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第64話『折り紙スダーダスト』

「カズキくん、わたしのデスクから消しゴム取ってきて貰えるかしら?」


「そのくらい自分で取って来てくださいよ!」


 魔王様にパシリにされる所から、今日のデスクワークがスタートする。

 現在コタツの中で、仕事中だ。はっきり言って出たくない。

 そもそも魔王様なら、重力魔法で消しゴムを浮かせて持ってこれるのでは? なんて思ったが、魔王様が「はにゃ〜ん」と可愛い顔でリラックスしているので、仕方なく取りに行ことにした。


 今日の魔王様はスーツ姿ではなく、ベージュ色のセーターに赤黒チェック柄のスカート姿であった。

 他にもレヴィアさんが、可愛いウサギさんパーカーを着ていたり、小春ちゃんに至っては半纏を着て、すっかりコタツでまったりモードである。

 かくいう俺も今日は黒いジャージを着ている。

 このコタツは朝オフィスに来たら、いきなり置いてあり、先に出社していた魔王と小春ちゃんが早速入っていた。

 魔王様に何故あるのか聞いたところ、「入らないの?」と言われてしまったため、現在に至る。コタツの魔力には勝てなかったよ。

 コタツから嫌々這い出し、デスクに向おうとするが、魔王様から追加の注文をされた。


「あ、あとコーヒーもお願いね」


「それくらい自分でやってくださいよ!」


 その会話を聞いていた、レヴィアさんが「よいしょっ」とコタツから抜け出す。


「それならわたしが淹れてきますね♪」


「お願いします、レヴィアさん」


 デスクから消しゴムを取り、魔王様に渡し、再びコタツに入る。

 しかし、勢いよく入り過ぎたため正面の小春ちゃんの足をタッチしてしまった。


「ふぁっ、なんや〜? うちと遊びはりたいんやろか〜?」


「ごめん、勢いあまってぶつかっちゃって……」


「ふふふ、気ぃつけてな〜」


 そんな、小春ちゃんはクスクスと笑いながら、仕返しとばかりに俺の足裏を足先でくすぐってきた。


「ちょ、ちょっと、小春ちゃん!」


「どないしたんやろか〜?」


「いや、くすぐってるでしょ!」


「うちはしとらへんで〜?」


 不審に思うがすぐに答えは分かった。右隣に座っている魔王様が、笑いをこらえたような顔をして肩を揺らしていた。おまけにテーブルの上にたゆんと乗っている胸も揺れていた。


「魔王様! なんでくすぐるんですか!」


「あら、わた……わたしじゃ……ふふっ」


「笑ってるじゃないですか! ほら、魔王様だ!」


「コーヒー持ってきましたよー♪」


 テーブルの上にオボンを持ったレヴィアさんが、コーヒーを置き始めたので魔王様への抗議をやめる。


 コタツでコーヒーなんてどうかと思うが、これが案外悪くない。

 テーブルの真ん中には、みかんまで置かれており、小春ちゃんの手元にはみかんの皮が3つも置かれていた。


 コタツはそこそこの大きさで、今は居ないマリアが来ても、小さな小春ちゃんの横になら入れる程度のスペースがある。

 そのため、場所の取り合いになるなんて事はないだろう。と、思いきや……


「カズキくんの場所からならスマホの充電が出来るわね。ちょっと変わってちょうだい」


「嫌ですよ」


「いいじゃない」


「嫌です」


「それなら……」


 何をするのかと思っていると魔王様はコタツに潜り、なんと俺の足元から顔を出した。


「何、子供みたいなことやっているんですか!」


「ちょっと、狭かったわ」


 そりゃ、それだけ胸が大きければつっかえるだろう。

 魔王様はモゾモゾとコタツからはい出ると、俺の横に何事も無かったかの様に座る。


「ちょっと、何してるんですか? ここは俺の陣地ですよ」


「討ち取ったりー!」


「ここは戦場ではありません!」


 魔王様は俺の否定の意見など聞かずに、コーヒーを手繰り寄せようと手を伸ばしていた。

 しかし、前のめりになるが大きな胸が邪魔をしていてコーヒーのカップに手が届かないようであった。

 魔王様は手を伸ばして取るのを諦め、得意の重力魔法でカップをふわりと浮かせ、手元に着地させた。


 スペースがあるとは言ったが、それは小春ちゃんとマリアの話であり、俺と魔王様ではいささかぎゅうぎゅうなおしくら饅頭だ。


 腕と腕は当たり前のように密着しており、脚にも柔かな太ももが押し付けられていた。

 密着していることもあり、魔王様の優しい香水の香りが鼻腔をかすめる。


 だが、これでは仕事にならない。仕方なく、スマホを充電出来る場所を魔王様に明け渡し、空いている場所に入る。


 しかし、正面でレヴィアさんが折り紙しているのが視界に入ってしまった。いや、レヴィアさんのことだ。きっと、遊んでいるとかではなく、何かの仕事なのだろう、きっとそうだ。


「レ、レヴィアさん、それは何をしているんですか?」


「あ、折り紙って言うんですけどねっ、とっても面白いんですよ♪」


「遊んでるし!」


「はい、ウサギさん♪」


「可愛い」


 ウサギちゃんを見せびらかすレヴィアさんは、それはそれは可愛く、なんだか許してしまった。魔王様や、小春ちゃんもレヴィアさんが折り紙をしているのを見て、それぞれ折り紙を取り、折り始めた。


 何を作るのかちょっと興味がある。


「魔王様、何を作っているんですか?」


「ノイシュバンシュタイン城よ」


「なんで、お城なのかなぁ……」


「はい、出来た」


「早い! そして、ちゃんと出来てる! なんだこれ!」


 完成したお城は、芸術的な出来で、配色も様々な折り紙を使い表現されていた。この才能を分けて欲しい。

 魔王様が出来上がった城を写真に撮っているのを見ながら、今度は小春ちゃんに質問する。


「小春ちゃんは折り紙とか、得意そうだよね」


「せやなぁ〜、子供の頃からようやっとってなぁ、せやからそれなりどす〜」


「それで、小春ちゃんは何を折っているの?」


「宇宙どす〜」


 確かに小春ちゃんの手元を見ると、未知の空間が広がっていた。

 折り紙が上手いとか、そういうレベルじゃない。次元が違う。


「カズキくんはやらないの、折り紙?」


 魔王様に促され、俺はため息を1つ付き、1枚の折り紙を手に取る。さて、何を折ろうかと思考を巡らせるが……


「カズキくん、消しカスを捨ててきてもらえるかしら?」


「カズキはん、うちもみかんの皮を頼みやす〜」


 魔王様に便乗して小春ちゃんまで、おねだりをして来た。いやまてよ……

 俺は折り紙である物を作る。折り目を作り、角をキッチリと合わせる。

 折り紙には作り手の心が現れると言うからには、ちゃんとした物を作りたい。

 そして、完成したそれをテーブルの真ん中に置いた。


「ゴミ箱です」


 魔王様と小春ちゃんは、その小さくて可愛いゴミ箱を見るとにっこりと笑った。

 たまにはコタツで折り紙をするのも、悪くないかもしれない。そう思った1日であった。



セーブしますか? ▼


▶︎はい

 いいえ


▷はい

 いいえ


セーブがかんりょうしました! ▼




〜登場人物〜



【カズキ】


折り紙は割と得意かも。どちらかというとあやとりの方が得意。今日の服装は黒ジャージ。今日は何故か、誰も仕事着では無かった模様。

車の運転をするとポエマーになる。



【魔王様】


異世界グラムに画像を上げたが、イイネ! はいつも通り3件しか付かなかった。

今日の服装はベージュのセーターに、赤黒のチェック柄のスカート。




【レヴィアさん】


折り紙を持参したレヴィアさん。仕事が早めに終わったため、ちょっと息抜きをしていた。今日の服装は白いモコモコとしたパーカーに、ネイビーカラーのレギンス。

パーカーのフードに付いたウサギさんの耳が可愛い。



【小春ちゃん】


みかんを3つも食べた小春ちゃん。折り紙の腕はコスモ級。今日の服装は猫ちゃん模様の半纏。本人は半纏ではなく、ちゃんちゃんこと言う。

青いちゃんちゃんこに、黒のタートルネック。落ち着いた雰囲気。



【マリア】


寝てた。

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