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第56話『Day of the パジャマ』

「大きさより、形が大事だと思うのよね」


 魔王様が何かを言っているが、今日はそんな事はどうでもいい。そう、どうでもいいのだ。

 現在魔王城オフィスにて、朝のミーティング中である。

 そして、仕事内容を忘れてしまうほどの自体が目の前で起こっていた。


 レヴィアさんが、ワイシャツの下にパジャマを着ているのである。


 本人は全く気付いておらず、周りもどうやら俺しか気が付いていないようであった。

 今日の俺のミッション……いや、与えられた使命は大きく分けて2つ。

 まずは彼女に、下にパジャマを着ていることを伝える。

 次に、周りにその事を気付かせないこと。


 後者は言わずもがな、レヴィアさんが恥をかいてしまうためであり、前者に至っても、なるべく彼女を恥ずかしがらせないような言い回しが必要となる。


(さて、どうするか……)


「カズキさん、コーヒーをどうぞ♪」


「ありがとうございます、レヴィアさん」


 ワイシャツの下から薄っすらと透ける、ピンクのウサギさん模様のパジャマが、可愛いレヴィアさん。

 本日は、長いブロンドの髪をウェッティに巻いており、とても上品な感じのレヴィアさん。しかしウサギさんパジャマ。


 なぜこの様な自体になってしまったのだろうか?

 それとなく、探ってみるか……


「あの、レヴィアさん。今朝は何か変わった事はありませんでしたか?」


 レヴィアさんは「今朝ですか?」とほっぺに指を当て考える仕草をするが、何も思いつかなかったのか、「特にありませんでしたよ」という返答が返ってきた。


 もしかしたら寝坊して慌てて……なんて事も考えられたが、彼女の髪の毛は明らかに時間のかかりそうなセットが施されており、朝の時間はたっぷりあった事が伺える。


 着るものが無かったというのもありえないだろう。彼女は先日フレグランスを俺にこぼしたさいに、魔法で乾燥をしてくれていた。

 つまり、服を洗ってしまい"着る物が無かった"という説もありえない。


 俺1人では、どうやってもこの件への対処は難しい。

 そこで、仲間を得るためにこういう場合に頼りになりそうな小春ちゃんの表情を伺うが、なんと……



こはるも パジャマを そうびしていた! ▼



 正確にはパジャマではなく「寝間着ねまき」であり、名前の如く寝間、即ち寝室で身に付ける衣服の事である。

 浴衣とは違い、袖が筒状になっており、腰紐を脇前で結ぶのが特徴である。


 寝る時も和服なのかという、小春ちゃんらしい一面が見えはしたが、はっきり言って異常事態である。

 小春ちゃんは俺の視線に気が付いたのか、いつもの様に人懐っこい笑顔を浮かべ、話しかけてきた。


「カズキはんも、着てみはります〜?」


「え、それって……寝間着のこと?」


「そうどす〜。ようつってはると思いますえ〜」


「あ、いや、そうじゃなくて……」


 小春ちゃんは小首を傾げ、キョトンとしている。

 ここは思い切って聞いてみるか……


「どうして小春ちゃんは、今日は寝間着なの?」


「そういう日もあるんよ〜」


 小春ちゃんはそう言うとタブレットPCを取り出し、仕事を始めた。

「話しかけへんといてな〜」というほんわかと、それでいて怖い雰囲気を醸し出しているのでそっとしておく事した。


 どういうことなのだろうか? レヴィアさんはともかく、小春ちゃんまで寝る時の服を着ている。

 まさかと思い魔王様の方を見ると、テディーベアーのぬいぐるみを抱いていた。


「魔王様!」


「どうしたのよ、朝から大声を出して……」


「その、ぬいぐるみはなんなんですか!?」


「あ、これ? これはね、前にロンドンに行った時に買ったものなのよ」


 魔王様はそう言うと「可愛いでしょ?」と白いダッフルコートを着たテディーベアーを見せびらかしてきた。「そんな貴女の方が可愛い」と言う言葉を飲み込み、なぜ、オフィスにそんな可愛いぬいぐるみを持って来ているかを追求する。


「魔王様、今仕事中ですよね?」


「そうね」


「なぜ、その……クマのぬいぐるみを抱いているんですか?」


「あら? もしかして嫉妬かしら?」


「違いますよ!!」


「あ〜、よちよち〜、カズくんも抱っこのお時間かな〜?」


「そんな時間はありません!」


「なんで、カズキくんはパジャマじゃないのかしら?」


「話が唐突に過ぎる! それにむしろ俺が異端なの!?」


「だって、今日は"パジャマデー"よ」


「……なんですか、それ?」


 魔王様の話によるとアメリカなどの、小学校や、一部の企業で行われている「パジャマデー」というものを"面白そうだから"という理由で試験的に導入したらしい。

 パジャマデーとは、パジャマで登校したり、勉強したりする日であり、先生や校長先生までパジャマで過ごす日だそうだ。

 人によっては、お気に入りのぬいぐるみを持って来たりもするようだ。


 目的は仕事や、勉強などをリラックスして行うためとの事らしい。

 この魔王城は職場の雰囲気が、どこか外資系の企業の感じはしていたが、まさかこんな形でそれを再び認識する日が来るとは思わなかった。


(……俺もパジャマに着替えよ)





 *




ーーその頃のマリア



「ふご……ふごぉー。むぅ〜……ゼンブマシマシ、チョモランマ! ふへへへ」



なんとマリアは まだねていた! ▼





パジャマを そうびしますか? ▼


▶︎はい

 いいえ


▷はい

 いいえ


パジャマを そうびしました! ▼







〜登場アイテム〜





【魔王様のテディーベアー】


名前は「ヒュー」2016年に発売された限定モデルで、ふわふわとした毛並みと白いダッフルコートが特徴。

今年の限定モデルも買うと、意気込んでいらっしゃる模様。

開幕の「大きさより形〜」はテディーベアーのこと。



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