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第21話『ぱふぱふring』





––––深夜


 俺は城内に与えられた寝室を抜け出し、素早く「きえさりそう」を口に含む。

 この「きえさりそう」は食べると32歩の間、自身の姿が見えなくなるという代物だ。味は魔王様が言っていた通り、苦い。


 イシス女王の要件が何かは分からないが、夜間に女性の寝室に入るのを誰かに見られるのはまずい。

 人の少ない時間を指定してきたという事は、おそらくは他の人には聴かれたくない内密な話なのだろう。


 扉の前に立ち彼女からあらかじめ貰った「魔法の鍵」で扉を開ける。

 中に入ると、ベットに腰掛けたイシス女王がこちらを見て微笑んでいた。


「人目を忍んでわたしに会いに来てくれたことを、嬉しく思いますわ」


「イシス女王、先ほどのお願いというのは一体なんなのでしょうか?」


 イシス女王は「まぁ、焦らずに」とベットをポンポンと叩く。隣に座れということだろう。


 俺は言われた通りに、彼女の横に腰掛ける。ふわりと香る彼女の匂いが鼻腔びこうを刺激する。

 改めて彼女の格好を見ると、ベビードールのようなものをお召しになっており、おへその部分がシースルーで透けていた。

 俺の視線に気が付いたのか、イシス女王は妖艶に微笑みながら囁いた。


「ふふっ、ぱふぱふして行きますか?」


「は、はい?」


 "ぱふぱふ"と言う言葉が彼女の口から飛び出した事により俺は赤面してしまう。

 そんな様子を見て、イシス女王は嬉しそうな表情を浮かべる。


「ですが、ぱふぱふといったものがどの様な事かは存じ上げておりませんの」


「なんでやねん!?」


 イシス女王は「言葉だけは聞いた事があるのですが」と口元に手をあて上品に微笑んだ。

 だが、イシス女王はそれほど大きくはないため、ぱふぱふは無理なのでは無いだろうか……

 俺は深夜という事もあり、少しの眠気を覚えたため、早く眠るために話を切り出す。


「そろそろ、お話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」


「そうね。ピラミッドがリニューアルしたのは先ほど話しましたね」


「えぇ」


「以前のような仕掛けは少なくして、ボスモンスターを配置し『魔法の鍵』を守らせておりますわ」


 魔法の鍵とは3つあるうちの鍵の1つで、これを入手しなければ、先に進む事は出来ない。

 だが、ピラミッドのダンジョンが難し過ぎるため、途中で攻略を諦めてしまう冒険者が後を絶たない。

 このピラミッドでかなりの勇者が冒険を辞めてしまっているほどだ。


 それにしても、ダンジョンで入手出来る鍵で女王の寝室に入れるのはどうなのだろうか?

 そんな事を考え、自身の持っている『魔法の鍵』に目を落とす。


「……これ魔法の鍵じゃない」


「うふふ。その鍵はこの世界に1つしかないわたしの『寝室の鍵』ですのよ」


「か、返します!」


 イシス女王は差し出された鍵を「いやで〜す」と断る。俺は鍵を捨てるわけにもいかず渋々ポケットに収めた。

 それを見たイシス女王はご機嫌な様子で話を続ける。


「話を戻しますね。ピラミッドに仕掛けが多いのは話ましたね」


「落とし穴とか、隠し通路ですよね」


「その通りです。問題は隠し通路でして、お恥ずかしながら以前隠し通路に安置していた『黄金の爪』の所在が分からないのです」


「それは、つまり……隠し通路の場所を忘れたと?」


「はい、忘れてしまいましたの」


 イシス女王はしょんぼりと肩を落とした。

 まぁ、誰にだってミスはあるだろう。あの魔王様だってセリフを忘れているくらいだ。

 つまり、お願いというのは……


「その、隠し通路を見つけ『黄金の爪』を探してくればよろしいのですか?」


「お願いできますでしょうか?」


 ピラミッドはリニューアル後は比較的にモンスターのレベルが抑えられており、さらにレヴィアさんも同行するとなれば軽い運動程度だろう。


「構いませんよ」


「ありがとう、ございますわ!」


 イシス女王はお礼を言うと「そうだっ」と自身の指から綺麗な指輪を抜き取る。


「何もしてあげられませんが、贈り物を差し上げましょう」



カズキはいのりのゆびわをてにいれた! ▼



「いいのですか?」


「あなたの冒険が素敵なものとなりますように♪」


 女王の有難いご好意を受け俺は頂いた指輪を装備して、寝室を後にしようとポケットの中を探るが、先程まであったアイテムが見当たらない。


「……きえさりそうが無い」


「あらあら、それは困りましたね〜」


 女王の寝室から出るのを、誰かに見られるのは非常にまずい。

 どうしようかと考えていると、イシス女王は部屋の一角を指差した。


「お布団を敷いておきましたよ」


「はぃぃいいい!?」


「それと、きえさりそう苦いですね」



イシスじょうおうの すがたが みえない! ▼



「いたずらが過ぎませんっ!?」


 テレレレテッテテー♪




 *




––––翌朝


 朝食を取るためにラウンジへと向かうと、レヴィアさんがタブレットPCを片手にコーヒーを飲んでいた。


 ちなみにどの様にして人目に付かずに寝室を出たのかというと––––


「それでは透過とうか呪文を施しますわね」


「それ、出来るなら最初からやってくださいよ!?」


「ふふっ。うっかりしていましたわ♪」



 ––––回想終わり。

 俺はレヴィアさんに挨拶をしてから、正面の席に座りウェイターさんに注文をする。


「サニーサイドアップをターンオーバーでお願いします」


「かしこまりました。ボイルドエッグをつける事も可能ですが、いかが致しますか?」


「3分でお願いします」


 ウェイターさんは注文を確認すると、キッチンの方へと注文を伝えに行った。

 注文が終わった所でレヴィアさんが怪訝そうな顔付きで鼻を「くんくん」とさせていた。


「どうしたんですか、レヴィアさん?」


「カズキさんからイシス女王の匂いがします」



なんと イシスじょうおうの においが しみついてしまった! ▼



 彼女の部屋に一晩いたからだろうか……。とても眠かったので、すぐに敷かれた布団で寝てしまったのだが、彼女の香水の匂いだろうか? それが染み付いてしまったようだ。

 俺はゴマかすように、女王と同じシャンプーを使ったことをレヴィアさんに報告する。


 間違ってはいない。実際、俺の部屋にあったシャンプーと彼女の髪からは同じ匂いがした。

 それでもまだ納得していないレヴィアさんの気を逸らそうと、昨日頼まれた女王の依頼をレヴィアさんに説明する。


「なるほど、依頼内容は分かりました。ですがいつの間に依頼されたんですか?」


「さ、先程メールで」


 嘘は言っていない。メールで依頼内容の確認をしたのは事実だ。

 レヴィアさんは納得したのか、タブレットPCを使いリニューアルされたピラミッドのマップを表示する。


「おそらく、隠し通路があるとしたらこの辺りだとおもいます」


「では、その辺りを重点的に捜索しましょう」


 朝食を取りながらのミーティングを終え、ピラミッドに潜入する準備を整える。


 ヨッホイお手製のヒノキのぼうを両腰にぶら下げ、漆黒のコートを装備する。最後にイシス女王から頂いた祈りの指輪をはめた。


 戦闘になる事はおそらく無いと思うが、念のためだ。

 話によると、俺でも倒せるようなモンスターばかりだそうで、隠し通路さえ見つけてしまえば簡単に終わりそうな依頼だ。



 *



「レヴィアさん、目がチカチカします……」


「砂漠の砂が目に入らないように気をつけてくださいねっ」


 ピラミッドは本当に黄金に輝いており、近付いてみると自身の顔が移りそうなくらいテカテカと輝いている。

 ダンジョンに潜入しないような格好の人もあたりにはちらほらといて、写真撮影をしたり、常設されたカフェでお茶を楽しんでいた。

 なるほど、異世界映えってやつか。


「ほら、カズキさん行きますよ」


「分かってますよ」


 レヴィアさんに急かされ、ピラミッド内へと入る。ピラミッドでお宝探しなんて、呪われないといいが……。





あなたがたの たびのおもいでを セーブしますか? ▼



▶︎はい

 いいえ


▷はい

 いいえ



セーブがかんりょうしました! ▼








【イシス女王】


職業、女王

ピラミッド付近の国イシスを治める女王。異世界グラムのフォロワーが世界一多い。ブラのサイズはA65。




〜アイテム!〜


【祈りの指輪】


MPが20程度回復する。しかも何回使っても壊れない特注品。しかしMPが1のカズキが持っていても、あまり意味のなさそうなアイテム。



【ヒノキのぼう】


ヨッホイ特製のヒノキのぼう。どんな相手に対しても必ず1ダメージは入る。攻撃がミスにならない。



【mark2】


こちらも同様に1ダメージは必ず入る。ヒノキのぼうと組み合わせる事でいくつかの技が使用可能になる。



【カズキの装備】


武器 ヒノキのぼう 盾 mark2

防具 漆黒のコート アクセ 祈りの指輪


ヒノキのぼうとmark2を腰からぶら下げるスタイル。


漆黒のコートは名前だけで、特に意味はない。

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