからな、一度で良いから亡国級の化け物と戦ってみたい。」

「キージーも物好きだな」

テルーが低い声で笑いながら言うと、パーティメンバーの緊張は解け、互いに笑みを浮かべるのであった。


カミルの街近くの森へ着くとキージーは馬車を降りた。

「キージー街で待つ!!」メンバー全員がキージーへ向けて右手拳を突き上げながら叫んだ。

去っていく馬車を見送った後、キージーは自身のスキル「気配察知」を最大距離まで広げた。

気配察知はカミルの丘までは届かないが、かなりの距離を察知する事が出来た。

キージーは更にスキル「音波誘導」を発動させ自身より低位の者を退き、自身より上位の者だけを呼び寄せることにした。

下手に集めオークキングの餌にされる事を危惧した為である。

半刻後、両目を閉じていたキージーは気配察知の反応に両目を開いた。

気配察知に反応した生物は音波誘導に引き寄せられ、こちらへ向かってくる。

キージーは自身が高揚している事に気づいた。

「俺はこの戦いで更なる高みに行ってみせる」

そう呟きキージーは音波誘導の力を更に上げた。

しかしキージーに動揺が走る。

対象生物が近づいて来た為、気配察知の完全範囲となりオークキングでは無く人間だと解ったからである。

(馬鹿な!?カミルの丘の封印が解けたタイミングで何故丘の方角から人間が来る!)

キージーの動揺は更に続く。

音波誘導を最大限まで高めるが、対象者が森から出ようとしないからだ。

(有り得ん!例え人間相手であろうとも今までしくじった事など無いというのに!俺より遥かに格上とでもいうのか!?)


キージーは音波誘導を辞め森へ向かって叫んだ

「出て来い!居るのはわかっているぞ!貴様何者だ!」

すると声に反応したのか森の中からガサゴソと音をたて、一人の少女が出て来た。

見た事も無い身なりをした衣服が血に汚れた少女だ。身長は高いが鍛えている様には見えず、キージーにはとても自分より上位とは思えなかった。

「@@#@@@@#qz&」

少女が何か言うがまるで理解出来ない。

「貴様何を言ってる!」

キージーは両手の剣を鞘に戻しつつ一歩少女に近づいた。

その瞬間少女は一瞬白目となり、更にその白目が怪しい光を放った。

キージーは自身の最大奥義「二刀抜刀」を発動させる事を決意しつつ更に一歩間合いを詰める。


「待って下さい、私は旅の物売りです!食べ物を売りに来ました!」

血塗れの少女が突然流暢に喋り始めた。

キージーにはもはや少女が人外の化け物にしか見えなかった。

「そうか、一体どんな食べ物を売ってくれるんだ?」

キージーは友好的に質問しつつ近づいて行く、「二刀抜刀」まであと半歩。

「おでんです!」

少女が答えた瞬間、キージーの最大奥義「二刀抜刀」が発動。

左右の剣が相手の首目掛け交差するこの奥義は神速とも言えるスピードで少女の首を弾き飛ばすはすであった。

「何するんですかー!?このイケメンが調子に乗ってー!?」

キージーの左右の剣は少女の首に届く事無く、少女が持つ鉄の棘がついた棍棒で止められていた。

キージーは剣を引こうとするが、両手の剣は棍棒に食い込み更には少女の腕力が強いのか少しも動かない。

「お前盗賊だな!これは正当防衛だ!!」

少女が何を言ってるのか理解出来なかったが、キージーの気配察知は最多限に危険を警告していた。

キージーは剣から両手を離し、後方へ飛んだ瞬間、視界が緑色に包まれた。

着地したキージーだったが体が震えて力が入らない。

「馬鹿な」そう呟くとキージーは意識を手放した。

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