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第54話『胸焼けアイドル』

「ねーえ、宵闇の魔王様ぁ……プラムのラブソング聴きたい?」


「違う、カズキだ。それと早くライブの準備をしてください」


「はーいっ♡」


 元気に返事をする、アイドルのプラムさん。相変わらず目からハートのビームが出ていそうなプラムさん。

 きらびやかなライブ衣装に包まれ、アイドルスマイルを浮かべる鏡の中の彼女と目が合い、ウインクをされる。ちょっと恥ずかしい。

 現在、ライブ控え室にてマネージャー業中である。


 なぜこうなったかというと、魔王様が急に俺の事を「カズP」と呼び出し、おそらくPは「プロデューサー」の事であると思うのだが、なんやかんやあってライブの手伝いをする事になった。正直俺もよく分からない。


 しかし、与えられた仕事をきっちりこなしてこその一流である。

 今の俺は「カズP」であり、目的はライブの成功である。

 そのために必要な仕事は全力でこなすつもりだ。

 今日の意気込みを再確認していると、プラムさんが上半身を左右に揺すりながら俺の顔を除き込んできた。


「ねぇ、宵闇の魔王様。今日のプラムはどぉ? あなたのアイドルになれそう?」


「違うプロデューサーだ。それから、もうあなたはアイドルでしょう?」


「ふふふ、ありがとう!プロデューサー! プラムをずっとプロデュースしてねっ♡」


 先日の竜王戦の動画がアップされて以降、多くの人から「宵闇の魔王」とからかわれ、その度に否定している。

 やたらと、「かっこよかったです!」とか、「クールでした!」などと言われるが「シュールでした」の間違いだろう。

 今日もプラムさんを始め、多くのスタッフに宵闇の魔王と呼ばれおり、全く困ったものである。

 何はともあれ今日の俺は、プロデューサーなのだ。

 ライブの確認をする為、スケジュール資料を見ているとプラムさんがもじもじとしながら再び話しかけてきた。


「ねぇ、プロデューサーさん」


「なんでしょう、プラムさん?」


「あの……その、か、かかか彼女とか……その」


「はい? すいません、よく聞き取れなかったのでもう1度言ってもらえますか?」


「むぅ……なんでもないですぅ」


 プラムさんは、ほっぺをぷくぅーと膨らませぷいっとそっぽを向いてしまった。

 怒らせてしまったのだろうか。アイドルのモチベーションや、コンディションはライブの成功に関わってくると聞いた事がある。

 ならば、プロデューサーとしての俺の役割は彼女に元気になってもらう事である!


「プラムさん、ラーメン作りましょうか!」


「たべるー♡」


 彼女がラーメン好きだというのは、楽屋でラーメンを食べていたことから知っていた。ライブの前とはいえ食事は大事である。かなりのカロリーを消費するため、食べないともたないのだ。


 なので、あらかじめ用意しておいたラーメンを手早く作る。

 これは、お湯を注ぐだけでご家庭でも美味しいラーメンを食べられるようにと、マリアと共同開発した即席麺だ。

 本物には劣るが、かなりの再現度である。

 素早く、ライブ会場にあったキッチンで麺を"3秒"ほど茹でる。更に、液体スープをお湯に溶かし、トドメの油を投入する。完成だ!とても美味しそうである。

 ラーメンを零さないように、プラムさんの楽屋へと運び差し出した。


「さぁ、どうぞ。自信作です」


「あ、……えーと、そのぉ、とても個性的ね!」


「冷めないうちに、さぁ、遠慮なく」


「そうね、い……いただくね」


 プラムさんはやたらと歯切れが悪いようだが、ラーメンを食べるようである。

 小さな声で「いただきます」と言うと、意を決したかのようにラーメンをすすった。

 しかし、一口食べた瞬間にビクッとし、動きが止まってしまう。


(熱かったのだろうか?……お水、お水)


 プラムさんは、俺が差し出したお水を素早く掴むと、一気に飲み干してしまった。

 俺のラーメンは大量の油でスープを閉じるため、保温力が高いのが特徴だ。


「すいません、火傷してしまいましたか?」


「……舌と喉が焼けるような味ね」


「気に入っていただけましたか! おかわりもありますよ!」


「あ、ありがとう……でも」


「いや〜、喜んで貰えて嬉しいなぁ〜!」


「……と、とっても美味しい!プラムぅ、プロデューサーのラーメンもっとぉ、食べたいなぁ〜♡」


「すぐに用意しますね!」


 プラムさんはその後、涙目になりながらラーメンを全て食べてくださり、満足したのかソファに倒れるように突っ伏してしまった。


(泣く程美味しかったとは、ラーメンを作って本物に良かった!)


 感傷に浸っているとドアがノックされる音がし、扉を開くとスタッフから「もう少しで開演」との知らせが入る。了承の返事をし、そのウマをプラムさんに伝えようとするが……



なんと プラムは ねむっていた! ▼



「ちょっと! 起きてくださいよ!」


 身体を揺すり目を覚まして貰おうとするが、ビクともしない。まるで気絶しているかのようであった。


「プラムさん? ちょっと、なんで寝てるんですか!?」


「ふへぇ……あと5分も待てないよぉ〜……」


「夢の中まで、カップラーメン食べないでくださいよ!」


「……ふふ〜、食前に入れてくだしゃいだぁ〜? 今入れてやるぅ〜」


「気持ち分かるけど! ちゃんと食前に入れてくださいよ! あと早く起きてくださいよ!」


 プラムさんは寝言だけはやたらとはっきりしており、夢の中でカップラーメンを作っているようであった。

 もう、ライブの時間はもうそこまで迫っているのに、どんなに呼びかけても目を覚ます気配はなかった。


(どうする? 何が出来る? 何をすれば起きる!? 思い出せ、彼女が何に1番反応したかを! ………………あっ)


「梅先輩起きてください!」


「あたいをその名前で呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」






 *






こうして ライブは だいせいこうした! ▼






セーブしますか? ▼


▶︎はい

 いいえ


▷はい

 いいえ


セーブがかんりょうしました! ▼







【カズP】


新米プロデューサーのカズP。ラーメンを作りたがるが、その味は………




【プラム】


プラムこと、梅先輩。大人気アイドルで一応四天王。

持ち歌の「胸焼けするようなダーリン♡」は、胸焼けするくらい好きなダーリンの歌。実際胸焼けしていた。

カズPの前ではアイドル全開。




〜登場アイテム〜


【即席麺】


カズキの作った即席ラーメン。麺の茹で時間は3秒の硬いなんてレベルじゃない。油ギトギト。

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