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マンホールタウンin八王子  作者: たこの吸出し
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八王子にもアマゾンは届く

東京出身北海道育ちの会社員です。

仕事の為、文章量は少ないかもしれませんが毎日更新する予定ですので最後まで読んで頂けたら幸いです。



北海道の田舎町から上京し、春から大学生。


上京とは言っても、23区内ではなく新宿から特急で30分。

そこからさらに電車やバス、徒歩も含めて30分。


計1時間のところに僕の通う大学はある。


東京屈指の人口を誇る八王子市だが、何か名物があるわけでもなく閑散としている。

スーパーやコンビニは駅前にしかなく、カラオケ、居酒屋、映画館など娯楽関係は一切無い。


何かと不便だが、アマゾンは届くしインドアな生活を北海道に居た時もしていたので個人的には問題は無い。


むしろ人や建物がゴミゴミしている方が落ち着かない。

初めて東京駅に降りた時はあまりの人の多さに気持ち悪くなってしまい、こんなところで生活していては参ってしまうと思った。京王線に乗って新宿から離れていったときには、むしろホッとしたものだ。


勿論、せっかく東京の大学に来たのだから表参道やら六本木を散策してみたい原宿や下北沢で服も買ってみたい。きちんとおのぼりさんを満喫してみたいとは思う。


サークルにも入って同級生と日々取り留めもないことを楽しみたい。

合宿や大会などで親睦を深めていくうちに彼女ができちゃったりなんて想像もしている。


北海道にいた頃は1クラスしかなく、同級生も10人しかいなかった。

女の子もいるにはいたが、小さい村だったので噂はすぐに広まり二人で歩いているところを見られでもすれば、その日のうちに食卓で揶揄われる始末。


そもそもどこ行っても肥やし臭いし二人っきりになったところでロマンチックな雰囲気になんかならない。

そんなわけで絶対に東京に出ると決めていた。東京で素敵な恋人を見つけると心に決め僕は出てきたのだった。


友達もたくさん来るかもと思って布団は3組用意したし、飲み会になったときに必要な食器類もアマゾンで買った。ついでにゴムも…


準備はいくらしてもし足りないように思えて、最近は毎日の様にアマゾンが届く。

おかげで家賃3万の1kは荷物で溢れかえっている。


なんとしてでも入学式までに部屋を片付け、整理整頓がきちんと出来ている人だと印象付けたい。

もしかしたら入学式で運命的な出会いがあるかもしれないし。


僕は初めての東京と大学生活に完全に舞い上がっていた。

部屋の中で様々な妄想をしていると外は薄暗く、既に夕方になっていた。


そういえば朝から特に何も食べていない。

実家から送られてきたお菓子をつまんだ程度だった。


冷蔵庫の中は勢いで注文したスパイスセットと炭酸水しか入っておらずお腹を満たすものは無かった。

実家から送られてきたお米はあったが、おかずの類が無いので僕は炊飯器にお米をセットし買い出しに出かけることにした。


スーパーまでは歩いて15分ほど掛かる。

東京といえど3月はまだ肌寒い。街灯も少なく人通りもないので、何とも寂しげな雰囲気だ。


お総菜コーナーで今日のおかずを買い込み、足早で家に向かった。

着いた頃にごはんが炊きあがっていることだろう。


夕飯でも食べながらアマゾンプライムで映画でも見て、夜は部屋の掃除をしよう。


先日奮発して買ったコーヒーマシーンもアマゾンから届くはずだ。

そのためにさっきコーヒー豆も買った。


あれもこれもと買ってしまったので、袋が重いが、挽きたてのコーヒーの香りを思うと足取りが早くなる。


しかし、僕が家に着いてコーヒーを飲むことは無かった。


突然足元にぽっかりと穴が開き、あたりが真っ暗になった。

僕は薔薇色の大学生活を目の前にして八王子の深淵に飲み込まれてしまったのだった。


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