第57話『つばさウイング』
「わたしは魔王、それが覇道〜♪ 解き放つは、凍て付く波動〜♪」
魔王様が韻を踏みながらラップをかます所から、スタートするYo。
気分は快調、俺も好調〜♪ それは成長、伸びた、証〜!
「って、何でラップなんてしてるんですか! 魔王様!」
「その質問、それは愚問〜♪ だけど応答、これ行動〜♪」
「やめてくださいよ!」
「分かったわ」
「急に普通にならないでくださいよ!」
あまりに似合わないラップを止める魔王様。現在魔王城オフィスにて、お昼休憩中だ。
しかし、なぜ魔王様は急にラップを始めたのだろうか?
「あの、魔王様……」
「何かしら?」
「先程のラップは何だったんですか? あ、ラップで返答する準備はしなくていいです」
「何でYo〜?」
両手を「Yo〜!」の形に構えながら残念がる魔王様。正直やめてほしい。
「それで、なんでなんですか? 早く答えてください」
「そんなの、面白そうだからに決まってるじゃない」
魔王様のその発言に、俺はため息を漏らすが、レヴィアさん、小春ちゃん、マリアは気にもしてない様子で「別にいつもの事」とでも言いたげであった。
(これは、社内の雰囲気の問題なのではないのだろうか?)
社内の雰囲気、もちろん"ふざけた空気"が悪いと言っているわけではない。
俺だって、この感じは好きだ。しかし、何でも限度ってものがある。今日の魔王様は正直ふざけ過ぎだ。
(ここは、俺がバシっと言わないと……よし)
「あの、魔王様」
「あ、こはるん。後でこの999億Gも、今期の予算に入れておいて」
「すいませんでした!!」
雰囲気とか、職場の感じとか、そんなものがどうでも良くなってしまうほどの圧倒的な金額を聞いてしまい、何も言えなくなってしまう。
先程までビートを刻んでいた魔王様だが、仕事は完璧にこなし、いざという時はとても頼れる上司なのだ。
だが、そんな金額をどこで稼いだのだろうか?
「魔王様、そのお金って……」
「あぁ、これ? 宵闇の魔王のグッズ収入」
「また、宵闇の魔王かよ! みんな本当に宵闇の魔王好きだな! てか、何勝手にグッズ作ってるんですか!?」
「宵闇フレグランスが1番売れたわね」
「なんですか、それ?」
魔王様は、「これよ」とやたらとカッコいい装飾の施された黒い瓶を見せてくださる。匂いを嗅いでみるとこの間の匂いがした。
「これ、この前被ったやつじゃないですか!」
「入れ物を変えただけで、すごい売れたわ」
「宵闇ブランドかよ!!」
「あ、これ宵闇ブランドのロゴ」
「そんなもの、いりませんよ!!」
「今日は、宣伝も兼ねてアレやるわよ」
「アレって、何ですか?」
「ラジオ放送よ」
「だから、ラップしてたんですか!?」
魔王様の合図と共に、数名のスタッフが俺たちのデスクにマイクを設置する。
(どうやら、やるしかないようだ……)
ーーON AIRーー
魔王「ま〜ちゃんの〜! 超時空魔王ラジオ〜!」
マリア「始まりますわよー!」
カズキ「いえーい」
レヴィア「い、いえーい!」
小春「ふふふ。レヴィアはん無理せんといてな〜」
魔王「と、言うわけで始まってしまいました第652回魔王ラジオ」
カズキ「そんな、放送してないわ! 多分4回目ぐらいだわ!」
魔王「あ、そうね。"カズキくん"は」
カズキ「俺抜きで、勝手に放送してたのかよ!?」
魔王「ふふっ、嘘よ♪」
カズキ「嘘かよ!」
レヴィア「カズキさん、最初からそんなに飛ばしていますと後々持ちませんよ?」
マリア「そうですわよ、ここは紅茶でも飲んで落ち着いてくださいな」
小春「おせんもあるよ〜」
カズキ「あ、ではいただきますね………けほっ、けほっ! 誰だよ!デスソース入れたやつ!!」
カズキ以外の全員『ドッキリ大成功〜!』
テッテレー♪
カズキ「そんなの、せんでえぇわ!」
魔王「じゃあ、おハガキを読むわね」
カズキ「本当に毎回急ですね! 進行どうなってるんだよ!」
レヴィア「あ、予定ではこの後にお出しするカズキさんのコーヒーに、デスソースをですね……」
カズキ「また、入れんのかよ! そもそも、それ言っちゃダメでしょ!」
レヴィア「あぅ〜……間違えてしまいました」
小春「レヴィアはんは、ほんに忙しないの〜」
マリア「はい、ズッキーコーヒーですわ」
カズキ「飲まないよ! 早くハガキ読んでくださいよ!」
魔王「えー? 読むのぉー?」
カズキ「魔王様が読むって言ったんですよねぇ!?」
魔王「じゃあ、読むわよ……『みなさんどうも、チョモランマ〜!』」
カズキ以外の全員『チョモランマ〜!』
カズキ「出た、俺以外が知ってる謎の挨拶」
魔王「続き読むわね?『最近、温泉が出来ましたの。ぜひ遊びにいらしてくださいね』」
カズキ「行きます」
魔王「ダメよ!」
カズキ「どうしてですか!?」
レヴィア「最近、ピラミッド付近に温泉が出来たそうですよ」
カズキ「ピラミッド? イシス……イシス女王! そのハガキはイシス女王からですね! 魔王様!」
魔王「さっ、次のハガキ読むわよ」
カズキ「ちょっと、話をそらさないでくださいよ!」
魔王「温泉には、行ってもいいから大人しくしていなさい」
カズキ「やったぜ」
魔王「それじゃあ、次のハガキ読むわよ……『みなさん、どうもこんにちは〜!』」
カズキ「こんにち……違う! チョモランマ!」
カズキ以外の全員『こんにちは〜!』
カズキ「もう、本当になんなのかなぁ!? 」
魔王「続き読むわね……『再びナポリア王になりませんか?』」
カズキ「なりませんよ!」
魔王「なら、1日魔王になってみる?」
カズキ「嫌ですよ!」
まおうに なりますか? ▼
▶︎はい
いいえ
はい
▷いいえ
カズキ「なりませんからね」
そんなこといわずに なってみない? ▼
▶︎はい
いいえ
はい
▷いいえ
そんなこといわずに なってみない? ▼
▶︎はい
いいえ
はい
▷いいえ
カズキ「いい加減にしてくださいよ!」
魔王「イシぽよも好きな職業は魔王って言ってたわねー……」
カズキ「なります」
レヴィア(チョロ過ぎですよ!)
マリア(チョロいですわ!)
小春(ほんに、チョロいの〜)
魔王「じゃ、早速……これを飲んでちょうだい」
カズキ「このコーヒーを飲めと?」
魔王「イシぽ……カズキ「飲みます!」
魔王(チョロいけど、なんか複雑)
カズキ「………………」
レヴィア「……………」
カズキ「……けほっ、けほっ! デスソース入ってますよねぇ!?」
カズキ以外の全員『ドッキリ、大成功〜!』
テッテレー♪
カズキ「せんで、えぇわ!」
魔王「きっと、みんな宵闇の魔王を期待していたんでしょうけど、そうは行かないわよ!」
カズキ「それは誰に向かって言ってるのかなぁ!?」
マリア「はい、それでは次のコーナーですわ!」
カズキ「展開早いなぁ!」
マリア「次は大喜利のコーナーですわ」
カズキ「なんで、そんなものあるんですかね……」
魔王「得意でしょ? なんか上手いこと言うの」
カズキ「なんか、俺がいつも上手いこと言ってるみたいな感じ出すの辞めてください」
小春「ふふふ。うちも期待してますえ〜」
マリア「今回はわたくしがお題を出し、それに皆様が答える……といった形式を取らせていただきますわ」
レヴィア「座布団もありますよ♪」
カズキ「上手い事言えば座布団が、増えるわけですね」
マリア「では、早速お題を出しますわね『翼があったら何をしたい?』がお題ですわ!」
カズキ(翼……つばさ……うーん? 分からん!)
魔王「はい」
マリア「はい、魔王様」
魔王「空を飛びたい」
カズキ「普通ですね! そもそも魔王様は飛べるでしょ!」
マリア「はい、魔王様に座布団1枚」
カズキ「ゆるい! 採点がゆるい!」
小春「はいな」
マリア「はい、"はるるん"」
カズキ(はるるん? まぁ、いいか……)
小春「サイドからクロスを上げとう思いやす」
カズキ「それはサッカーのウイング! って、小春ちゃん上手いな!」
小春「ふふふ。おおきに〜」
マリア「はい、はるるんに座布団2枚差し上げて山田くん」
ヨッホイ「かしこまりました〜」
モンスター? があらわれた! ▼
カズキ「お前、山田くんじゃないだろ!」
レヴィア「はい!」
マリア「はい、レヴィアさん」
レヴィア「えとっ、えと……その」
カズキ「レヴィアさん、焦らないで大丈夫ですからね」
レヴィア「……はい、それではいきます!」
カズキ(不安だ)
レヴィア「………………」ぱちっ
カズキ「何瞬きしてるんですか?」
レヴィア「ち、違いますよ! よく見てください!」
レヴィア「………………」ぱちっ
カズキ「レヴィアさん、眠いんですか?」
魔王「多分、"ウインク"だと思うわ」
カズキ「あぁ〜……」
レヴィア「ど、どうですかね?」
カズキ「可愛い、山田くん! 座布団持ってきて」
ヨッホイ「かしこまりました〜」
やまだくんが あらわれた! ▼
マリア「そこ、勝手に座布団を与えない。山田くん、ズッキーの座布団を全部持って行ってくださいな」
ヨッホイ「かしこまりました〜」
カズキ「あ、この! ヨッホイ! 裏切り者!」
マリア「はい、それじゃあズッキー」
カズキ「手上げてないのに!?」
マリア「10.9.8.7……」
カズキ「数を数えるな! 分かった、やるから!」
カズキ(どうする? 翼……つばさ、ツバーサ)
カズキ「……翼とかけまして、ギャンブルと解きます」
マリア「その心は?」
カズキ「翼がある」
マリア「やりますわね! 山田くん、ズッキーに座布団2枚あげてくださいな!」
山田「かしこまりました〜」
カズキ「お前、名前が山田になってるぞ」
魔王「さすが魔王城の主砲ね」
カズキ「俺いつから4番バッターになったのかなぁ!?」
魔王「それじゃあ、次のコーナーに行きましょう」
カズキ「本当に進行めちゃくちゃですね!」
魔王「あ、違ったわ。もう、お時間となりました」
カズキ「終了のお知らせだった!?」
魔王「今回の、ラジオも、後悔〜♪ だけど、公開〜♪ なぜなら、それが、本懐〜♪ Yeah」
カズキ「うわっ、最後にラップしちゃったよ!そもそも宣伝は!?」
魔王「それは、次回」
カズキ「もうえぇわ!」
全員『どうも、ありがとうございました〜!』
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