第31話『サムズアップカード』
モンスターがあらわれた! ▼
「カズキ!デッキは出来たのか?」
「ヨッホイか、今調整中だ」
俺の名前はカズキ。魔王の息子。そして、『まおデスカードファイト』に命をかける決闘者だ。
現在俺は来たる大会に向けてデッキの最終調整中だ。
俺のデッキを眺めながらヨッホイは静かに呟く。
「やはり、『カズキデッキ』は使わないのか?」
「あぁ、この『教会パーミッション』が俺には合っている」
「環境トップのデッキはあえて使わないってわけか」
「それに、自分のカードを使うのは気が引ける」
「違いねぇな。そんじゃ、頑張れよ!」
ヨッホイはそう言いながら立ち去る。その背中にサムズアップポーズを残しながら。
今度の大会の優勝商品はなんと限定イラストの『イシス女王』だ。『イシス女王』のカードは効果もなくAKやDFも1なのだが、やたらと封入率が低い。それに加えてレアリティも高く、イラストアドもある。まぁ、俺は36枚持っているがな。
今回はその『イシス女王』のサイン入り限定イラストのカードが優勝商品というわけで、全国から猛者達が集まってくる。
負けるわけにはいかない。
(さて、徹夜で最終調整だ)
*
ーー翌日
「カズキくん、受付は済ませたの?」
「今からです」
「早くエントリーしてらっしゃい」
共に会場入りしている魔王様に促され、俺は受付会場へと赴く。デッキのカードとプレイヤーIDを登録しなければ大会には参加出来ない。
「登録お願いします」
「では、デッキをこちらにどうぞ〜!」
人当たりのいい受付のお姉さんに従い、昨日作りあげた魂のデッキを提示する。しかし……
「このデッキ、カードが1枚足りないですね」
「本当ですか?」
俺は自身のデッキを今一度確認する。確かに1枚足りない。昨日の調整中に入れ忘れてしまったようであった。足りないカードはミラーゲーム対策の『紫外線を弾く魔法』のようだ。
(予備のカードもないし、どうするか……)
「カードが足りないようでしたら1パック購入されるのはいかがですか?」
困っていると受付のお姉さんが親切にもアドバイスしてくださる。
本来ならありえない選択肢だが、ミラーゲーム以外では役に立たないカードだからな。適当に入れた1枚でも問題はないだろう……
「すいません、新弾を1パックください」
「ありがとうございま〜す!」
パックを開封し、念のために中身を確認しようとしたが受付の時間が迫っているとの事で、カードを見ずに1枚デッキに加えた。
※このカードは『ま〜ちゃん』です。このカードを使って勝ちます。
(今、下に何かテロップが出た気がしたが、気のせいだろうか?)
「大会参加希望の方はお早く〜!」
「いかん、急がないと……」
*
「ごきげんよう!マリアですわ!さぁ、大会も残す所決勝戦のみとなりましたわ!」
「両選手、入場ですわ!」
「まずはここまで安定した強さで勝ち上がって来た前回の王者!カズキ!」
「解説のレヴィアさんどうでしょうか?」
「はい、カズキさんは安定力が売りのデッキで今回も順当に勝ち上がってきましたね〜!」
「ありがとうございます。そしてチャレンジャー!勇者!」
「勇者様は『カズキデッキ』に『かあさん』を投入したハイブリッドデッキですね。かなりの高火力デッキですよ」
「これは王者も今回は敗北してしまう可能性がありますわね!」
「では両者……」
『「決闘」』
「俺の先行、ドロー!ターンエンド」
「おぉと!チャンピオン動きませんわね!何か作戦があるのでしょうか!」
「あたしのターンね!ドロー!『カズキ』を召喚するわ!」
*
「回復魔法を発動、俺のHPを+5する」
HP12→17
(これで、無限時間ではやられない)
「さらに、『神様』を召喚!」
(神様はこのターン攻撃出来ないが、これで次のターンに俺の勝ちだ)
「カードを1枚伏せターンエンド」
「あたしのターン!……来たわ!」
「なんだと?」
「『カズキ』でアタック!」
「無駄だ、確かに『無限時間』を使えば俺のHPは16減るが1は残る」
「勇者のHPは4。次のターンで俺の勝ちだ」
「それはどうかしら?」
「なんだと…?」
「あたしは『ヒノキの棒』並びに『mark2』を墓地に送り、『ゴ・イクリプス』を発動!」
「な、なにぃ!?それは未登場技だぞ!?」
「さらに、手札を1枚墓地に送り『無限時間』発動!」
「カズキのAKを27にしてプレイヤーにダイレクトアタックよ!」
(このままでは、やられる……!)
「リバースカードオープン!『赤面するレヴィア』フィールドのカードを1枚手札に戻しバトルを終了させる」
「俺は『神様』を手札に戻す……」
「ターンエンドよ!でも次であたしの勝ちのようね」
その通りだ。俺の手札は、今手札に戻した『神様』のみ。そしてこのカードはコストが重いため次のターンに召喚するのは不可能。
(ここまでか……)
「いや!俺は諦めない!共に戦うカード達がいる限り、最後まで戦うぜ!」
「俺はこのカードを信じるぜ……!ドロー!」
その刹那!カードが光輝く!選ばれし決闘者にのみ許された奇跡のドロー!
「こ、このカードは……」
「何?一体なんのカードを引いたというのよ!?」
俺は今引いたカードをフィールドに出した。
【ま〜ちゃん】
『出したら勝ち!』
セーブしますか? ▼
▶︎はい
いいえ
▷はい
いいえ
セーブがかんりょうしました! ▼
「なんですか、魔王様あのカードは!?」
「ま〜ちゃんが最強じゃなきゃやだもんっ」
こうして【ま〜ちゃん】は初の禁止カードとなった。めでたし、めでたし。




