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第42話『MARIKIN四天王』

「今日の議題は、現在空席になっている四天王についてよ」


 魔王様が珍しく真面目な話をしている。現在、魔王城オフィスにて会議中だ。俺も真面目に働いてるぞ!

 隣に座るレヴィアさんも、眼鏡をかけてお仕事モードである。

 今日の議題は、ドラゴンが教会に移動して以降空席となっている「四天王を誰に任せるか?」といったものである。

 そもそもドラゴンが教会に移動したのは大分前の話で、その間四天王の職務は誰がやっていたのであろうか?

 魔王様に聞いてみる事にした。


「あの、魔王様」


「はい、カズキくん」


「現在空席となっている、四天王の職務はどうなっているのでしょうか?」


「勇者が代理でやってくれてるわよ」


「勇者、四天王になってた!? そもそも何やってるの! 勇者!?」


「ゆうちゃんは、本当に優秀ね」


「そのあだ名、今付けましたよねぇぇ!?」


「このまま、四天王になってもらえないかしら?」


「ダメに決まってるでしょぉぉぉぉお!!」


 俺が否定した事により、勇者四天王案は却下された。当たり前だろう。

 勇者が魔王サイドで働いてるなんて……と考えたが、魔王様も元々は勇者だったわけで。


(あれ? 別に大丈夫なのではないか?)


「魔王様、勇者四天王案ですが……」


「あ、もしもし〜? ゆうちゃん? あ、うんま〜ちゃんだけど」


「会議中に電話しないでくださいよ! そもそもなんで勇者に電話かけてるんですか!!」


「漫画の締め切り近いから、ダメって言われたわ」


「頼んでるし! しかもなんか今度遊びに行く〜?みたいなノリで!!それに勇者の断り方もおかしいからね!?」


「まぁまぁ、カズキさん落ちついてください」


 会議中でもいつも通りのお茶目なま〜ちゃんに抗議していると、レヴィアさんが「落ち着いて」と言わんばかりに、コーヒーを差し出してくれた。美味しい。

 そういえば、レヴィアさんは元四天王でありその職務も良く知っている事だろう。

 彼女に聞いてみよう。


「レヴィアさんは、次の四天王はどなたがいいと思いますか?」


「カズキさんがやってみたらどうでしょう♪」


「はい?」


「ほら、先日も勇者様を撃退なされてましたし……」


「は、はぁ……」


「宵闇の魔王でしたよね、素敵ですよ♪」


「却下です」


「どうしてですか!」


「俺に出来るわけ、ないですよねぇ!」


「大丈夫です!」


「そんな自信ありげに、眼鏡クイってしないでくださいよ!」


「なんなら、わたしがダンジョンに手下として立ち塞がります」


「なんでそんなやる気なんですかっ!?」


「えとえと、水の歩鳥ほとりを歩いて浄化しちゃいます!」


「レヴィアさん、それは宵闇の魔王の真似ですか?」


「あ、はい!どうでしょうか?」


「すっごい可愛い」


「あ、……ありがとうございます」


「ちょっと、2人も魔王城から出すわけには行かないでしょ。その案はダメよ、レヴィア」


 魔王様が、あまり似てない宵闇の魔王の真似をするレヴィアさんをたしなめ、却下となる。魔王様が『凍てつく波動』を放っている気がするがきっと気のせいだろう。きっとそうだ。

 そもそも、四天王なんて俺に務まるような職務じゃない。しかも、宵闇の魔王を名乗っていた時の記憶がないのだ。これでは、四天王どころではない。

 気持ちを落ち着かせるため、もう一度コーヒーを飲み資料に目を通す。


 四天王とは、魔王の配下であり、各大陸のボスとして立ち塞がる。四天王を全て倒さなければ、魔王城がある大陸には行けない。

 つまり、四天王は魔王城の門番のような存在である。

 四天王を順番に倒さなければ、旅の目的地でもある魔王城には到達出来ない。

 四天王は各々に様々な試練を与え、それをクリアーする事により道が開かれ、次の大陸に行ける。といったシステムだ。

 勇者が代理で勤めているのは、最後の四天王である。

 しかし勇者は強すぎるため、恐らく挑戦者に対して手加減をしているのだろう。魔王様のように。

 考えごとをしていると、オフィスの扉が開きマリアが出社する。遅刻だ。


「遅いぞ、マリア」


「ふぁ…昨日は『深夜まで生配信! マリアの音ゲーにようこそ!』の放送日でしたの」


「何それ!? ねぇ!それ何なのかなぁ!?」


「何って、『異世界TUBE』ですわよ? ご存知なくって?」


「いや、知ってるけどさぁ!」


『異世界TUBE』とは、無料で動画を配信出来るサービスである。本社はジパングにある。

 以前俺が見ていた、『明美の部屋』も『異世界TUBE』にて配信されており、スマホで簡単に見る事が可能なコミュニケーションツールの1つだ。

 マリアが放送していたのは、意外だったが……


「それで、視聴者はどれくらいいるんだ?」


「チャンネル登録者数は500万人くらいですわね」


「MARIKINかよ!!そっちで食べていけるじゃん!!」


「あ、今日の動画の編集まだでしたわ」


「仕事超してた!いつも疑ってごめんね!」


 マリアはいそいそとパソコンを立ち上げ、動画編集を始めてしまった。

 忙しそうである。魔王様も「マリアはいいのよ」と言い、マリアには会議に参加しないで動画編集を優先するように伝えた。

 そんなやり取りを小春ちゃんも見ていたようで、俺と視線が合った小春ちゃんは、は〜んなりと微笑む。可愛い。

 小春ちゃんはデスクの向かい側から、俺におまんじゅうを差し出してきた。


「食べてもいいの?」


「えぇよ〜、取引先の人に貰ったんよ。まだまだ仰山あるさかい、せやから沢山食べてな〜」


「いただきます………美味い」


「ふふっ、もひとつどやろか〜?」


「食べる」


 小春ちゃんからおまんじゅうを受け取り、再び頬張る。美味い。

 おまんじゅうの甘さが、レヴィアさんの淹れてくれたコーヒーと良く合う。

 おまんじゅうを食べながら小春ちゃんに四天王の事を聞いてみる。


「小春ちゃんは、次の四天王は誰がいいと思う?」


「せやな〜、ヨッホイはんなんてどやろか〜?」



モンスターがあらわれた! ▼



「呼んだか!?」


「いや、呼んでねーよ!帰れ!」


「おう、邪魔したな」


 ヨッホイは素直にオフィスを後にする。そもそもなぜ来たのだろうか。

 小春ちゃんは着物の袖を口に当て、上品に笑っている。どうやら小春ちゃんの冗談のようであった。


「小春ちゃん、冗談ならその辺で……」


「分かっとるよ〜、こっちが本題やさかい。ほな、ねきよって〜?」


 小春ちゃんに手招きされ、俺は小春ちゃんのデスクへと足を運ぶ。

 小春ちゃんはタブレットPCを操作し、何かのアンケート結果のようなグラフを俺に見せてくれた。


「これは…なんだ?」


「次の四天王は誰がえぇか、アンケートを取ったんよ〜」


「おぉ! それで1位は誰なんだ?」


「ふふっ、見てみぃ? 中々おもろい結果になっとるよ〜」


 小春ちゃんからタブレットPCを受け取りグラフを確認する。そこには……


1位、やっぱり宵闇の魔王でしょ! 62%


2位、レヴィアさんの復帰! 20%


3位、むしろ魔王様じゃね? 11%


4位、勇者続投希望! 7%



「はい、おかしい」


「まぁまぁ、こらただのアンケートやから。そないに気にせんといてな〜」


「それなら、カズキくんはどうなのよ?」


「次の四天王ですか?」


「あなただけ、まだ意見を出してないわよ」


 魔王様に促され、少し考える。宵闇の魔王はともかくとして、それなりに影響力がある人物が望ましいだろう。ならば……


「イシスじょ…」


「却下」


「まだ、言い終わってませんよねぇ!?」


「イシぽよは、国を治めているし無理よ」


 魔王様に俺の案は一瞬で却下されてしまった。

 しかし、次の四天王は一向に決まる気配はない。

 魔王様も中々決まりそうにないのを察したのか、今日の会議はお開きとなった。

 各自が昼食を取るために席を立つ。俺もマリアとラーメンを食べようと食堂に向かおうとするが、魔王様に呼び止められた。


「カズキくん」


「なんですか、魔王様」


「明日から四天王の視察に行ってちょうだい」


「は、はい?」


「ちゃんと彼女達が仕事をしているかどうか試練も受けてね♡」



 こうして、俺の四天王視察が始まってしまった。




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