表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/160

第102話『納豆モーニング』

「––––でね〜、レヴィったらね〜」


「レヴィアさんは、いつも可愛いですねー」


 おはよう、カズキだ。現在、リリィさんと朝食を食べるために、世間話をしながら社員食堂に向かってる最中だ。

 しかし、リリィさんは途中で「先に洗濯物干してきちゃいますねっ」と離脱し、俺は1人寂しく食堂の扉を開く。

 券売機の前に行くと、魔王様が真剣な表情で朝食を選んでいた。


「おはようございます、魔王様」


「あら、カズキくん。早いわね」


「いつもこんなものですよ」


 挨拶を済ませ、券売機から食券を買い、それをカウンターに出した。


「カズキくん、今日は納豆なの?」


「イシス女王が毎日食べているそうなので」


 かるーい世間話をしながら、お盆の載せられた朝食を受け取り、席を探す。

 すると、レヴィアさんと目が合い、隣も空いていたため、そこを指差し、俺と魔王様はレヴィアさんの正面に座った。


「おはようござます、カズキさん♪」


「ちょっと、レヴィア、わたしは〜?」


「あっ、魔王様も、おはようござますっ」


「もしかして、レヴィア…………髪の毛切った?」


「はいっ、どうでしょうか?」


 2人の朝からのほほ〜んとした会話を聞き流しながら、俺は納豆を混ぜる。

 醤油を入れる前に100回混ぜ、醤油を入れてから101回混ぜると美味しいと、イシス女王が言っていた。


(いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお––––)


 納豆を混ぜながら2人の会話に耳を傾ける。話はいつのまにか、美味しいココアの作り方になっていた。


「それでですね、豆乳を入れてからしばらく煮込むと美味しいんですよ♪」


「なるほどねぇ、でも、わたしはチョコを混ぜるのも好きよ」


 2人のココアトークを他所に、俺は100回かき混ぜた納豆に、醤油を加え、再びカウントを再開する。


(いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお––––)


 しかし、ここで思わぬ邪魔が入る。


「納豆はダイエットにも、効果があるそうですよ♪」


 レヴィアさんが、魔王様の食い付いて来そうな話題を提示してしまった。

 案の定、魔王様は目を輝かせる。


「カズキくん、その納豆……」


「はいはい、半分だけですよ」


 魔王様は1度言い出したら意外としぶとい。ここは素直に納豆を分けるのが得策だろう。別に、あげるのが嫌なわけでもないしな。

 しかし、魔王様は自身お皿を指差した。


「やっぱり止めるわ。わたし、今日カレーなのを忘れていたわ」


「知らないんですか、納豆カレー」


「あっ、それわたしも知ってますよ、キムチとか、ゴーヤも入れるとか」


 やたらとゲテモノ臭がするが、お料理に詳しいレヴィアさんが言うのだから、結構イケるのだろう。

 ゲテモノ料理はさておき、魔王様に提案をしてみる。


「ご飯の白いところに、少しだけ納豆を乗せたらいいじゃないですか」


「そうね、そうするわ」


 魔王様に納豆を手渡し、カレーをぼんやりと眺める。


「そもそも、朝からカレーなんてどうしたんですか?」


「知らないの? 朝カレーダイエット」


「レヴィアさん知ってますか?」


 レヴィアさんは「聞いた事があります」と煮物を箸でつまむ。

 本日のレヴィアさんの朝食はどうやら、和食のようだ。


「レヴィアさんは和食なんですね」


「朝は油っこいものはちょっと……」


「そこのラーメンバカに、その話は理解してもらえないわよ」


 納豆を差し出しながら、俺をバカにする魔王様。

 俺は納豆のパックを受け取りながら、反論する。


「何言ってるんですか、脂の膜でこう、美味さをですね、閉じ込めるんですよ」


「閉じ込めてるのも油でしょ」


 素っ気なく対応し、納豆と白米を頬張る魔王様。

 俺も半分になった納豆をご飯にかけて、すする。


 この国の納豆は美味い。


 俺が納豆に和の心を感じていると、魔王様が「ところで」と話を切り出す。


「今日、午後から会議あるけど……」


「会議がどうしたんですか?」


「あ、ううん。長引きそうだから、お昼からやろうと思って」


「議題は何でしたっけ?」


「『ヒノキのぼうに継ぐ弱小武器』よ」


「そんなの、ヨッホイに決めさせたらいいじゃないですか」


「ダメよ、『丸めた新聞紙』派と、『折り紙手裏剣』派で意見が割れてるんだから」


「ちなみに魔王様は?」


「わたしは『掃除機の先端』」


「それ、最初にボツになったやつじゃないですか」


 魔王様は「うるさいわね」とウーロン茶を飲む。

 レヴィアさんは「あれっ、でもお昼からって事は……」と魔王様の方に向き直った。


「あぁ、そうね、各自昼食は会議室に持参して」


「わたし今日のお昼は、リリィさんと……」


「ランチのお約束?」


「はい……」


「なら、出なくてもいいわよ。代わりにカズキくんをコキ使うから」


 いつもコキ使われてる気はするが、何か言うと、さらにとばっちりを食らいそうなので、黙っておこう。

 しかし、申し訳無さそうな表情をするレヴィアさん。


「そんなっ、悪いですよ、わたしだけなんてっ」


「いいのよ、急な変更だったし」


 レヴィアさんには優しい魔王様。だが、レヴィアさんも納得の行かない表情だ。

 俺は納豆の付いた箸を1度味噌汁に付け、ネバネバを取ろうと思ったが、その箸を見て妙案を思いついた。


「…………『割り箸でっぽう』ってどうですか?」


「いかにも弱そう! 採用!」


 こうしてヒノキのぼうに次ぐ最弱武器は『割り箸でっぽう』に決まり、レヴィアさんはリリィさんと楽しくランチタイムを過ごしたらしい。

 そして、俺は…………


「カズキくんが言い出しっぺなんだから、『割り箸でっぽう』は、カズキくんがデザインしなさいね」


「…………はーい」


 コキ使われていた。




セーブしますか? ▼


▶︎はい

 いいえ


▷はい

 いいえ


セーブがかんりょうしました! ▼


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ