王都会議
王都に着くなり即座に入城、んで今偉い貴族さんや文官さんらが30人位居る広間で会議中だ。
大きなテーブルを挟んで向こう側にフェールズ公爵とか言うライバルって話の貴族を始めとした5大貴族とその側近、んで向かい合う形でロウジーを先頭にロビンソン、俺、リーチ、イッパツ、ツモ、ドラドラ、あと併合して来た配下の弱小貴族達が並んで座っている。
そんな緊張感ある席ではあったが、俺は今、超ご機嫌だぜ!なーんてこった!最高の気分だ!
理由は目の前のティーカップにある。
貴族供の前にはティーカップに注がれた紅茶らしき物が用意されているが、なんと俺のティーカップの中身だけ「日本酒」なのである。
何故日本酒が!?その答えは勇者高橋だ。あのネーミングセンス最低勇者は、名前付けるセンスは無いけど優秀だったっぽい。勇者高橋はツモ男爵の領地で米やら酒やら味噌だの醤油だのを生産地として根付かせ、ツモ男爵領へ行けば日本食が楽しめる様にしてくれていたのだ。流石勇者高橋!俺には真似できない!
んで会議の間は俺がストレスを感じ無いようにと皆が気を効かせて、日本酒やらスルメやら生牡蠣やらがこっそりと俺の前に運ばれて来るのである。
「決起軍の参加自体は問題はありませんが指揮系統の一本化は必要なのではありませんか?」
「決起軍はあくまでもロウジー様の軍、どなたかの下に入るつもりはありませんな」
「貴殿がロウジー殿に貴族に取り立てられたロビンソンとやらか、
爵位も無い者があまり大きな声で囀るな」
なんか会議うるさいな〜。
「ツモ男爵!このゲソのスルメと生牡蠣最高!日本酒に合う!!」
「ヒナコデス様、お声を小さく!あと生牡蠣ではありません、生ヒルですよ」
「....生ヒル〜?」
「生のデビルヒルですよ、勇者タカハシの好物と伝えられていますが領内でそれを生で食べようとする者はおりません、もし生で食べる事が出来た者には勇者タカハシに因んで「生ヒルを食した勇者」の称号が与えられます。」
マジかよ、ヒルかよ....。つか領民が喰わない物を出すなよ!つか美味かったけど。
「ゲソのスルメはイカを干した物だよね??」
「それはのキャタピラーの足を干した物です、勇者タカハシが好んで食したと伝えられておりますが、領内でそれを食べようとする者はおりません、勇者タカハシへの捧げ物として作る技術が残っているだけでございます。
....いやだから領民が喰わない物を出すなよ!!美味かったけど。
「そもそもロウジー殿に王家の血が流れているのかも怪しいものですな」
「まったくですぞ」「まぁまぁ、今は魔族との戦いが肝要、まずは其処から」
なんか会議盛り上がってんねー、つかアイツら全員お茶飲んでる中俺だけ日本酒でスルメかじってる。
なんと言う優越感!美味え!最高だ!ツモ男爵良くやった!!
「ツモ男爵君、生ヒルのお代わりを」
「かしこまりました」
「ゼブル侯爵領への侵攻は未だ始まっておりませんが、魔都での我が軍の敗北で判る通り一刻も早いゼブル領への援軍が必要なのです、後継者に関する事はこの際後回しに...」
「緊急時だからこそ後の憂いを解決しておきたいのだがな」
生ヒル美味えー!なんだろこの美味さ!牡蠣が海のミルクならヒルは沼のミルク?あんまり美味しそうじゃないな。
「おい!貴様!先程より何をやっている!」
ん?誰か怒られてる、メイドがなんか粗相したかなぁ?スルメ美味え!
「貴様の事だ!!」
うぉ、若い末席のにいちゃんが指差してキレてるよ怖っ、あんなキレる奴とは付き合いたく無いね。
しかしこの日本酒の香りがフルーティな事、大吟醸しちゃってる?高橋すげえな。
「女!!私を愚弄しているのか!!!」
うぇ!?俺ーーー!???なんでーー!??大人しく酒飲んで食べてただけなのに!!
つか何?いきなり会議で発言しないとパターン??会議でいきなり名指しするのやめてほしい、マジで。
あーー会議の名セリフってなんかあったっけなーーーー思い出せ俺の知識チート!!
「決起軍軍師日菜子です、一つ言わせて頂きたい」
「なんだ!?言ってみろ!!」
「事件は会議室で起きてるんじゃ無い!!戦場で起きてるんだ!!」
これでok、日本酒チビリとやってからの〜スルメ美味え〜!!
「貴様ーー!!!ふざけているのか!!もう一度言ってみろ!!」
うぉにいちゃん貴族マジギレしたよ、おかしいな〜名セリフなのに。戦場ってのが伝わりにくかったかな?
しょうがないけどもう一度。
「事件は会議室で起きてるんじゃ無い!前線で起きてるんだ!」
「ククク!無能な輩が集まって無駄な会議を延々と」
突然ガラスの割れる音と共に響く笑い声。音の方を見ると羽を広げた黒い鳥頭が喋っている、うぉ!?あれが魔族!?つか事件会議室で起きちゃったよ!!
「アイスアロー!!!」
うぉ!?なんかイケメンのお兄さんがすっげーカッコよく魔法攻撃してるよ!!
うあ?何アレ鳥頭の体に刺さった氷がどんどん蒸発してる!?
「ククク!A級ムートンのアイスアローとはこの程度か!最早相手にもならんな、貴様ら全員消し炭にしてやろう」
おおおお??鳥頭が両手を空に広げたらその上に炎の玉が出て来てどんどん大きくなっていく。
「皆んな逃げろ!!アイスウォールで被害を最小限に食い止める!!」
イケメンにいちゃんカッコいいな〜、つか鳥頭の炎玉、もう大型バスより大きくない??
と余裕こいてたら気付いてしまった。
耐熱無効あるから俺は大丈夫だと思っていたが、せっかくの生ヒルが焼きヒルになってしまう。
それはダメだ。
「ククク!そろそろ神へ祈るが良い!!」
鳥頭が両手を大きく振り下ろそうとしたのでペットボトル水を口から飛ばして火を消してやった。
こちとら何度山火事防いだと思ってやがる。
「事件は会議室で起きてるんじゃ無い!前線で起きてるんだ!」
「きっ!?貴様!!」
「鳥!!俺は言ったぞ!?事件は前線だと!!またぐなよ?其処から此処にまたいで入るなよ?」
「貴様!!魔王軍突撃部隊隊長の私を!!!」
「またぐなよ?またぐなよ??」
「貴様!名前は!!」
「またぐなよ?」
「マタグナヨ!覚えておこう!!」
鳥頭が一瞬で消えた。
「転移しやがった....」
イケメンが呟く、転移とかあるのねー。俺は席に戻るとスルメをしゃぶりながら宣言した。
「ね?事件は会議室で起きてなかったでしょ?」