第26話『オムツライアー』
「あら〜! ここもさっぱりしちゃって〜、わたしの頃なんてここは毒沼だったのよ〜!」
「かあさん、ちょっとは遠慮してよ……」
現在、かあさんが魔王城へと来ている。俺はなぜか授業参観に母親が来ているようなむず痒さを覚えた。
「あら、ま〜ちゃん元気〜? レヴィアちゃんも! 相変わらず2人とも可愛いわね〜!」
「お久しぶりです、お母様。この度はご足労ありがとうございました」
「ま〜ちゃんったら、そんなに畏まらなくて大丈夫よ〜」
2人とも、やたらと親しげな雰囲気である。
「あの、魔王様? かあさんと仲がよろしいのですか?」
「あら、あんた昔ま〜ちゃんにオムツを替えてもらった事もあるのよ〜?」
「はい?」
「小さい頃のあんたはま〜ちゃんが遊びに来るたびにべったりだったわね〜」
「はぁぁぁぁぁあ!?」
俺が驚きの声をあげていると魔王様が1枚の写真を見せてきた。
今よりも髪の長い魔王様が1人の赤子を抱えている。その赤子はとても笑顔であり、魔王様に抱っこされて嬉しそうであった。
「あなたよ」
「…………………」
もう驚く気力も湧かない。レヴィアさんはというと眉間にシワを寄せ少し「むすっ」とした表情をしていらっしゃる。
それに気が付いたかあさんは「小さい頃レヴィアちゃんに抱っこされたら泣いちゃてたのよ」と耳打ちしてきた。
レヴィアママは今に始まった事ではなかったという訳か。
俺は何となくの想像が付き、以前から抱いていた疑問を口にする。
「あの、魔王様。俺の面接は……」
「あんなもの、形式上だけよ。面接に来た時点で採用は決まっていたわ」
「コネ入社だったのかよぉ……」
魔王様は「あなたはよくやっているわ」と労いの言葉をかけてくださる。
確かによく考えてみたら、なんの取り柄の無い一般人をいきなり魔王城に就職させるだなんておかしいもんだ。
「あと、あなたをこちらに最初に送ったのはお母様よ」
「は、はぁ」
驚くのに疲れた俺にレヴィアさんが情報を付け足してきた。
「カズキさんのお母様は、わたしの魔法のお師匠様なんですよ」
それを聞いたかあさんは「やぁね〜」とレヴィアさんをおばちゃん叩きしていた。
「じゃあ、かあさんはそろそろ帰るわね」
「え、でも転移魔法って簡単には出来ないんじゃ……」
そんな疑問を浮かべていると、かあさんは素早く魔法陣のようなものを足元に形成する。その間わずか0.5秒。その様子に唖然としていると魔王様が「クスクス」と笑っていた。
「魔王様なぜ笑っているんですか?」
「1ヶ月に1度しか帰れないなんて嘘よ。いつでも帰れるわ」
「………………」
「それから、毎回コマンドを入れる必要もないわ」
どうやら、驚き疲れて今日のツッコミスイッチは完全にOFFになってしまっていたようだ。
申し訳無さそうな顔をするレヴィアさんと「あんたそう言わないと、すぐに帰って来ちゃうでしょ」と言うかあさんの言葉から状況を理解した。
しかし、すぐに帰りたがったのは事実であり、口を閉ざす。
ゲームのコントローラーにコマンドを打ち込んだのが、"本当のウェルカムジョーク"だったようだ。
まったく、凝った演出である。あれ以降俺は現実世界に戻ったり、こっちに来たりする場合、毎回VRゴーグルを付けて律儀にコマンドを打ち込んでいたのである。
それが転移の方法だと信じ込んでいたが、そんな必要はなかったようである。
顔をしかめる俺に、かあさんは手を振る。どうやらご帰宅のようだ。
「……気を付けてな」
「あんたもま〜ちゃんや、レヴィアちゃんにあんまり迷惑かけるんじゃないよ〜!」
かあさんはそう言い残し、現実世界へと帰っていった。
魔王様はそれを見届けると、「お家に帰りたくなっちゃたかしら?」とからかってきた。
「仕事がありますので……」
魔王様に断りを入れ、デスクに戻ろうとするとオフィスのドアが勢いよく開き……
モンスターがあらわれた! ▼
ではなく、お馴染みの展開でヨッホイが俺の元へと全速力で駆け寄ってくる。
「おい、カズキ!」
「なんだよ、暑苦しい」
「お前のおかげでヒノキのぼうがバカ売れだ!」
「なんでやねん!?」
「映画が公開されたのは知っているだろ?」
「あぁ」
完成された映画は驚くべきスピードで編集され数日後には公開されていた。編集された映像の中の俺は、華麗に16連撃を決め勇者に160万オーバーのダメージを与えている演出がなされていた。
「お前がヒノキのぼうを湯船に浮かべたり、戦闘シーンで派手に使ったりしたろ!」
「したな」
「おかげで、高級品のmark2や、防水ラジオ付きのヒノキのぼうの在庫が全部売れちまったのさ!」
「まて、防水ラジオ付きってなんだ?」
「湯船に浮かべる専用のヒノキのぼうよ! お前が浮かべてるのをヒントに開発したのよ!」
「お前アッホイだろ?」
「それに、ほらmark2もバージョンアップしたんだぜ!」
ヨッホイは新しくなったmark2を俺の前で振ってみせる。なんの変化も無いように見えるが……
「さらに、いい香りがするようになったのか?」
「ちげーよ! いいか、聞いて驚くなよ。無くした時にスマホを使って探す事が出来るのよ!」
「誰も探さねーよ!」
「ちなみに価格は50万Gだ」
「俺の月給並みぃ!」
「比較として、勇者が使っていた【伝説の剣】は35000Gだ」
「伝説の剣より高いのかよ!?」
「分かったらお前ももうmark2を湯船にうかべるなよ」
「分かった」
––––後日
「おい! 誰だよmark2を湯船に浮かべたやつ! またカズキだろ!」
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セーブがかんりょうしました! ▼
次回は予告通り番外編です。通常の3話構成ではなく、増量の6話構成となります。
その後となりますが、キャラや、アイテム、魔法などの詳細な情報を記したものを投稿いたします。ご興味があれば暇な時間などに読んでいただけたら幸いです。
カズキ「魔王様のスリーサイズも載っているらしいぞ」
レヴィア「わたしもメジャーで測られました……」
魔王「どんな感じなのか、1人だけ載せるのはどうかしら?」
マリア「一体誰を載せるのかしら?」
小春「ほなら、うちが」
魔王「いいえ、わたしよ」
マリア「わたくしですわよ!」
カズキ「いや、俺だ」
レヴィア「え、それじゃあ。わたしも……」
レヴィア以外の全員『どうぞ、どうぞ』
【レヴィア】
身長161cm 体重49.5kg
スリーサイズはB85-W57-H83
アンダーバストは68 ブラのサイズはE70
カズキの同僚で魔王様の部下。気配り上手なOLさん。OLスーツをキッチリ着こなす。
髪型はブロンドのロングヘアを26ミリのコテで巻いている。日によってまとめたり、編み込んだり。魔王様同様に前髪は作るタイプ。
化粧品は日本製よりも、海外製の方が肌に合うらしい。仕事中は眼鏡を着用。
コーヒーを淹れるのが、1番上手い。お料理はレパートリーが多いタイプ。
カズくんを見ると「レヴィアママ」へと変貌してしまう。異世界グラムへの投稿は業務連絡が主。時々投稿される自身の写真には、物凄い数のイイネが付く。
作者からの愛称はレヴィアたん。実は作者のお気に入りのキャラ。
レヴィア「恥ずかしいです……」
魔王「こんな感じに全キャラ分載っているわ」
カズキ「良かったら見てくれ」