救出
「ところでウェックス、お前良く此処まで無事に来れたな?」
ぶっちゃけウェックスは戦える様には見えないし、セイゴードンが護衛として役に立つ様にも思えない。
「ああ、私の護衛をしてくれたセイゴードンさんのおかげですよ。彼は腕利きの召喚士で更にサンダー系の魔術師でもあるんです。彼の召喚したケルベロスの実力は凄まじく、魔物なんて恐れをなして近づいて来ませんでしたよ」
ウェックスの答えにセイゴードンへの興味が湧く。
「凄いなセイゴードン!俺にもケルベロス見せてくれよ!」
「おお!わかったでごわす!よかでごわすよ」
セイゴードンが何やら呪文を唱えると、大地に光の輪と文字が浮かび上がる。
「フォンフォンフォン、セイゴードンとやらなかなかやりおるわい」
マールンのつぶやきに俺の鼓動が早まる。
次の瞬間、眩しい光が辺りを照らしそして収縮する。
光の収まった場所には一匹の犬が居た。
「おお、ケルベロス、よう来たの〜」
セイゴードンがケルベロスと言う名の犬を撫でている。犬はつぶらな瞳でセイゴードンを見つめ「ハッハッハッ」と言いながら尻尾を振っている。
「犬じゃん」
「何という魔力!」
「召喚士セイゴードン、南方の雄と呼ばれる訳がわかった」
「ウェックス殿も運が良い、セイゴードン殿に守られれば無事は約束されたも同然」
「なるほど、セイゴードンと戦う事になれば無事では済まない事がわかった」
うぉ!?皆のセイゴードン評価が高い!?何で!?
犬だよね!?あ、犬が俺を見た。つぶらな瞳でハッハッハッ言ってる。
俺には魔力とか理解出来ないからな〜、魔力判ればコイツの凄さが判るのか?
でも俺猫派なんだよねー、実家で3匹飼ってたし。父ちゃんのネーミングセンスは最低だったけど。
白と黒のブチ柄の猫につけた名前が『白黒坊や』動物病院に連れて行った時に「相良白黒坊や」って書いた時と獣医の反応を思い出した。「えっ!?これ名前ですか!?」ってイヤ今は犬だ、猫じゃない。
ケルベロスが首を傾げた、もしかしたら犬も可愛いのかも知れない。
「お手」
俺は手を差し出してお手を命じた、ケルベロスは俺の手を噛んだ。痛かった。
「ヒナコデス!俺のスキル『気配察知』に反応有りだ!敵と思われる巨体な魔力が20!近くに弱い生命反応が多数!!まだ生き残ってる奴らが居る!罠を仕掛けて俺のスキル『音波誘導』でこっちに誘い込むか!?それとも突っ込むか!?」
突然キージーが叫んだ。そんなの決まってる。
俺はケルベロスに噛まれて血だらけの手にウェックスから奪ったポーションを振りかけながら答える。
「罠仕掛ける時間あったら突っ込んで生き残りを一人でも助ける!どっちの方角だ!?先行する!!」
俺はママチャリを無限リュックから取り出す。
「お前ならそう言うと思った!このまま道なりだ!」
俺はキージーの答えを聞くとママチャリを全力疾走させた。
「フォンフォンフォン、一人で抜け駆けはいかんのう」
ゲー!?マールン空飛んでる!?
「そうですよヒナコデスさん」
げー!?超合金カシムD Xもかよ!?
「お前ら空飛べるの!?」
「フォンフォンフォン、ワシ位の魔導師にとってはフライの呪文等朝飯前じゃよ」
「この鎧はダンジョンの宝箱から得た物で、魔法が組み込まれていて移動に特化してるんですよ」
「オイも行くでごわす!」
「私もカミルポーションを売り込むチャンスは逃しませんよ」
うぉ!?セイゴードン、ケルベロスの首にリード付けて自分を引かせてる!?
良く見たら足元浮いてるのか!!セイゴードン結構凄いのか!?ウェックスを背負ってるし。
なんかコイツらも結構何でも有りだよな。
けどな!切り札は最後まで取っておくもんなんだよ!!
横に並んだカシム達を振り切る為に俺はサドルから腰を上げる!
「ダンシングだーーー!!!」
みるみるスピードを上げライバル達を振り切る俺!
「ヒャっほーい!!!」
前方に黒い敵がちらほら見えて来た。四つん這いでテカテカしてる、ちょ!?アレ!?アレなの敵!?
振り切るんじゃなかった!!コレはレースじゃなかった!!
そう後悔しブレーキを掛けようとした時に奴らが何をしているのか見てしまう。
倒れた兵士を喰ってやがった、兵士が喰われながら俺に手を伸ばした。
距離にして100m、ママチャリ立ち漕ぎのままソイツ目掛けて熱線レーザー発動させる。
ソイツのテカテカした背中に当たり滑る様に弾かれた熱線レーザー。
ソイツは此方に気付いて立ち上がる。
全身がトゲトゲした黒い甲殻類人間って感じだ、触覚が長く目がデカイ。口は昆虫の口で全体的に特撮系の敵みたいな奴だった。良かったよモロな巨体虫じゃ無くて、とりあえずママチャリ喰らえ!!
ママチャリから飛び出しソイツにぶつける、ソイツは後方へぶっ飛びママチャリは砕けた。
「元気デスカー!!!!」
俺の回復スキルで倒れた兵士達が少し動く、良かった間に合った。
ただ俺の叫びで敵が全員俺に気付く、カマキリ男、バッタ男、クモ男、蜂男、命名するならそんな感じの黒い奴らが5匹か6匹ずつ居る。どう動く!?流石に囲まられたらマズイぞ!?
「ヒナコデスさん先走り過ぎですよ」
俺の後ろからカシムの声が聞こえ振り向いた瞬間、嫌な音が聞こえた。
ゆっくりモードが発動し敵の方を見ると蜂男が超スピードで突っ込んで来ていた。
蜂特有のお尻に付いた毒針を伸ばした体勢で俺へ向かう蜂男、俺は蜂はダメなんだよ!
右に避けようとした瞬間、蜂以上のスピードで俺の前に超合金カシムが周り込み、そして刺された。
「カシムーーー!!!!」