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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
動乱
134/256

戦い前夜

「父上はヒナコデスさんに甘いのではありませんか?」

ログハウスへ入って行くヒナコデスを横目で見つつケビンが父親であるロビンソンに話しかけていた。

「第一、あのログハウスにしても『女王となるロウジー様に野営をさせるつもりですか?私の収納魔法であればロウジー様用の家位入ります』等とヒナコデスさんが言い出してロウジー様用に預けてあった物では無いですか、それが初日から『私の収納魔法ですから私にも泊まる権利がある』等と訳の分からない理屈で泊まり込み、今では自分が家主気分ですよ」

ロビンソンへ愚痴をこぼすケビンの前にロウジーが現れる。

「私も明日に備えて早めに休ませて頂きますわ、将軍もあまり無理はなさらないよう」

「お言葉ありがとうございますロウジー様」

ロビンソンの言葉に頷くとロウジーはログハウスへ入って行った。

「あーロウジーいらっしゃーい」

「おじゃましますわ」

ログハウスから聞こえた声にケビンは声を上げる。

「今の聞きましたか!?あのサボテン調子に乗りやがって!!」

「くはははは」

息子であるケビンの感情むき出しな声にロビンソンは笑ってしまう。

「何がおかしいのですか父上!!ロウジー様がログハウスを奪われているのですよ!!」

「まぁそう言うなケビンよ、実際ヒナコデスの収納魔法が無ければロウジー様が野宿をせざるを得なかったのは事実、ヒナコデスの手柄とも言えよう」

「ですが!」

ロビンソンは笑いながらケビンを右手を上げ制す。

「私はなケビンよ、ヒナコデスを見てると楽しくなるのだよ。これはおそらく私だけではあるまい。

本当の事を言えば最初、私はケビン、お前をロウジー様の夫にしてこの国をお前の物にしたいと考えて立ち上がったのだよ。だがヒナコデスを見てると、貴族だの王家だのまるで関係無い生き方をしている。

そしてあの娘は実に自由で実に楽しそうだ、そんな彼女の生き方こそが本当の幸せなのではと思い始めていてな。だから今ではケビン、お前の嫁にはロウジー様では無くヒナコデスをと考えているのだよ。

あのヒナコデスを娘と呼ぶ事を想像するだけで笑えてくるのだよ」

「父上!!私の気持ちも考えて下さい!!」

「なんだ、嫌なのか?」

「絶対に嫌です!!見てるだけなら笑えますがアレを妻にするだけの器量は私には有りません!」

「まぁ慌てる話でも無しなので結論は急がぬが、器量に関しては後から付いてくる物だとだけ言っておこう」

ロビンソンはケビンに手を振り自身のテントへ向かう。その最中ケビンの慌てた表情を思い出し微笑みを浮かべつつテントへ入って行った。

一方ケビンは複雑な感情を抑えつつ夜空の星を見上げる。

「女王とアホの二択かよ」

その呟きは誰の耳にも届く事は無かった。


兵士達も寝静まった深夜、決起軍先発隊の野営陣の上空に王都会議を襲撃した鳥頭の魔族が飛翔し現れる。

「先日の借りを返しに来たぞマタグナヨ!」

鳥頭の魔族が両手を広げ魔力を高めようとした瞬間、鳥頭の後頭部に火球がぶつかる。

「グぁ!??」

痛みと衝撃に驚き振り返ると一人の男が宙に浮き右手を鳥頭へと向けていた。

「フォンフォンフォン、不意打ちとは卑怯よの?」

魔術師マールンである。マールンのファイアーボールが鳥頭の後頭部へ直撃したのであった。

「貴様ー!!目の前に現れる等と人間風情が魔族に勝てると思ったか愚か者め!!」

「フォンフォンフォン!ワシのスキルは目の前でないと使えないのでのう」

「爺いの分際でスキルだと!?笑わせる!!言っておくが先程の攻撃、俺様にダメージ等無いぞ!!」

「そんな事は....」

マールンは言葉の途中で姿勢を低くし猛烈なスピードで鳥頭へ突進する、そのあまりの速度に鳥頭は対応する事が出来なかった。

「百も承知よ」

鳥頭の腰を掴み、強烈なタックルを発動したマールンはその勢いで地上の地面へ鳥頭を叩きつける。

「グヘ!」

マールンの強烈なタックルによる腹部へのダメージと大地に叩きつけられたダメージにより鳥頭は呼吸困難に陥る。

その倒れた鳥頭の腹部に跨ったマールンは鳥頭の顔面へパンチを連打で入れ始める。

所謂マウントポジションからのパンチである。

鳥頭はパンチから逃れようとうつ伏せになるがマールンはそれを狙い鳥頭の首へ腕を回し締め上げる。

「首を締められれば魔法を唱える事も出来まい、魔力の差が戦力の差では無いと言う事じゃな」

耳元で囁かれた鳥頭は必死に腰に隠した転移装置へ手を伸ばそうとする。

正に転移装置を手にしようとした瞬間、その手を刀が切り落とす。

「!!!」

痛みに悲鳴を上げるが首を絞められ声にならない。

「良い試合を見れたのに終わった後にゴチャゴチャされるのは良くないですよ」

マールンの戦いを観戦していたカシムであった。

「マールンさん、良いタックルでした!スピアーですか!?」

「フォンフォンフォン、ワシのスキル「パンクラチオン」はただのタックルしか無いんじゃよ」

「おおお!!ただのタックルであの威力!!素晴らしい!!」

二人の会話を遠くに感じながら鳥頭は命を落とす。

その死体はカシムの収納ボックスに入れられ、その夜にあった戦いは二人だけの秘密となった。


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