サボテン
「ギギギ.....ギブ!」
ギブアップの意思表示をしてみたが塩を塗った傷口の痛みに変化は無い。
俺は涙を流しながら水で塩を洗い流した。
出血は止まり傷口の痛みは幾らか緩和されたが、痛みが有る事に変わりない。
俺は幼い頃に転んだ際、アロエを割り傷口に塗った記憶を思い出した。
「そうかサボテン!!」
俺は無限リュックからサボテンを取り出す。棘が凄い。
ブーツでサボテンを踏み割り、粘ついているサボテンエキスを手に取り傷口へ塗った。
「!!!」
痛みが消えた。
傷口に触れてみるが、傷口も無ければ塗ったはずの粘ついたサボテンエキスも無い。
「これって回復薬を手に入れたって事?」
思わず呟く。
俺のスキルが「プロレスラー」だから回復するのか、それとも「サボテンエキス」が凄いのか、これは判らないがもしサボテンを回復薬として利用できるのであれば「おでん屋」より目立たず儲かるのかもしれない!
俺は残ったサボテンをフライパンに乗せビッグファイヤーで炒めた。サボテンステーキだ。
緑陽色野菜がおでんには欠けている。俺は今までサボテンを野菜としか見ていなかった、だが俺のサボテンには回復薬「サボテンポーション」としての可能性が見えてきたのだ。
俺は少し興奮しつつサボテンステーキを食べた。
「美味い!このサボテンを焼いたシェフを呼べ!」
サボテンステーキは美味だった。そして焼いたシェフは俺だった。
おでんとセットにすればシェフとしてやって行けるかもしれない。
傷口に塩を塗った暗い気分から一気にテンションが上がってきた俺は、パンクした自転車をリュックに一度戻しもう一度取り出してみる。
自転車のパンクはそのままだ。
なるほど、まだ凶器として自転車は使えるからか。
徹底的に破壊したらまた新しい自転車が手に入るのかもしれない。
俺は再び自転車をリュックに戻し、馬車の向かって行った方角へ下って行く事にした。