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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
動乱
131/256

前線へ

魔族による襲撃を受ける事により、魔族の力を目の前で見せつけられた貴族達の行動は早かった。

貴族達は皆ロウジーを次期王女へと口々に言い始めたのである。

フェールズ公爵でさえも王位継承に関しては一歩引き、その事を咎めようとしなかった。

何故か、その理由は「転移魔法」にあった。

現在王国内で可能としていた「転移魔法」は魔導師10数名の魔力を用いて魔道具を利用しての転移のみ実用化されており、しかも転移先にはあらかじめ小さな魔道具を設置しておく必要がある等の制約が多岐に渡る為、魔術を拠り所として居た旧マリーンドルフ伯爵領でのみの実用化であった。

しかし今回、魔族はたった一人の魔力で魔道具に頼る事も無く転移して見せた。

確実に言える事は魔族1人の魔力が人間の10倍以上あると言う事であり、そして可能性として言える事は、最悪の場合、魔族は制限無しに転移が出来ると言う事であった。

制限無しに転移が可能で有れば、いきなり王の首を取られる事もあり得る訳であり、魔族との戦いを終わらせるか、なんらかの休戦協定を結ばない限り、王位の座とは魔族に最も狙われてしまう格好の的と言えた。

だからこそ貴族達はまだ5歳の子供であるオーガス・フォン・エルビアの王位継承を諦め、ロウジー・フォンエルビアの王位継承を黙認し始める。

フェールズ公爵も、第1にロウジーが魔族の襲撃で死亡すればそれで良し、第2に魔族討伐後で有れば何らかの巻き返しを図れればそれも良し、第3に自身の息子をロウジーの夫にすれば良し、最後にオーガス・フォン・エルビアが成人するまでの中継ぎ的な女王にすれば良し、と4つのプランのいずれかでも良しとする妥協により孫であるオーガスの直での王位継承を諦めたのである。


ロウジーを暫定女王とした貴族達は早速決起軍に前線への移動をロウジーへ願い出る。

これも魔族の力を見たが故にであり、一度戦いが始まればゼブル侯爵領は長く持たずに敗北するとの認識が強まったからであり、フェールズ公爵自身の第1プランであるロウジーの死にも繋がる可能性があると考えたからである。

魔族の危険性と一刻も早い援軍の派遣を訴える貴族達、今回見事に魔族を撃退した決起軍に是非先輩して欲しいとの声にロウジーは応える。

決起軍8000の内先輩として1000人の騎兵がゼブル侯爵領へ向かう事となる。

1000頭の馬は貴族達からロウジーへ献上され、カミルの冒険者を中心に先輩隊が編成されその日の内に王都を発つ。

その選抜された騎兵隊は日本の速さで言えば時速20km/h程で走ってゼブル侯爵領へと急いでいたが、

そんな騎兵に混ざって必死でママチャリのペダルを回すヒナコデスの姿があった。

ヒナコデスは「へはぁー!へはぁー!」と低い呼吸音で必死に馬と並んで走っていたが、ヒナコデスの乗るママチャリにはギアが付いていなかった。

ヒナコデスはギアを変える事も出来ずひたすらペダルを回し続ける。

道が登り坂になると自身に気合を入れる為にママチャリのベルを鳴らし「ブーストオン!!」と叫んでいたが、馬の足音に掻き消され誰の耳に届く事も無かった。

汗を流し必死になってペダルを回すヒナコデス、馬達が速度を上げヒナコデスを引き離しにかかるとヒナコデスはペダルを漕ぐスピードを更に上げ叫ぶ。「ケイデンスもう10回転上げました!!」

しかし馬の足音に掻き消され誰の耳に届く事も無かった。

どの位の距離をママチャリで走ったのか、疲労が限界まで来た時にヒナコデスは思い出した、自身が回復スキルを持っていた事を。

「元気デスカー!!」

その叫びは馬の足音に掻き消され誰の耳に届く事も無かったが、馬達の疲労は消え去り元気一杯になって速度を上げた。

ヒナコデスは涙目になりながら自身がスキルを間違えた事を悟る。

「待ってよーオーー!!.....オー!!!」

ヒナコデスは必死に自己回復スキル「オー!!」を発動し馬をママチャリで追いかけて行った。

その一連の流れを後ろから見ていたカシムの顔はサディスティックに笑っていた。

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