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第24話『上書き保存』




「鼻の下が伸びているわよカズキくん」


「うおっ、魔王様!?」


なんと まおうが めのまえに あらわれた! ▼



 イシス女王に見惚れていると、魔王様がどこからともなく急に現れた。

 不思議そうな顔をしていると、俺のほっぺを指差し「目印」と答えてくださる。


 その箇所は以前魔王様にキスされた場所で、話によると目印に移動魔法で飛べるだとか。なるほど、ちゃんと仕事しているか見張りに来たってわけだな。


 イシス女王は魔王様の姿を見ると、にこやかに微笑んで手を振っていた。ドラゴンはと言うと……いない!逃げやがった!



「お久しぶりですね、ま〜ちゃん」


「イシぽよも元気そうね……」


 気のせいだろうか?あの魔王様が少し苦笑いしているように見える。



 どうやら、挨拶の終わった2人は、早速スマホを片手にセルフィーをするようである。

 何枚か写真を撮り終わると、イシス女王がこちらを手招きをしてらっしゃる。「一緒に撮ろう」というお誘いだろうか?彼女に近付くと……



なんと イシスじょうおうに だきつかれてしまった! ▼



「はい、撮りますわよ」


「”イシス女王”なぜ、うちのカズキくんに抱き付いているのかしら?」


「マーキングですわ♪」


「なぁぁぁぁあ!」


「うふふ。冗談ですわよ、ま〜ちゃん。カズくんの反応が面白くてつい……」



 イシス女王は、スマホを斜め45度に構えながら最高の笑顔を画面に向けている。かたや俺の顔は少し引きっていた。どうして女の人はこれほど上手に笑えるのだろうか?俺には少し難しい……



 そんな光景を見てらした魔王様が『凍てつく波動』を放っていらっしゃる。それほどにも自分より異世界グラムのフォロワーが多いイシス女王が気に入らないのだろうか?

 それなら、何故彼女を今回の映画に抜擢したのだろうかという疑問が生まれる。


「魔王様、なぜイシス女王が出演なさるのですか?最後のスケットってイシス女王の事ですか?」


「違うわよ、それとスポンサーの意向よ」


「スポンサー?」


「教会よ」


「教会って、神様の所の?」


「そうよ。あなたが主役なのも教会側の意向よ」


「なぜ、教会がスポンサーに付いたのですか?」


 そもそも、映画を作るといっても魔王様の資金力なら、スポンサーなど本来なら不要だろう。

 ドラゴンが出演する事にも何か意図があるのだろうか?

 そんなことを考えていると、戻って来たドラゴンが疑問に答えてくれた。


「近年教会は業績悪くてさ〜、でも保険サービスをメインに据えてからは結構いいらしくて〜」


「つまり、PRも兼ねていると?」


「そゆこと〜!」


 なるほど、今回の映画は教会の宣伝も兼ねた映画になるわけか。イシス女王は人気が高いお方だし、ドラゴンは教会所属になったわけだからある程度納得はいく。じゃあ、俺は?


「俺はなんでなんですかね?」


「面白そうだから〜!ってあけぽよが言ってたよ〜!」


「そんなので決めんなよ!」


 あけぽよと言うのは、神様の事だろう。確か「明美だよ〜」と自己紹介された記憶がある。


 イシス女王が異世界グラムに写真を上げ終わったのか、台本を片手にウキウキと魔王様と俺に質問をしてきた。


「わたし、キスシーンくらいならできますよ?」


「やらないわよ!」


「『きょいきょい』や、『へろへろ』、『いんぐりもんぐり』もしちゃいますか?」


「な、なんですか、それは?」


「よくは知りませんが赤ちゃんを授かれ……「ちょっと!」


 魔王様がイシス女王が喋り終わる前に言葉を挟んできた。

 魔王様はかな〜り不機嫌そうな表情でイシス女王に忠告をする。



「”うちの”カズキくんにちょっかいをかけないで貰えるかしら?」


「それでしたら、カズくんとわたしは一夜を共にしました♪」


「なぁぁぁあ…!」


「とっても優しくしてもらいましたのよ?」


「な、ななな何を言って…!」


「ふふ、冗談ですわ。少し苦労話を聞いてもらっただけですわよ」


「だからわたしは嫌だったのよ!あっちゃんのばか〜!」



 ドラゴンはまたもや居なくなっていた。魔王様は、イシス女王の前では普段の凛々しさが無くなりイジられていた。そんな魔王様はちょっと可愛い。





 *





ーー数日後


 撮影はすでにスタートしており、現在休憩中の俺はドラゴンと共に小道具の1つ【ラーの鏡】を見ていた。


「これは何に使うんだ、ドラゴン?」


「いや知らんし〜」


「知らないのかよ!?」


「ただ使い方は知ってるよ〜!こうやって、鏡の前に立つと……その人の真の姿を移す〜みたいなっ」


 ドラゴンが鏡の前に立つと鏡に文字が浮き上がってくる。そこに書かれていた文字は……



【カリスマギャルゴン】



「カリスマだって!ヤバくない?テンアゲ〜!」


「喜ぶなよ!?」


「カズぽよもやってみ〜?」


 カズぽよの部分にいつもながら違和感を感じるが、俺はドラゴンに言われた通りに鏡の前に立つ。どうせ、ロクでもない事が書かれているのだろう。



【時間と戦う、サラリーマン】




「あながち間違ってない」




 ドラゴンと2人で撮影の合間をぬって親睦を深めていると、ヒョロールが肩を縮こませながらこちらにやってきた。


「勇者の到着が少し遅れるようでして……」


「いつ頃到着するんですか?」


「3日後には来れるとの連絡が…」


「なら、先にわたしとカズくんのシーンを撮ってしまいましょう」


 話を聞いていたイシス女王が中々いい案を提示してくださる。一国を治めているだけあって、状況判断も見事だ。


 今回の映画の大まかな流れとしては、俺が演じる魔王に対して、不満を持つ勇者が乗り込んでくる。と言ったお話だ。


 俺は国民からの信頼の厚い魔王役で、まんま俺の上司である魔王様と被る役所だ。

 ボストロールの見かけによらないスパルタ演技指導のおかげで、俺もドラゴンもメキメキと役者としてのレベルアップを果たした。

 ボストロールは台本を確認し、撮影するシュチュエーションを指示してくる。



「ではカズキさんのお風呂シーンを撮りましょう」


「俺の!?普通イシス女王のとかじゃないの!?」


「面白いから。だそうです」


「あんの、ギャル神様め……」


「あ、指輪は外してくださいね」


 俺は言われた通りにイシス女王から頂いた『祈の指輪』を外しポケットに入れた。それを見ていたイシス女王が「わたしとの婚約破棄ですか?」とおどけてみせる。

 イシス女王はたまにこうやって軽い冗談を挟みながら、どのスタッフに対しても丁寧な態度で接し、現場の雰囲気を和やかなものへとしてくださっていた。


 俺は案内された通りに湯船に浸かり、セリフを喋る。

 だが、ある事を思い付いてしまった。


「湯船にヒノキのぼう浮かべるのどうですかね?」


「採用」


 ヨッホイ、これでみんな『ヒノキぼう』の良さに気が付くぞ。





 *





 イシス女王は自身の撮影分を撮り終えると、忙しいからとご帰宅されてしまった。


 お見送りには少し上機嫌の魔王様と、俺が同席しその時に……



「カズくん、撮影とても楽しかったですわ。これはその……ちょっとしたお礼です」


 なんと、以前魔王様がキスしてくださったほっぺに彼女の柔らかい唇が軽く触れる。イシス女王は魔王様のほうを「チラリ」とうかがい悪戯っぽく笑うと……


「上書き保存しちゃいました♪」


「この、このイシぽよ……そこはわたしの……」


 魔王様がよく分からない言葉を口ずさんでいるが、イシス女王は気にせずに移動魔法でサマンサーを後にした。

 魔王様が何故か『凍てつく波動』を放っている。ちょっと怖い。


「カズキくん」


「はい?」


「減給」


「なんでぇええ!?」





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