戦えプロレスラー
1時間ほど歩くと待望の道に出る事が出来た。
もちろん舗装されている訳では無いが、二車線道路位の幅は有る。
後はこの道に沿って馬車の向かった方角へ歩くだけで良い。
言葉が通じるかが不安だが「おでん」が有ればなんとかなるだろう。
しばらく歩くと森が見えて来た。道は森を迂回するように続いている。
木々を見ると、この地が日本と違うと実感出来る。あの「杉」が見当たらない。
この世界では目のかゆみに悩まされずに済みそうだ。
そんな事を考えていると金属がぶつかる音が聞こえた。
俺は音に向かい走り出した。
もしかしたさっきの馬車がモンスターに襲われているかもしれない、今から走れば何かの助けが出来るかもしれない。
そう考えると俺の足は早まって行く。
(俺こんなに走れたっけ?)
そう思えるほど俺は長い距離をかなりのペースで走った。
息は切れない。まだまだ余裕で走れそうだ。
そう考えた瞬間、異音が聞こえてきた。
「へはぁー!へはぁー!」
低くよく響く異音、「もしや未知のモンスターが来たのでは!?」と周囲に意識を向けるが何もない。
「へはぁー!!へはぁー!!」
異音の正体は俺の呼吸だった。
限界まで走ると呼吸が切り替わるようだ。この呼吸法のお陰で有酸素運動の苦しみは全く感じない。
「スキルプロレスラーへはぁー!へはぁー!凄いな!へはぁー!へはぁー!」
独り言も呼吸音入りになっている。
凄い便利だけど人前では恥ずかしいかもな。
金属のぶつかり合う音が近い、しかもさっきより激しくなっているようだ。
道は森を沿って右にカーブしている。
あのカーブを曲がれば音の正体がわかる筈だ。
だが待てよ?もしあのカーブを曲がった瞬間、絶対勝てない相手が居たら終わりじゃないか。
無闇に突っ込むのは無しにしよう。
俺は道を飛び出し、真っ直ぐ森に突入した。
森はそこまで険しい訳では無く、速度を維持したまま金属音の方角へ走る事が出来た。
いよいよ金属音が近いが特に戦いの気配を感じる事が出来ない。
プロレスラーには戦いの気配を察知するような能力は無いようだ。
そして見た。二刀流の男が一人で激しく両手の剣をぶつけ合う姿を。
右手の剣と左手の剣をぶつけ合い剣で拍手をしているようだ。
なぜそんな事をやっているのかが謎では有るが、特に危険がありそうな感じは無いので良しとしよう。
俺は好んで戦いたい訳では無いのだ!!




