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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
カミルの街・激闘編
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ラングの戦い

感謝祭へ向けウェックス商会のカミルポーション生産工場は繁忙期に突入していた。

本気になったヒナコデスの生産能力は凄まじく、正に目にも留まらぬ速さで次から次へとレーンへ正確に原材料を投げ込む姿に、工場で働く作業員達は畏敬の念を抱くのであった。

ヒナコデスの生産能力が向上すると共に、サボテンの独自栽培を試みていた保管担当のミネルバの研究が成功する、この事により原材料の不足に陥る事態は避けられ、又ヒナコデスへの負担も本来であれば大きく減らす事が出来た。しかしウェックスの指示によりサボテンの独自栽培はヒナコデスには伏せられる。

ヒナコデスが知れば働かなくなるとウェックスが考えたからである。

ミネルバの栽培したサボテンは驚きのスピードで成長する事が判明し、しかも生命力が強く枝分かれした部分を切り取りポーションへ加工したその翌日には枝が再び生えているといった物だった。

これは魔力の存在しない世界から来た植物が魔力を受けた結果では有ったがその事に気付ける者は居なかった。ウェックス商会の上層部はサボテンの生産が可能になった事を喜んだが、

独自栽培を成功させたミネルバはサボテンの成長速度に恐怖を感じていた。

何故ならば彼女の用意していた小屋は既にサボテンがひしめき合い扉を開けるとサボテンで壁が出来ており、いわゆる生物学的危害バイオハザードの様相を呈していたからである。

小屋のサボテンを先に消費させる為に、ウェックスには内密でヒナコデスに休みを勧める等のミネルバの奮闘により世界は救われる事になるが、それは別の話である。

この時ウェックス商会の上層部で一番精神的に追い詰められていたのはミネルバであったが、現場の作業員で追い詰められいたのはB級冒険者のラングであった。

ラングは両手斧を使いこなす力の強い優秀な戦士ではあったが、優秀な作業員とは言えなかった。

レーンから流れるサボテンの数は既にラングの処理能力を大きく超えている。

作業の遅れが他の作業員と比較すると倍以上、周囲の子供達に6番は仕事が出来ない可哀想な人と同情され、

必死の思いで作業が終わらせればヒナコデスに理不尽な言い分で逆水平チョップを喰らう。

ラングは限界に達していた。

(もう嫌だ!働きたく無い!!感謝祭って俺に感謝しろよ!!休み欲しい!!!)

ラングの暗い怨念が最近休みが増えたヒナコデスへ向かおうとしていた時に事件が起きる。

パーティメンバーのホールが冒険者ギルドに来てくれとラングに助けを求めて来たのである。

「ラング、何か3人組のヤバイ奴らが今ギルドに来ててかなりマズイ。ちょっと手を貸してくれ」

カミルの街の冒険者達にとってB級赤毛連盟、B級北斗、B級爆撃団は気軽に話しかけられる相手では無かったがB級冒険者のラングは相方のホール以外は固定のパーティを組まず、カミルの街の冒険者達の誰とでも依頼を受けていた為、困った時はラングに頼む事が、カミルの街の冒険者達にとって最良の解決策だった。

今回もホールを通じ、ラングへと救いを求めるというお決まりのパターンであった。

「ラング、相手の様子がおかしい。油断だけはするなよ」

「皆!!済まない!!冒険者ギルドでトラブルだ!!6番抜けます!!」

皆が驚愕の顔でラングとホールを見つめる、暗く沈んだ目であった。

誰もが「お前の穴を埋めるの俺たちだぞ?トラブルは分かるけどそれでこっちがトラブルだよ」と思っていた。

「死人が出るかも知れないんだ!済まない!」

ホールがそう言い残してラングを連れて行く。

作業員の半数が「それじゃしょうがない」と悲し気に作業へ戻ったが、

半数は「こっちが過労死するかも知れないじゃーないか!」と怒りに顔を火照らせながら作業へと戻った。



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