魔王城へ
本陣へ戻ったロウジーから俺は衝撃的な事を言われる。魔王城へ乗り込めと言うのである。
無茶苦茶だ!そもそも俺は軍師なのだ!軍師が直接戦うなんて既に敗戦状態だと言う事が解っていない!
ソレに魔族がグロい事も解ってしまった。そんな奴らの根城なんて絶対グロテスクの王様、
キングオブグロテスクに違いない。通路を歩けば上からポタポタなんか降って来そうだし、クモの巣が顔にぐわーってなりそうだし絶対に行きたくない!
そんな城に行くのは勇者の仕事であって俺は別に勇者認定された訳でも無い、只の軍師なのだから。
「えー!?それって魔王の城に単身乗り込む勇者じゃん!!俺は勇者じゃなくて軍師よ!?」
「ヒナコデス、私はこの国の王女となってみせます!ですから貴女も勇者になって下さい!」
うぉ!?なんか良い話っぽい感じにしようとしてる!騙されんぞ?俺は髪の毛にポタポタ謎の粘液喰らって顔にクモの巣かかるなんて嫌なんだってば!
「この軍師ヒナコデスには必勝の策がございます、一つ私に試させて頂けませんか?」
とりあえずこの場を凌ごう。
「ヒナコデスよ我等全軍囮となり、お前が無事魔王の城へたどり着く様命がけで戦ってみせよう!」
人の話聞けよロビンソン。何俺が行く程で話まとめようとしてる。
「やはり魔王城か...いつ出発する?私も同行する」
「カシム!」
いや何で二人カシム同行に感動してる??同行するのそんな大変なの??
そんな所に俺を行かせようとしてるの??おかしいよね??
「まちな、カシム」
「おまえばかりいいカッコウはさせないぜ!!」
「キージー!テルー!サムソン!スラハラ!皆さん危険な戦いになりますよ?良いのですか?」
何この会話。全体的に凄いクサいんですけど。昭和か?お前ら昭和生まれか?
てかまずは俺に確認しろよ、良いのですか?って、ダメって言うから。もう行くこと確定してるよね??
「ゴホッ、ゴホッ、ワシも最後のご奉公とするかの」
マールン咳してるよ!抑えた手に血付いてるよ!体調悪いなら行こうとするなよ!!
「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ!」
スラハラお前何を言い出す!?ソレ言っちゃダメな奴!!
「俺はロウジー様と共に残り囮部隊から爆撃魔法を撃ち尽くしてから行くよ。
必ず追いつくから待っていてくれ!俺もこの戦いが終わったらグミとメグの二人と結婚するんだ!」
ニター、お前それフラグ立てまくってるぞ!?てか重婚良いの!?つかお前ら今爆死しろ!!
「俺達もこの戦いが終わったら結婚するかヒナコデス」
「ラングお前は何を言っている!?俺を巻き込むな!!死ぬぞ!?」
「すまない、私は先程の戦いで傷を負ってしまったのでセイゴードンと此処に残る」
ウェックスお前ゾンビ化しないだろうな!?ゾンビ化して本陣全滅フラグ立ててないか!?
「では頼みましたよ皆さん!!」
「オー!!」
マジかよー!!決定かよー!!行きたくねーよー!
「最後にヒナコデスにお願いがあります、全兵士達へ支援スキルをお願いしたいのです」
「支援スキル?別に良いけど」
その6時間後、俺の前には1万を超える兵士達が並んでいた。
俺はマイクを取り出して皆へ語りかける。
「えー、それでは皆さんに支援スキルを掛けさせて頂きますのでご唱和をお願いします。
いち、にい、さんでダー。そして続けてオーとショアー。良いですか?いち、にい、さんでダーです。
それでは行きますよ」
俺は気力を込めて叫ぶ。
「元気デスカー!!元気があれなら何でも良いや!!では行くぞーー!!
いーち!にー!さん!ダーーーー!そして続けてオーーーーー!とショアー!」
辺り一面に響く唱和と俺の声、同時に兵士達が金色に輝く。この効果がいつまで持つのかわからないが兵士達が頼もしく感じた。
「全軍出撃!!!」
ロウジーの叫びにより進軍が始まる。
俺達はカシムの用意したダンジョンで手に入れたと言う魔法の道具に乗り込む。
「ああ運転はヒナコデスさんお願いします、私免許無いんで」
魔法の道具とは軽トラであった。
カシムもっと早く出せよ!?つかカシムお前もう何でも有りだな!?
軽トラのキーを回す、聞こえてくる機械音のメッセージ。
「ETCカードヲ、確認シマシタ、コノカードノ、有効期限ハ、エルビア歴580年3月デス」
この国にETCあるの!?いや嘘よね!!??つか道路無いのに高速ある訳ないよね!?
助手席のカシムを見るとラジオを弄り出している。
ラジオから音楽と共にMCのトークが始まる。
「エルビアのゆるーいニュースを扱うわくわくエルビア、今日も始まりました進行は私ダンジョンマスターがお送りします」
俺はラジオを切る。コイツら全員で俺を馬鹿にしてる!!カシムを睨み付けるがカシムは俺を見ようともしない。俺はイラつきながらアクセルを踏み込む。時間にして1時間もしない内に魔王城が見えて来た。
今日のイラつき全てを魔王にぶつけてやる!!