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第9話『ギャル神様』



「ここは……俺は確か吹き飛ばされて」


「あ、目が覚めた? みたいなっ」


 どうやら眠っていたようだ。目をこすりながら、あたりを見渡すと、可愛い小物、コスメ、観葉植物、ぬいぐるみなどが置かれた「THE 女の子」とでも言うべき、ピンクと白を基調とした部屋であった。

 そして顔を覗き込む女性がいる。現実世界に戻ったのだろうか?


「……あなたは?」


「あーし? あーしはねぇ〜この世界を担当する神だよ〜! みたいなっ」


 こんなきゃぴきゃぴとした神様がいるはずがない、おそらく頭を強く打ったのだろう。

 女性は俺の事を興味深く観察しながら「ニコニコ」とご機嫌なご様子だ。

 しかし、どう考えたって彼女が神様だなんて、ジョークとしか思えない。


「冗談なら辞めてもらえますか?」


「ほんとだよ〜! 死因はねぇ……ありゃ、高い所から落ちちゃったか〜。でも大丈夫、全部元どおり〜が教会の提供するサービスだから!」


「死因……ってことは、俺は」


「ご臨終〜みたいなっ」


「軽っ! 俺の死軽っ!」


 本当に俺は死んでしまったらしい。

 だが、以前レヴィアさんや、魔王様に「この世界で死んでしまったらどうなるのか?」というのを教えてもらっていたため、比較的落ち着いていた。


 それにしても、彼女が本当に神様だとするならば随分ファンシーな部屋だ。それに彼女も自身もだ。

 綺麗に彩られたネイル、グラテーションに染まるアッシュカラーの髪、長いまつ毛、まるで…………まるでギャルのお姉さんだ。

 ギャルのお姉さんは何かの資料をペラペラとめくりながら、きゃぴきゃぴと話し出した。


「保険は……お〜! 随分いいの入ってるね〜! あっ、ま〜ちゃんの所の子か〜!なっとく的な〜」


「ま〜ちゃんって魔王様の事ですか?」


 確か、魔王様の「異世界グラム」の名前がそんなだった覚えがある。


「そうそう、ま〜ちゃんとは昔同じパーティーで……っと噂をすれば、ま〜ちゃんからお電話だ〜! ……はいは〜い、ま〜ちゃんおひさ〜!」


「あ、うん来てるよ〜いま目の前〜代わる〜? うん、おっけー」


 そう言うと彼女は、やたらデコレーションの施されたスマホを渡してきた。「出ろ」ということだろう。


「もしもし、魔お––––」


『あなた何やってるのよ! あれだけ気を付けなさいって言ったのに!』


「あの、魔王様」


『なによ』


「彼女は本当に神様なんですか?」


『あっちゃんの事? そうよ』


 "あっちゃん"という単語に違和感を覚えるが、電話口の声が聞こえたのか「明美あけみで〜すよろ〜」と神様が自己紹介をしてくださった。

 神様にしては随分庶民的な名前である。だが、魔王様が冗談を言っているとも思えない。

 それに、どこか魔王様と同じような雰囲気を感じる。信じられないが本当に彼女が、神と言うべき存在なのだろう。


 考え込み黙っていると、魔王様が心配そうな声で訪ねてきた。


『レヴィアから聞いた報告だと、落ちたって、大丈夫?』


「大丈夫ですよ、特に外傷や、痛みなどもありません」


『そう……。それじゃあ、彼女に代わってもらえるかしら? 少し文句があるのよ』


 魔王様に言われた通りに、神様にスマホを手渡した。

 神様はそれを、ネイルで彩られた綺麗な手で受け取り、耳に当てる。


「は〜い、代わったよ〜 え〜金額? …………確かにこりゃ高すぎるねぇ〜うん、こっちのミスかも。ごめん、ごめんって……」


「おっけー、彼は今回が初回だしタダでいーよ。 うん、じゃあすぐに……はいは〜い、またね〜、あ! そう言えばさぁ––––」




 *





––––3時間後


「はい、うんそれじゃね〜」


 どうやら長電話が終わったようだ。どこの世界でも変わらない光景が、目の前で繰り広げられるのは奇妙だ。


「おまたせ〜、それじゃあ復活させるから……ほいっ」


「気分はどうかしら?」


 いきなり魔王様が、目の前に現れた。魔王様は俺の顔を伺いながら、心配そうな表情を浮かべている。辺りを見渡すと、見慣れた部屋が視界に入り、安堵する。ここは俺の部屋だ。


 復活するというのはこんな感じなのか。まるで、浅い睡眠をした様な感覚だ。

 体に痛みや、違和感などは一切ない。おまけに肩凝りが治っていた。


「魔王様、代金がタダって聞こえたのですが……」


「向こうの手違いで、300万Gを要求されたわ」


「14Gではなかったのですか?」


「そのくらいのはずだけども……そもそも保険適応で金額は1/10になっているはずよ」


「じゃあ、本来の額は3000万Gだったって事ですか?」


「本当にぼったくりよね。 冒険者や勇者が最近瀕死にならないから、代金を大幅に引き上げたっていうのに……」


 魔王様の説明によると冒険者や、勇者の瀕死になる回数が少なくなり、それにより教会側の回収出来る金額が減っているとのだった。

 教会とは、死者を復活させたりするサービスを提供している組織で、死亡者の数が減っている理由は、魔王様が極力全滅を避ける様なダンジョン構成にしているからだ。

 もちろん難易度の高いダンジョンもあるが、以前にくらべたら難易度は比較的に落ちているのだという。

 そこで、冒険者、勇者による復活呪文の廃止を行い、教会は復活呪文の独占化を行うことで利益を出しているとのことであった。


「復活呪文の廃止ってどうやったんですか?」


「あなたも会ったでしょう? 神様が教会以外の復活呪文を弾いちゃうのよ」


「あの神様が? その様な人には見えませんが……」


「わたしが頼んだのよ」


「魔王様が? なぜですか?」


 魔王様はその質問に「教会は、ちょっと運営が下手なのよ」と言いずらそうに答えた。

 魔王城の社長と言うべき人がこの魔王様なら、教会は神様が社長となるのだろう。

 確かに、そういうのが向いてる人とは思えない。それと……


「昔、同じパーティーだったんですか?」


「えぇ」


「職業は遊び人とかですか?」


「最後は確かそうだったわね」


「最後?」


「彼女は全ての職業を転職したのよ」


 しまいには遊び人から神様に転生なされたのだろうか。

 つまりここはクリア後の、"遊び尽くした後の世界"という表現がしっくりくる。

 平和になった世界で、人々が幸せになれるように頑張っているのが、魔王様や、あのギャルの神様なのだろう。


「神龍はどうだったかしら? 面白い話が聞けたんじゃないかしら?」


「とても、ユニークな感じでしたね。魔王様、あの漫画はこちらでは販売しないのですか?」


「今は時期を見て……って感じかしら。確かに、趣向品が増えるのは良いことなのだけれど……」


「どうして、ダメなんですか?」


「将来的には販売する予定なのだけれども、それによって勇者や、冒険者が、家で漫画ばかり読んでしまうと困るのよ」


「現にあのジャージ姫はそうですもんね」


「それに、こちらの社員も少し困った状態になるわ」


「勇者が来ないと、ダンジョン担当のモンスターは暇ですもんね……」


「えぇ、モンスター各々にあった希望を聞いてはいるんだけどね。やっぱり、ダンジョン希望が多いのよね」


「今までやっていたことですものね」


「それに、そっちの方が経済も上手く回るしね」


 少し真面目な表情で話す魔王様。

 確かに、全てのモンスターが新龍の様に漫画を描けるわけではない。

 モンスターそれぞれに、やりたい事があるのだろう。

 そして、ダンジョンで待ち構えるのが希望のモンスターが大多数だ。

 ダンジョンでモンスターが待ち、それを勇者が倒す。

 そして、Gを落とし、勇者がそれを拾い、薬草を買う。

 こうすれば、経済が上手く回るという仕組みだ。


 やはり、魔王と勇者という構図が世界が上手行くためのルールなのだろう。


「ふふっ、カズキくん。眉間にシワが寄ってるわよ?」


「ほ、本当ですか?」


 俺は少し難しい顔をしていたようで、魔王様が心配そうな表情で俺の顔を覗きこんできた。


「今日はもういいから、休みなさい」


「ですが……」


「休むのも仕事よ」


 そう言いながら微笑む、魔王様はとても優しい表情をしていた。



セーブしますか? ▼


▶︎はい

 いいえ



▷はい

 いいえ



セーブがかんりょうしました! ▼





〜登場キャラ!〜


明美あけみ


職業、遊び人→神様

ギャルのお姉さん。元勇者のパーティー。美容室は2週間に1回、ネイルケアは5日に1回。魔王様の異世界グラムに毎回イイネをしている。ブラのサイズはF70。



次回は番外編になります!

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