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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
カミルの街・激闘編
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三剣士

モスの指揮する暗黒騎士団は全員が同じ漆黒のフルプレートで個性を殺し、更に団としての結束を強める為団長であるモス以外は互いをナンバーで呼び合っていた。No.1は団長であるモス、No.2から入団した順に定められており、胸に刻まれたナンバーで識別していた。

モスと行動を共にしたNo.11とNo.12が比較的新しい団員で、ベテランであるNo.2、No.3、No.4の三人が其々分隊の指揮を取る形が暗黒騎士団の常であった。

3方へ別れた暗黒騎士団の内、真っ先に異変を感じたのはNo.3であった。

(何だ?この異臭は...)

これまで経験した事の無い異臭が風に乗って漂って来たのである。

「行くぞ」

No.3は異臭の元に揉め事があるに違いないと考えNo.7とNo.8を率い足を早める。

異臭が強くなってくるにつれNo.8が苦しみ出す。

「No.3!この道を進むのは辞めないか!?」

No.7が強く訴える。

「確かにこの臭いは酷い、我慢の限界だな、他の道を進む事にしよう」

No.3も同意した時に彼らにとっての事件は起こった。

「この香りの良さが理解出来ないとは笑止千万!ラーメンは世界を救う!

我らラーメン三剣士がラーメン道を教えて差し上げよう!」

突然目の前に現れた冒険者風の四人組。

「貴様ら冒険者か?今のセリフは俺たちに喧嘩を売ってるのか?」

モスの命を守り、冒険者へ喧嘩を売るNo.7、しかしNo.3は全く別の事を考えていた。

(何故四人なのに三剣士!?もっと言えばコイツら剣士、剣士、僧侶、魔導師で2剣士2魔法使いだろ!)

「お前達は何者だ」

No.8が吐き気を堪えながら尋ねる。

「我らB級冒険者、ラーメン三剣士!!!ヤー!」

四人の男達、キージー、テルー、サムソン、スラハラは掛け声と共に自身の武器を互いに空で交差させる。

2本の剣と2本の杖が交差された光景を見ながらNo.3は思った。

(だからお前達4人だろ)

「お前達、俺達暗黒騎士団を舐めてるのか!?後悔する事になるぞ!!」

No.7が最後通告とばかりにクレイモアを鞘から抜きつつ宣言する。

(相手は謎だがB級冒険者であれば潰しておく事が当初の予定、ならばやるか)

そう考えNo.3もクレイモアを抜いたその瞬間に足元が光り大地に固定されてしまう。

(これはバインド!!僧侶の先制攻撃か!)

3人の暗黒騎士は僧侶スラハラの魔法により動きを止められてしまう。

「バインドの先制攻撃とはな...だが所詮は辺境の僧侶、魔術のレベルが低すぎる。

王都の僧侶であればバインドによる魔力のイメージは鎖と化し相手を固定する物をなんだコレは、

まるでパスタでは無いか」

僧侶の妨害魔術バインドは術者の能力により固定力が決定され、一流と呼ばれる僧侶のバインドは魔力が鎖と化し相手の足元を縛る魔術であったが、スラハラのバインドは暗黒騎士達の足を固定する事が出来ずプツプツと千切れていった。

「フッ、それはバインド等では無い、ラーメン三剣士麺担当奥義!麺縛りだ!」

暗黒騎士達は足をあげる事でバインドを強引に引きちぎった、しかし彼らの足が大地に着いた瞬間に再び新たな麺が足元を縛る。

「な!?連続バインド!?しかも無詠唱だと!?」

「連続では無い、替え玉だ」

暗黒騎士達は言葉の意味を理解出来なかったが、行動に著しい制限がかけられた事は理解出来た。

まともに歩く事が出来無いのである。

「モチモチとした、そしてプツンと切れる瞬間の喜びを味わうがいい。だが一つだけ教えてやろう。

我が師の言葉だ。

『カタ』『バリカタ』等で麺を知った気になるな!修羅の国においては『粉落とし』まで極めているぞ!」

カタもバリカタも理解出来無い暗黒騎士達だったが粉落としだけは理解出来た。

言葉の意味だけではあったが。

(この状況に粉!?落とすのか!?毒の粉が投げられるのか!?)

混乱する暗黒騎士達を無視してテルーが前に出る。

「ラーメン三剣士、スープ担当テルー。スープを飲み続けるスープの底へお前達を連れて行ってやろう」

その言葉と共に片手剣と盾で襲いかかるテルー、3人対1人に関わらずテルーの攻めの速度に3人は追いつく事で精一杯だった、麺縛りの影響である。

止まらないテルーの攻めにNo.8の動きが鈍る。

(息が!息が出来無い!!)

延々と繰り出される攻撃をクレイモアという両手武器てガードし続けた結果、呼吸が追い付かず酸欠に陥った3人の中で、当初から吐き気を堪えながら戦っていた分、限界が来るのが一番早かったのである。

突然倒れるNo.8。

「飲み干せなかったようだな」

手を止めるテルー。

(コイツらは強い!強すぎる!)

No.3は酸欠の苦しみに耐えながらクレイモアを握る両腕に力を込める。

「ラーメン三剣士よ、トドメは俺に任せてくれ」

キージーの言葉に緊張が走るNo.7、

お前は三剣士じゃないのかよ!だったら最初の我らってなんだよ!と思うNo.3

「あーあラーメン三剣士具材担当のサムソン様は出番無しかよ」

「そう言うなサムソン、お前の氷結魔法によるフリーズドライ製法に師は一番期待しているんだぞ?」

「わかってるって!じゃキージー後は任せた!」

サムソンとキージーの軽いやり取りの意味が全く理解出来無いNo.3とNo.7、

No.7の心は既に折れ、足がガタガタと震えその度に足の麺がプチプチと千切れていた。

「そろそろ見せてやろう、ラーメン三剣士の実力を!!必殺湯切り斬!!」

キージーの持つ二本の剣が一度大きく振り上げられ、凄まじい速度で振り下ろされる。

攻撃範囲外、剣の届く距離では無い、そうNo.3が思った瞬間胸元を襲う激しい痛みと衝撃、

暗黒騎士達2人は吹き飛びながら意識を手放してしまう。

意識を失う寸前にNo.3が思った事は、やっぱりお前は三剣士なの?どっち?であった。

「おお凄いなキージーさん、今の切れました?」

キージーに尋ねる年少のスラハラ。

「切れちゃいないよ、峰打ちだからね、まぁあの程度の相手に真剣で勝負する必要は無いからな、

俺に切れさせたら大したもんだよ、切れちゃいないよ」

「アイツらどうする?」

サムソンの問いに答えるテルー。

「放っておこう、死にはしないだろう。それよりラーメン食いに行こうぜ」

「良いねーラーメン食いに行こう」

「おけラーメンは世界を救う!」

楽しげな4人にとって暗黒騎士達との戦いはお遊びに過ぎなかった。





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