第13話『デコシール』
「…………固有……を……ったって……と?」
「……い、お……らく」
話し声が聞こえる。この声は魔王様と……レヴィアさん? 彼女は無事なのだろうか?
「あ、目が覚めたようね」
「魔王さ……あれ?」
自分の喉を振動させる音に違和感を覚える。
それに気が付いたのか、どこからか魔王様がコンパクトミラーを渡してくれた。ベージュの花柄だ。可愛い。
そこに映っていたのは……
「なんじゃこれぇぇええええ!?」
カズキは からだが ちぢんでしまった! ▼
話によると、魔王様が戻った時にはドラゴンの姿はなく、レヴィアさんが俺を抱えて倒れていたそうだ。
曖昧な記憶の中で必死にドラゴンにヒノキのぼうを叩き付けた光景を思い出す。それにしても……。
「なんで小さくなってるんですかね?」
「さぁ?」
「こっちでは、よくあることなんですか?」
「事例は無いわね」
もう一度鏡を見る。年齢は7〜9歳程度だろうか……。それに身体が重い。起き上がろうとするが無理なようだ。
そういえばレヴィアさんの声がした覚えがある。彼女の事を聞かなくては……
「あのレヴィアさんは無事なのですか?」
「回復魔法をかけたからもう大丈夫よ。それと……」
「それと?」
「あなたが枕にしているのがレヴィアよ」
上を見上げると、2つの大きな膨らみが見える。それがレヴィアさんの胸だと分かるのには数秒の時間が必要であった。
頭の後ろに当たる包み込むような柔らかな感触と、心地良い彼女の優しい香りが、俺の気持ちを落ち着かせる。
どうやらレヴィアさんに、膝枕をされているようであった。
「……おはようございます。カズキさん」
「あの、あの……すいません。起き上がれなくて」
「構いませんよ? わたしが好きでしているのですから」
改めて周りや自らの状況を確認する。場所は、医療室のようだ。
……といっても大体、回復魔法でなんとかなってしまうので、医療器具のようなものは置いていない。
自分の状態を確認すると……
なんと カズキは こどもふくを そうびしていた! ▼
「わたしが買って来たのよ? ふふっ、似合っているわよカズくん♪」
「本当によくお似合いですよ。カズくんっ」
*
あれから3日ほど立ち、歩いて出歩けるようになったはいいが、まだ縮んだままだ。
レヴィアさんが30分に1回は俺の様子を伺いに来ては……
「ご飯は1人で食べられますか?」
「お着替えは出来ますか?」
「夜は1人で眠れますか?」
「お風呂一緒に入りましょうね♪」
……と、いった感じだ。子供ではないのだから。
お風呂といえば、この魔王城には従業員用の温泉施設がある。
もちろん部屋にもお風呂はあるが、せっかく広いお風呂があるのだから俺はそっちを利用している。
さすがにレヴィアさんと一緒に入るわけには行かないので、コソコソと1人で行った時に、緑のスタッフと鉢合わせした。
モンスターがあらわれた! ▼
「よう、新入り! はっ!本当に縮んでやがる! ははははっ」
「お前、無事だったのか」
モンスターは「いいや」と手をヒラヒラとこちらに見せる。その手にはマニキュアが塗ってあった。
「神様にやられちまったのよ」
「復活したのか」
「あぁ。お! そうだドラゴンの奴もいたぜ! お前が倒したんだってな!」
「あまり覚えていないが……」
「謙遜しなさんな。あのドラゴンが『気ガ付イタラココ二イタ』とか抜かしてやがったぜ」
「ふっ、ドラゴンの真似か? あんまり似てないぞ」
「ドラゴンのやつ復活してくれるような奴がいないから、しばらくは神様のところだってよ! 鱗にデコシール貼られてたぞ!」
「それは、シュールだな」
「しかし、お前があのドラゴンを倒しちまうなんてなぁ……もう新入りなんて呼べないな!」
(そういえば、こいつの名前を聞いていなかったな……)
「お前、名前はあるのか?」
「俺? 俺か? 俺はゴブリンのヨッホイだ!」
「ぷっ……なかなかハイカラな名前だな」
「お前だって、カズくんじゃねーか!」
そう言い返すヨッホイと、俺はお互いに笑っていた。
セーブしますか? ▼
▶︎はい
いいえ
▷はい
いいえ
セーブがかんりょうしました! ▼
「あ、あっちゃん? うんわたし」
「……そうね。まさかドラゴンが襲ってくるなんて。迂闊だったわ」
「……えぇ、そこにいるんでしょ? ちゃんと懲らしめといてよ?」
「それと……うん、彼の事なんだけど……うん」
「やっぱり、ジパングに行くしかないわね」
〜登場キャラ〜
【ヨッホイ】
職業、ゴブリン→魔王様の部下。
カズキの同僚で、武器はヒノキのぼうだ! ダンジョン担当だ!
必殺技はヒノキの棒を振り回す、ゴブリン・バースト・ストリームだ!
【ドラゴン】
職業、四天王。
戦うのが好き! 前の魔王様の頃から四天王。現在の魔王様のやり方にフラストレーションを溜めていた。
実は意外な一面がある。
「次回ハ番外編トナルゾ」
「俺の名前ダサくねぇか!?」
「作者ノセンスダ」




