第15話『魔王リップ』
「それなら、カズキくんがなんとかしてくれるわよ」
魔王様が面白い冗談を言っている。まったく、俺の上司は高度なギャグまで出来てしまうお方だ。
「せやけど……」と俺の方を見ながら、心配そうな表情をしてくださる姫様の方がよほど良心的だ。
ヤマタノオロチなんかに、勝てるわけがない。
そんな俺の考えを他所に、魔王様が小さな子供に話しかけるような優しい口調でお願いしてくる。
「大丈夫よ、あなたなら大丈夫。それにオロチは子供が好きだから」
「何言ってるんですか! 無理ですよ!」
「わたしだとオロチが逃げちゃうのよ。だからお願い」
「ですが……」
「帰って来ない子供を連れ戻すにはオロチの祠の場所を特定する必要があるのよ」
確かに体の小さくなった子供姿の俺なら、オロチに怪しまれずに祠へ入れる可能性があるだろう。
(しかし、どう考えたって無謀だ。魔王様の助けになるのは分かるが、俺には無理だろう……)
「それとも、レヴィアママの所に帰りたくなっちゃった?」
「やります」
「カズくん、かっこいい〜!」
*
魔王様に言われた通り、街はずれの荒野を闊歩する。魔王様の口車に乗せられた感は否めないが……
荒野を見渡すと砂埃が酷いが、さすがは「IT都市ジパング」の周辺と言うべきだろうか。こんな街外れでもWi-Fiが繋がる。
俺のスマホを通して、魔王様がオロチの祠の位置を特定次第、移動魔法で突入するそうだ。
移動魔法は1度行った事のある場所にしか移動出来ないらしく、問題はどうやって知らないオロチの祠に移動するかだが……
「大丈夫よ」
「どうしてですか?」
「あなたを目印に移動するわ」
意味が分からなく目を丸くしていると、魔王様のくちびるが俺のほっぺに軽く触れる。
「ふふっ、これが目印よ」
ーー回想終わり。
魔王様の、くちびるが触れた頬っぺたを撫でながら俺は荒野を進む。
祠の位置を突き止めたら、魔王様に連絡するという運びだ。
魔王様が常に見てくれているとはいえ「ヤマタノオロチ」と言う名前には恐怖感を覚える。
砂埃の中、目を凝らすと前から小太りの男性がこちらに歩みよってくるのが見えた。
男性は俺に気が付いたのか、小走りにこちらに駆け寄って来る。
「お? 坊や迷子かいな?」
「いえ、そういう訳では……」
「せやけど、この辺りはモンスターも出るんや。せや! うちがこの近くなんや! そこで両親が迎えにくるのを待ったらえぇ!」
「ですが……」
「気にしぃ! 気にしぃ! 子供は遠慮するもんやないで! ほな、行こか!」
そう言うと、男性は俺の手を引きならが歩き出してしまった。仕方ないので、俺も男性と一緒に歩く。
しかし、こんなオロチの出現するポイントに家があるなんて大丈夫なのか?見た所おじさんは強そうには見えない。
「あのおじさん」
「なんや〜? 腹でも減ったんか?」
「この辺に家があるってモンスターとは平気なんですか?」
「おうよ、おじさんはこう見えて強いんやでー!」
(心配だ)
*
「ほな、ここがおじさんの家やで」
しばらく歩いて、荒野を抜けた場所でおじさんは立ち止まる。おじさんは指を指しており、俺はそちらの方角に視線を移す。見た所、洞窟のようだ。
なるほど、この中に家があればオロチには襲われないって訳なのだろう。
おじさんに促され中に入ると、いくつかの部屋があった。洞窟を改造して作られた家のようで、中はかなりのスペースがある。1つ1つの扉も大きめに作られているようだ。
おじさんはというと……
「今お菓子を持ってくるで! まっときや〜」
と言い残し、どこかへと消えてしまった。
(仕方ない、事情を話し帰してもらうとするか)
そう考えながら俺は指定された部屋の扉を開き、中に入ると……
沢山の子供達がいた。
To Be Continued
【登場人物!】
【小春】
15歳。ジパングのはんなり姫。子供が好き! ブラのサイズはD65。
【おじさん】
おじさん。お腹が出てる。その腹に詰まっているものとは……
【次回予告】
ヤマタノオロチがあらわれた! ▼
次回、第16話『オロチキッズ』