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マンホールタウンin八王子  作者: たこの吸出し
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八王子④

ようやくアンダーグラウンド八王子についての話が出てきました。

湯船に浸かるとどっと疲れが出てきた。


桧のお風呂は実家を思い出す。

亡くなったじいちゃんの自慢だった。


ハチさん家のお風呂は実家のものより大きく、小さな銭湯ぐらいの広さがあった。


実家と同じ香りと温かい湯船に気が和らいで、先程から一言も発さず黙々と身体を洗っている蓮華に声をかけた。


「いやー、立派なお風呂だね。うちの実家も桧風呂だったけど、ここまで大きくはなかったなぁ。

ほんと今朝まで檻に入れられていたとは思えないよ。

蓮華君はお風呂嫌いなのかな?あんまり入らないってハチさんが言っていたけど。」


返事は無かった、足の指の間一本一本を丁寧に洗っている。

綺麗好きというよりかは身体を洗い終わってしまうと僕と向かい合って湯船に入らないといけなくなるからだろう。


突然押し掛けたことに対して怒っているのだろうか、それとも幼い子特有の人見知りかもしれない。

とにかく受け入れられていないことだけは伝わってくる。


僕は敢えて話を続けた。


「突然押し掛けてしまって本当ごめんね。

信じてもらえないかもしれないけど、僕が何故ここにいるのか自分でも分からないんだよね。

道を歩いていたら急に穴が開いてさ気が付いたときにはこの街にいたんだ。

来週から大学生活も始まるし、さっさと戻って色々準備しなきゃいけないのに。

ここがどこだが検討もつかなくて、君のお母さんに声かけたら無言でじっと見てくるからさ、君のお母さん大きいだろう?怖くてさー、思わず走って逃げたら警察に捕まって檻に入れられたんだ。

そしたら何故か分からないけど君のお母さんが引き取りに来てくれて家にまで置いてくれるなんて言うから「おい。」


僕が話していると蓮華が静かに遮った。


「まさしと言ったな...。貴様、一体何者なんだ...?」

蓮華が身体を洗うのを止めこちらに向き直り尋ねてきた。


口調からは先程の丁寧さが消えたが、却って表情は睨み顔から困惑した顔へと変わっていた。

だが僕は質問に答えるよりも先に蓮華の股間に驚いていた。


先程、蓮華がこちらに背中を向けていたときハチさん譲りの長い手足に綺麗な白い肌が湯気で見え隠れして何とも小学生らしかぬ色気があるなぁなんて考えていた。実は


しかし今蓮華の股間にぶら下がっているブツは太く逞しく鎮座していた。

こんなもの小学生が持っていていいものじゃない。


何かで隠そうとせず堂々と存在を主張するそいつを見ていると、自分のものが如何にか弱く儚いのかを知り悲しくなった。


「蓮華くん、いや、蓮華さん。何者とは?」


「...?何故呼び方を変えた?まぁいい、何者とはその言葉通りの意味だ。


仮に貴様の話を信じて気が付いたら知らない街に居たとしよう。

それでもだ、お前の様な格好で外に出る奴はいないし、ナンバーコードもチップも所持していないだと?

信じられるかそんなこと。今時ナンバーコードぐらい渋谷の田舎者でも持っているぞ。


まだ他にも不明な点は沢山ある。


大学とはなんだ。そんなもの聞いたことが無い。

それに実家にここと同じような桧の風呂があると言っていたな。

いいか、この桧はな。俺が何とか手に入れた桧のかけらを基に培養した世界で唯一の風呂だ。

何故貴様の家にある!

しかも聞いたところによると警察に捕まった時に大量の野菜を持っていたそうじゃないか。

チップも無いというのに...どこかで盗んだとしか考えられない。」


何となくいきなり蓮華が睨んできた理由が分かった。

蓮華の言う通り、街を歩いていて僕と同じような格好をしている人はいなかった。

見た目にはバリエーションが皆、厚手のつなぎにマスクという点では同じだった。


恐らくというか間違いなくここは僕が居た八王子とは違う八王子だ。

言葉こそ通じるが街の様子にしても色々と違いがありすぎる。

間違いなく技術的なものはこちらの方が上だろう。しかし、警察の反応といい蓮華の言葉といい、桧や野菜などの自然のものが貴重品なのであろう。


渋谷を田舎と言っていたし(行ったことがないから分からないが、僕の中では東京を代表する繁華街だ。)認識が色々と違う。


大学も知らないと言う。

蓮華からしたら身分不詳の言葉こそ通じるが頓珍漢なことを言う泥棒なわけだ、僕は。

なんてことだ。


さぁ、何から誤解を解いていこうかと考えていると蓮華が続けて言った。

「それにな、まだあるぞ。

貴様を連れてきたのは俺の母親じゃない。祖母だ!

まず間違い様が無いだろう!この年の差で!


しかもそれらをまるで何とも思っていないかのようにペラペラと喋る。

へらへらした態度といい、いい大人とは思えない。


ほんと、何者なんだ!?」

と捲し立て蓮華は訊いてきた。



「え、祖母!ハチさんが!?」

驚いた、精々30半ばぐらいにしか見えないハチさんに小学生ぐらいの孫がいるだと?

何なら肌の張りだけなら20代でもいけるというのに。

もしかしてめちゃくちゃ若作りなのか?それとも複雑な事情でもあるのだろうか。


「ようやく反応したと思ったら、そこに驚くのか?

祖母はもう37だ。孫が居てもおかしくないだろ、何故驚く。」


うーん、ほんと何から何まで僕の常識と異なるみたいだ。


まぁ、なんだせっかく風呂に居るんだ。

風呂はのんびりするところだ、こんな緊張して入るものではない。


僕は先程の勝手な息子対決で勝手に萎縮していたが、この際とことん蓮華と話をしてみようと思った。


「僕もその辺のことについて色々訊きたかったんだ。

ちょうどいい、ゆっくり膝を突き合わせて話そうじゃないか。」


僕がそう言うと蓮華はムッとしたようで

「ふざけるな!誰が貴様の様な泥棒と...っくしょん!!」


と盛大なくしゃみをかましたので

「ほら、湯冷めしちゃうぞ。風呂は広いんだ。端っこでもいいから入りなよ。」

と蓮華を誘導すると、しぶしぶという感じで湯船に浸かった。





























---------------------1時間後-----------------------------


「ってことは、なに今度結婚するの!?嘘つくなよ?後で写真見せてもらうからな笑」


「嘘じゃないですよ!ってかマサさんこそ、その年で恋人いないってやばくないですか?

もしかして....童貞?笑」


「どどど、どうていだわっ!」


「まじか、半端ねぇ!その年で童貞とか見たことねぇ、マサさんまじ漢だわ!リスペクトっす。」


「うるせぇなー!こっちが異常なんだよ....俺は普通だ!....多分...。

ってか、俺は敢えて童貞なの!運命の人を待ってんの!こっちの世界みたいに野蛮じゃないのよ。

つーか、さっきも言ったけどさん付けいらねーよ、マサでいいよマサで。」


「そんなの無理っすよ。

マサさんすげーっすもん。呼び捨てなんてできないっすよ!」


「なんか馬鹿にされてる感じがするんだよなー。俺も蓮華って呼び捨てにするから、蓮華もそうしようぜ。」


「じゃあこうしましょう。マサさんが童貞じゃなくなったらさん取りますよ。」


「やっぱり馬鹿にしてんじゃん!」


「だからそんなんじゃないですってーっ。」


あれからずっと湯船に浸かって話しているうちにこんなにも仲良くなってしまった。

広い風呂の端と端に居たのに今は仲良く並んでいる。


一番の理由は蓮華と話が合ったことだろう。

お互いの誤解と擦り合わせていくうち、蓮華は大学というものに非常に興味を持った。


彼は所謂、超天才児で同級生と話が合わず辛い思いをしていたとのこと。


いや、天才(児)というのはおかしいかな。

なんとこちらの世界では12歳で成人を迎えるらしく、教育機関に通うのも精々12,3歳ぐらいまでらしい。


蓮華は現在14歳。

この世界最高の教育機関である上級研究院も来週で卒業らしく学びへの欲求がすごかった、

粘りに粘って研究院に残り続けたが、ハチさんに言われ卒業することにしたらしい。


卒業したら結婚し家庭を持つことが普通であるため、蓮華も半年後には結婚するようだ。

(ちなみに一般的な進学ルートは以下の通り


・4歳で下級教育校入学、7歳で卒業―義務教育はこの時点で終了だが多くは中級教育校まで進学


・9歳で中級教育校を卒業すると半数は上級教育校もしくは上級軍事校に進学するが、残りの半数は家業を継いだり軍隊に入隊したりと就職する。


・上級教育校とは将来的に学者や公務員、政治家などを志す人間が進学し警察官になりたい人間もここに入る。蓮華はこちらに進学した。だいたい12歳ぐらいでの卒業になるが、様々な進学先があり場所によっては10歳とかで卒業できる学校もあるとのこと。


・上級軍事校とは上級教育校と異なり八王子に1つしか無いらしく、進学すると将来的な幹部候補生として軍に迎え入れられる。軍隊以外に就職する人間は殆どおらず、他の進路を選択すると非国民の様な扱いをされるらしい。その代わり一般入隊した者とは異なり入隊した瞬間から曹長の階級が付く。学生の間に特別優秀だったものは曹長より上の尉官として入隊することもあるらしく、学内は日々熾烈に競争しているらしいが、厳しい分結びつきも強いとのことだ。

給料もよく衣食住の面倒まで見る為、教育校よりも軍事校に優秀な人間が集まりやすいのだという。

防衛大とよく似てるなと聞いていて思った。


・そしてそれらをさらに深く学びたい人間は、教育校から研究院へ軍事校から軍政院へと進学する。

何かを学ぶというよりかは、自分の学びたいことにスポットを当てて研究に没頭するというような感じらしい。誰でも進学できるわけではなく、教育校や軍事校時代に院側から招待を受けた場合だけ進学することの出来るこの世界のスーパーエリートだ。


一応蓮華は僕を年上として扱ってくれるが、向こうは既に成人しており結婚も控えている。

話していても感じたが精神年齢は間違いなく蓮華のが上だ。


それでも違う世界から来たこともあり、僕の知識に興味津々だった。

恐らく頭が良すぎて全く知らないことがあるのが新鮮だったのだろう。

そんなこともあって距離が縮まった。


僕は僕で分からないことが沢山あり、まだまだ話したりなかったが

蓮華に質問しようと口を開いたときに風呂場の扉が勢いよく開いた。


「あんた達いつまで風呂に入ってるの!夕飯できたから何度も呼んだのに全然出てきやしない!

あーもう、蓮華!顔が真っ赤じゃないか!まさしさんをこんなに長風呂に付き合わせて全く!」


「あ、ばあちゃんいきなり入ってくるなよ!俺ら裸だぜ。出るからそこどいてくれよ。」

蓮華が訴えると、はやくしなよと言ってハチさんが扉を閉めた。


そうだ今裸なんだった。

母親以外の異性に裸を見られたのは初めてだった。

長湯のせいでただでさえ頭に血が上っていたのに、恥ずかしさからさらに血が上ってしまいくらくらした。


そのせいで蓮華と一緒に浴槽から出た時に身体がふらつき、足が滑って勢いよく尻もちをついた。


僕が悶絶していると、大丈夫かと蓮華がこちらにやってきた。


蓮華の手を掴んで立ち上がろうとすると、蓮華が僕の股間に目をやり

「...その大きさなら、マサさんじゃなくてマサくんって呼んでもいいかもしれない。」

と呟いたので、ムカついた僕は蓮華の手を振り払った。


しかし、まだ身体がふらついており振りほどいた勢いで体勢を崩してしまい再び尻もちをつく羽目になった。


今度はしっかりと立てる様、蓮華が両腕の下から抱えてくれたのが何とも情けなかった。

ちょっと風邪を引いてしまいまして、、、


毎日更新するとか言いながら更新できず、すみませんでした。


今後も出来る限り更新しますのでよろしくお願いします。

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