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第58話『ナイトセーバー』



「プレゼント交換をするわよ」


 魔王様が、やたらとトレンドを押さえた発言をしている。しかし、プレゼント交換の告知は事前にされており、この日のために俺もプレゼントを用意してきた。


 現在魔王城オフィスにて、クリスマスパーティー中だ。オフィスには魔王様、俺、レヴィアさんの3人が既におり、現在小春ちゃんと、マリアを待っている最中だ。2人とも仕事の都合で遅れるらしい。

 俺は既に今日の分の仕事を終えているため、手持ち無沙汰となっている。

 と、いう事で同じように暇そうにしているレヴィアさんに話しかけてみた。


「レヴィアさん、ちゃんとプレゼントを用意しましたか?」


「はい、イシス女王と一緒に選んだんですよ♪ あ、これイシス女王からカズキさんにです」


「なんだって!?」


 レヴィアさんから、オシャレな赤い封筒に入ったクリスマスカードを興奮して受け取る。一体何が入っているのだろうか?


【イシス温泉、フリーパス】


「イシス女王、大好き!」


「よかったですね! カズキさん♪」


 中身は、今度イシスにオープンするという温泉のフリーパスであった。とっても嬉しい。


「オープンしたら毎日行きます!」


「仕事をほったらかして?」


「うっ……」


 喜んでいると、魔王様から釘を刺されてしまった。だが、今度まとまった連休をくださるようで、温泉には行かせてくれるようだ。

 なんだかんだで優しい「ま〜ちゃんサンタ」からの、ささやかなクリスマスプレゼントなのかもしれない。


 そんな事をいつものように考えていると、これまたいつものようにオフィスの扉が勢いよく、開いた。



モンスターが あらわれた! ▼



「おい、カズキ!!」


「ヨッホイサンタは要らないぞ」


 いつもの展開で、ヨッホイがオフィスに入ってきた。もはや見慣れた光景であり、俺以外だれも気にはしていないようだ。

 ヨッホイはそんなの「お構いなし!」とでも、言いたげにある物を俺に差し出してきた。


「受け取りな」


「なんだよ、またiBouか?」


「あぁ、その名もライトiBouだ!」


「こっちもトレンド押さえてきた!!」


「スイッチを起動すると、光の刃が現れるぞ! 何も切れないけどな!」


「それ、ただの光る棒じゃねーか! ライブで振りかざせばいいのか!?」


「しかも色も変えられるぞ!」


「無駄にハイスペックだなぁ!」


「やっぱり赤にするか?」


「いや、紫で頼む」


「2時間充電で、3分間使えるぞ!」


「ラジコンヘリみたいな充電時間と起動時間だな!」


 ヨッホイから紫色にサーベルという名の、ライトが噴出するライトiBouを受け取り、早速起動してみる。「ブォンッ」という噴出音とともに紫色の刃が現れた。確かに何も切れない。


 ヨッホイはそれも満足気に眺めると、オフィスを出て行った。一体何をしに来たのだろうか……


「お待たせですわ!」


「お待ちどーさん、遅れてしもうて、ほんま堪忍な〜」


 マリアと、小春ちゃんがヨッホイと入れ違いでオフィスに入って来た。

 これでようやくクリスマスパーティーを始められるわけだ。

 テーブルにはレヴィアさんの自信作らしい、チョコレートケーキが乗せられおり、さらに魔王様がどこかで買って来たという、オシャレなグラスが用意されていた。


 魔王様はグラス1つ1つを俺たちに配り、俺にはシャンパン、レヴィアさんや、マリア、小春ちゃんには、ジュースの入ったグラスを渡した。

 そして、グラスを掲げ音頭を取る。


「魔王様、バンザーイ!」


「それ、普通自分でいいませんよねぇ!?」


「はい、みんな飲んで、飲んで〜」


「スルーかよ!」


 魔王様は俺のグラスに自身のグラスをコツンと合わせると、シャンパンを美味しそうに飲み干した。

 俺も「やれやれ」とシャンパンを口に含む。スパークリングワインの上品な味わいが喉を刺激する。


 グラスをテーブルにコトリと置き、レヴィアさんが切り分けてくださったチョコレートケーキに手を出す。

 程よいカカオのビターな風味が口に広がり、しかし、それでいて甘酸っぱいピューレが苦味を馴染ませる。


「レヴィアさん、美味しいです」


「ふふっ、お口に合ってよかったです♪」


「それじゃあ、そろそろプレゼント交換をするわよ」


 魔王様の声で、俺たちは各々のプレゼントを取り出した。

 そして、自身のプレゼントお披露目会が始まった。

 まずは魔王様が先陣を切って、高らかと何かのチケットを掲げた。


「神鳥タクシー利用券100枚よ」


「神鳥をタクシー代わりに使わないでくださいよ!」


「あら、勇者も使ってるわよ」


「そりゃ、つかうでしょうね!」


 神鳥とは、この世界に存在する伝説の不死鳥で選ばれし勇者のみ、乗る事が出来る。の、だが……


「最近、神鳥業界も業績が悪いみたいでタクシー業を始めたそうよ」


「1回いくらなんですか?」


「1万G」


「それなりですね!」


 魔王様のプレゼントの紹介が終わった所で、今度はレヴィアさんが自身のプレゼントの説明を始めた。


「イルカさんのご飯100食分です!」


「それ、イルカさんへのプレゼントですよね!?」


「う〜……ダメ、ですか?」


「全然オッケー、問題ナッシング」


「良かったです♪」


「カズキくん、最近レヴィアに甘いところあるわよね」


「気のせいです」


 魔王様から指摘を受けるが気にしない事にして、次は小春ちゃんのプレゼントを見せてもらった。


「うちはジパング式マッサージ券100回分どす〜」


「みんな100が好きだね!」


「これで、日頃の疲れをリラックスして欲しいんよ〜」


 このプレゼントは普通に嬉しい。俺も以前小春ちゃんのマッサージを受けた事があるが、翌日体がまるで花びらのように軽くなった。マッサージは小春ちゃんが直々にしてくれるようで、その効果は絶大だろう。今のところ1番欲しい。


(さて、マリアか……一体何を用意したのだろうか?)


「ギフトカード100万G分ですわ!」


「マリアが小春ちゃんみたいな事言い始めた!」


「うちが何やって〜?」


「あ、何でもないです」


 小春にこわ〜い笑顔を向けられ尻込みしてしまう。おそらく動画の広告収入とかいうもので、マリアは儲かっているのだろう……

 そして、最後に俺のプレゼント紹介の番となった。この日のために用意した最高のプレゼントを披露する時が来た!


「即席ラーメン100食分!」


『………………』


 魔王様を始め、レヴィアさん、小春ちゃんは微妙な表情をしていた。マリアだけは満足気に頷いていたが。


 そして、プレゼント交換が始まる。俺のプレゼントは……


「カズキさん、イルカさんのお世話お願いしますね♪」


「わーい、嬉しいなー」


 イルカさんのご飯100食分であった。他のみんなはどうだろうか?


「こはるん、このマッサージっていつでもいいのかしら?」


「1週間前に言ってくれれば大丈夫やさかい、気軽に言ってな〜。それと、タクシー券おおきに〜」


「ラーメンですわ! やりましたわ!」


「100万Gも一体何に使いましょう……」


(なんか、みんな満足してる。まぁ、いいか俺も動物嫌いじゃないし! 毎日イルカさんと触れ合うぞー!)


 こうして、プレゼント交換は終わったのあった。





 *






「ったく、ヨッホイのやつ2時間も充電させんなっての」


 俺は自室のベッドに座りながら、ライトiBouの端子に充電ケーブルを差し込み、コンセントを刺す。

 しかし、その瞬間にブレーカーが落ちたのか辺りが真っ暗になってしまった。


「はぁ、後でヨッホイにクレームを入れてやる。明かり、明かり…………あ、これ」


「………………」



 ブォンッ



「何やってるのかしら?」


「わっ! ま、魔王様!」



まおうが あらわれた! ▼



「カズキくんの部屋のブレーカーが落ちたと思って、心配して来たら……」


「あ、ライトiBouの充電が原因みたいです」


「心配して損をしたわ。それでこんな暗闇で、何をやっているのかしら?」


「このライトiBouを明かり代わりにですね……」


「……案外、悪くないわね」


「そうですね」


 暗闇に光る紫色のiBouは、味気ない俺の部屋に「ブォンッ」と現れた小さなイルミネーションとかしていた。

 ブレーカーを上げるのは明日の朝にしようと思う。今日はこの素敵な空間で眠るのも悪くはないだろ?





セーブしますか? ▼


▶︎はい

 いいえ


▷はい

 いいえ


セーブがかんりょうしました! ▼




〜登場アイテム〜



【ライトiBou】


iBouから、光るサーベルが噴出する。しかし、切れない。

色は青、緑、赤、紫。元ネタはライ○セーバー。



メリークリスマス!


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