表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/160

第83話『ラスボス温泉』


「ラスボスは、早めに登場させるべきだと思うのよね」


 魔王様が、ラスボスの癖にラスボスを語っている。現在魔王城オフィスにて、デスクワーク中だ。

 一般的に、小説やゲームなどでラスボスを早めに登場させることで得られる効果は、主人公との対立を上手く伝えたり、ラスボスに愛着を持たせることが可能な点である。場合によっては、主人公より人気のあるラスボスなんてのも珍しくない。

 魔王様を、ラスボスと位置付けている我々の場合は、勇者側に対して、以前マリアの城で行ったようなデモンストレーションを指すのだろうか。

 あのデモンストレーションは非常にウケが良く、魔王城全体の好感度アップにも繋がっている。

 そういう意味では、ラスボスの早期登場は悪くないのかもしれない。


「魔王様、またデモンストレーションやるんですか?」


「違うわよ」


「じゃあ、何ですか?」


「普通にラスボスについて話したいだけよ、ラスボスくん」


 ラスボスくん? と首を傾げ悩んでいると魔王様が「あなたよラスボスくん」と俺を指差してきた。


「俺、ラスボスだったの!?」


「わたしの後を継いで、魔王になり、世界制服計画を進めるつもりでしょ?」


「しませんよ! それに今の征服じゃなくて、ブレザーや、セーラー服の制服って意味ですよねぇ!?」


「でも、わたしの代理の魔王は、一応カズキくんになってるのよね」


「初耳!」


「初めて言ったもの」


「そりゃ、初耳だわ!」


 普通そういうのはレヴィアさんか、あとは金銭的な面で小春ちゃんとかだと思っていた。

 そんなレヴィアさんと小春ちゃんも、俺の魔王代理には賛成なようであり、それぞれ意見を述べてきた。


「カズキさんは、勇者様を超える戦闘力がありますし……それにイルカさんのご飯も、毎日忘れていませんので良いと思います♪」


「イルカさんのご飯は関係ないですよね!」


 レヴィアさんに続き、小春ちゃんも頷きならがら同意する。


「カズキはんは、宵闇の魔王として活躍しとるさかい、うちも問題あらへんと思いやす」


「してない、全然してない」


 否定していると、魔王様が俺に資料を見せながら、またまた俺の知らない情報を口にする。


「株主の同意も得られているわよ」


「俺たち株式会社だったの!?」


「ちなみに株主は、こはるんと、イシぽよと、あっちゃん」


「身内経営じゃないですか!」


「年間予算は9999がいGよ」


「垓なんて、単位使う人初めて聞きましたよ!」


 ちなみに垓は京の上の単位である、下から順に一、十、百、千、万、億、兆、京、垓である。意味不明である。

 要するに無限に近い予算があるということなのだろう。

 これまで色々な街や、文化、風習に触れたが、どの街の人々も幸せそうに暮らしており、貧困や食料難などとは無縁のようであった。まさに平和である。

 そして、その平和を築いたのが目の前の魔王様だというのもなんとも奇妙な話だ。

 だが、もし……もし、上に立つ人物が魔王様ではなく、他の人物だったらと想像すると怖くなってしまう。

 魔王様の圧倒的な強さや、金銭力、何だかんだ言って皆を惹きつけるカリスマ性。それらがあって、現状のバランスが成り立っているのは事実だ。俺なんかには到底無理な話だ。


「魔王様、ずっと魔王様でいてくださいね」


「嫌よ」


「何でですか! やってくださいよ!」


「ま〜ちゃん、つかれたー、カズキくん、まおーかわって〜」


「急に子供みたいな事、言わないでくださいよ!」


 勿論そんな事は冗談だと分かっており、特に追求はしない。俺も長い間この魔王城で、魔王様と一緒に働いてきた。

 言ってはなんだが、魔王様の事は大体分かる。魔王なのに、結構体重を気にしていたり、異世界映えとか言って写真写りを気にしていたり……。


(なんか、普通の人みたい)


「いま、なんか失礼なこと考えてたでしょ?」


「いいえ、イシス女王の事を考えておりました!」


「もっと悪いわよ!」


 何とか言い逃れは出来たようだ。しかし、考えたくはないが、もしも魔王様に何かあった場合は本当に俺が魔王の職に就くのだろうか?

 戦闘もそうだが、社員への接し方、企画やイベント、その他色々……俺には難しい業務ばかりだ。

 そういえば、魔王様はいつもこのオフィスにいる。勿論仕事が休みの日もあるが、風邪を引いたりなど、体調を崩す事もない。やはり、お体も強いのだろうか……


「魔王様って、風邪とか引かないんですか?」


「引くわけないでしょ」


「やっぱりね」


「あなたも引かないじゃない」


「こないだ引きましたよ?」


「どうせ、服も着ないで寝てたんでしょ」


「……ま、まぁ、そんな所です」


「でも安心して、もう絶対に風邪なんか引かないわ」


「なぜですか?」


「空気清浄機を買ったわ!」


「…………そうですか」


「これで花粉症対策もバッチリよ!」


「だれが花粉症なんですか?」


「ヨッホイ」


「意外な人物だった!?」


 空気清浄機と花粉症はともかく、魔王様はこのように従業員のちょっとした困り事にも対応してくださる。

 それに、毎回きちんとした食事、規則正しい生活や、睡眠。全てが仕事の効率を最大限まで発揮出来るように配慮されている。


(まぁ、マリアみたいな一部例外はいるけども……。今日も居ないし)


 ねぼすけマリアのデスクを何となく眺めていると、魔王様が「そうそう」と嬉しい情報を教えてくれた。


「近々魔王城温泉が改装予定よ」


「やったぜ!」


「イシぽよの所で色々見て来たおかげで勉強になったわ」


「どうな風に変わるんですか?」


「まずアメニティの種類を増やすわ」


「シャンプーとかですか?」


「そうね、シャンプーは複数の種類を用意するつもりよ」


「俺は今のイシス女王と同じシャンプーでも、満足ですが……」


「確かに、イシぽよのシャンプーは素晴らしいわ。でも、髪の状態に合わせて複数のシャンプーを用意すべきだと思うの」


「ダメージケアーとかですか?」


「そんな感じね、匂いの好みもあると思うしね」


 その案に対してレヴィアさんが遠慮がちに手を上げる。


「それなら、その……」


「何かしら?」


「わたし、石鹸のような優しい香りのものが……」


「いいわよ。そうね……レヴィア、あなたが選んでちょうだい」


「いいんですか?」


「もちろん、いいわよ」


 魔王様の返答に対し、嬉しそうにパソコンでシャンプーを検索し始めるレヴィアさん。魔王様はそんなレヴィアさんを笑って見つめながら、話を続ける。


「それと牛乳あるでしょ」


「お風呂上がりはやっぱり冷たい牛乳ですよね」


「コーヒー牛乳も追加よ」


「なにぃ––––––––––––!?」


「もちろんフルーツ牛乳もいいわよ」


「うち、迷ってまう〜!」


 小春ちゃんが慌てた様子で、とても喜んでいた。気持ちは分かるぞ! 俺も迷ってしまいそうだ!

 魔王様は俺と小春ちゃんを交互に見て満足気に微笑む。


「魔王様、他にもあるんですか!?」


「あとは、ミストサウナを付けるわ」


「おぉ! それもいいですね!」


「汗がいっぱい出るし、ダイエット効果もあるそうよ!」


「……………………そ、それはすごいですねー」


 相変わらず大きな胸を得意気に張る魔王様。

 俺たちのラスボスこと魔王様は、相変わらずダイエットにご執着なご様子だ。

 たが、ダイエットに励む魔王様はある意味魅力的なラスボスなのかもしれない。そう思う今日この頃であった。



セーブしますか? ▼


▶︎はい

 いいえ


▷はい

 いいえ


セーブがかんりょうしました! ▼




〜登場人物!〜


【カズキ】


シャンプーはイシス女王と同じもの。お風呂上がりには、やっぱり冷たい牛乳。



【魔王様】


シャンプーはローズ系の香りが好み。お風呂上がりは豆乳。(ダイエット効果があるため)



【レヴィアさん】


シャンプーは石鹸の匂いのものが好み。お風呂上がりはミネラルウォーター。



【小春ちゃん】


シャンプーは柑橘系の香りが好き。お風呂上がりは牛乳→コーヒー牛乳→牛乳→フルーツ牛乳の順番でローテンションしているらしい。


【マリア】


お風呂は嫌いではないが、髪の毛を乾かすのがめんどくさいご様子。

シャンプーはあるものを使う。お風呂上がりはコーラ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ