第22話『モテモテクロウ』
「ゴブリン・バースト・ストリーム!」
ミイラおとこに 6のダメージ! ▼
「あれ?」
ミイラおとこのこうげき! ▼
カズキはほうたいでまかれてしまった! ▼
「ちょっとカズキ殿は弱すぎますぞ」
「いや〜面目無い」
包帯を丁寧に紐解ながらミイラ男が話しかけてくる。
現在ダンジョンの調査中であり、こうしてダンジョン内のモンスターと連携して隠し通路を探している。
しかし、ヨッホイ直伝の技はまだまだ未完成で16連撃など到底不可能であり、頑張って6連撃といったところだ。
練習に付き合ってくれたミイラ男は交代の時間となり、持ち場に戻るようだ。
「カズキ殿、こんどあっしの作ったカクテル飲んでくだせえ」
「お前カフェ担当だったのかよ!?」
どうみてもダンジョン担当のミイラ男を見送りレヴィアさんに状況確認を行う。
レヴィアさんは現在ピラミッドの頂上付近を捜索中との事で、このポイントが怪しいと狙いをつけていた。
俺はというと地下一階のスペースでスタッフ達の近況確認中だ。サボりじゃないぞ?これも仕事だ。
「どうしても宝箱から舌がはみ出しちゃって」
「ならこちらの大きめの宝箱はどうですか?お安くしておきますよ〜」
「最近影が薄くてー」
「照明の位置変えておきますね〜」
ミミックや怪しい影と会話をしつつ地下を見回る。
特に異常はなく空調も効いており、ピラミッドだから暑い!なんて事もない。
その時……
「なんだこれ?」
カズキは あしもとを しらべてみた! ▼
なんと かいだんが あらわれた! ▼
「あ、あった」
呆気なく見つけてしまった隠し階段をレヴィアさんに報告をしようと思ったが、頂上から降りてくるのは手間だと思ったために俺は1人で階段を下る。
大きな扉に魔王様から預かった【最後の鍵】を差し込みひねる。
少し長めの通路を抜け、神殿のような場所に出た。
中央の台座に古びた棺が置かれており、おそらくはあの中に【黄金の爪】が入っているのだろう。はやく回収して、戻ろう。
カズキは おうごんのつめを てにいれた! ▼
黄金の爪を手に入れ、一階に戻るとなんとモンスターに囲まれてしまった。
「カズキ殿、今日は飲みに行きましょう!」
「カズ吉、カラオケいかね〜?」
「カズ、トゥギャザーナイト」
「おい、お前ら!俺は仕事がだな……!」
俺のそんな言葉も虚しく、次から次へとモンスターが押し寄せては遊びの誘いをかけて来た。
なんなんだこれは…?
上の階から戻って来たレヴィアさんはその光景を見ると……
「ズルいですよ!わたしもカズキさんと水族館に行きたいです!」
「レヴィアさんもかよっ!?」
何故かは分からないが、やたらと多くの人に絡まれるようになってしまった。
エンカウント率でも上がったのだろうか?
とにかく依頼を達成した報告をイシス女王にしなくては。
こんな時こそ【きえさりそう】が必要だ。
自分で対処できない問題が発生した場合は上司に報告する。
俺は社会人の基本のほうれん草に従い魔王様に連絡を取る。
「あ、魔王様?」
『なによ?』
いつもならワンコールで出てくださる魔王様が今回は3コールを要した。忙しいのだろうか?声色からも少し苛立った様子を感じる。
「今、お時間大丈夫でしょうか?」
『ダメよ』
(仕方ない掛け直すか……)
『だって、今自分が1番可愛く撮れる角度を研究中だもの』
「仕事しろよぉぉぉぉぉぉお!」
『急に大声を出さないでちょうだい。それでどうしたの〜?』
「急に大勢のモンスターから遊びの誘いを受けてしまいまして……」
『あなたの方こそ仕事をして欲しいわね』
「だっておかしいんですよ!レヴィアさんまで水族館に行こうだなんて」
『あの子、お魚さんが好きなのよ。いいわね、”モテモテ”で』
魔王様はモテモテの部分をやたらと強調して来た。自分も遊びに行きたいのだろうか?今度飲みにでも誘おうか。
「魔王様、飲みに行きます?」
『切るわよ』
「わー!待ってください!冗談ですって」
『分かったから、状況を説明しなさい。何か変わった事はない?』
変わったこと…俺は自身の指にはめているアクセサリーに目を落とす。
「祈りの指輪をイシス女王にいただきました」
『貰ったの!?あの指輪を!?』
魔王様は声を荒げて質問をしてくる。そんなに貴重な指輪なのだろうか?
「そんなにすごいんですか、これ?」
『MPを実質無限に出来るのよ。わたしも欲しかったんだけれどね……あなたそうとう気に入られてるわよ』
「それじゃあ、この指輪のせいですか?」
魔王様は『違うわね』と短く答える。しかし
なぜイシス女王はそんなにも貴重な指輪を俺にくださったのだろうか?
いいや、考えるのは後だ。今にも多くの人が話しかけてきていて魔王様の声も聞き取り辛くなっていた。
『他には何かない?アイテムの呪いの類いの可能性もあるわ』
イシス女王の匂いだろうか?
しかし、それならばイシス女王は大変な事になっているだろう。なら……
「黄金の爪を持っています」
『それよ!黄金の爪を持っているとエンカウント率がなぜか上がるのよ!』
なるほど、通りで。
「つまり、この爪を手放せば大丈夫だと?」
『そうね。イシぽよったら自分が囲まれるのが嫌だからって……』
"イシぽよ"の部分に違和感を覚えるがおそらくイシス女王の愛称とかなのだろう。
つまりはこの爪をイシス女王に手渡し、どこかに安置してもらえばいいわけか。
*
「ありがとうございます。カズくんおかげで助かりました」
「物凄く遊びの誘いをうけました」
イシス女王は少し申し訳無さそうな表情をなさる。
黄金の爪はお城の展示室に展示するそうだ。
俺は先ほど魔王様の話に出て来た指輪の事が気になり、彼女に質問をする。
「あの、イシス女王」
「なんでしょう?」
「なぜ、この指輪をくださったのですか?とても貴重なものだと……」
「あなたがあの人に似ていたからですよ」
「あの人とは?」
「以前このイシスが水害となり飲み水が不足した際に、水魔法を行使して大量の水を供給してくれた女性にですよ」
「自分は男ですよ?」
「雰囲気……と申しましょうか。その指輪もその方に頂いたものなのです」
「本当によろしいのですか?頂いても?」
イシス女王はその質問を聴くと、「ふふっ」と艶めかしく微笑み……
「あなたの冒険が実りありますように、祈りを込めておきました。どうぞ受け取ってください♪」
イシス女王から頂いた祈りの指輪が、キラリと輝いた気がした。
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あとがき的なもの
次回は番外編となりますが、その次のエピソード予告をどぞっ
【次回エピソード予告】
「サマンサーに行って勇者を迎え撃ってちょうだい」
「俺1人でですか!?」
「ちゃんと他のスタッフも派遣してあるわよ」
突然派遣され勇者のパーティーを撃退する事になったカズキと愉快な仲間たち!
【気弱なボストロール】
「自分、闘いとか向いてないっすよ…」
【ギャルドラゴン】
「アーシト、パフェ早食イバトル的ナ?」
【明かされる真実】
「ラーノ鏡ハ己ノ真ノ姿ヲ見セル!ミタイナ〜☆」
「お前の真実カリスマギャルゴンになってるぞ」
【勇者襲来】
「たのも〜!勇者はいらんかね〜!」
「勇者のパーティー全員HP100万以上あるぞ!?どうするんだよ!!」
「4人ガカリダト、アーシモヤバイカモ〜?」
【最後の助っ人】
「みんなお待たせ〜♪」
【どうなる!?カズキパーティー!?】
「ムカ着火ファイアー!」
「ドラゴンの技がギャルっぽくなっている!?」
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