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第8話『神龍先生』

▶︎はじめから

 つづきから



はじめから

▷つづきから




「マリア様は王族ゆえにセーブが出来るそうですよ。それ故に復活の際には高額を請求されてしまうのですが……」


「そうですわよ! わたくしは、すごいんですわよ!」


 それほどでもない胸を張って「えっへん」と威張る姫様。少し上を向いたため、鼻筋の通った横顔がよく見える。

 セーブをしたところで、その理由をレヴィアさんに聞いてみる。


「それで、なんで神龍に会うのにセーブをする必要があるんですか? まさか……戦闘に?」


「その様な事はありませんが、本当に風が強くて飛ばされてしまうダンジョンなんです」


「飛ばされてると、どうなるんですか?」


「転落してしまったら、まず助かりません。なので、わたしの手を離さないでくださいね?」


「そんな手を繋いでるだけで、吹き飛んでしまうような風に耐えられるんですか?」


「防御魔法は身体が接触していた方が消費MPが少ないんですよ」


「防御魔法が必要なら、俺は行かなくても––––」


「早く行きなさい」


 抗議してみたが魔王様に諭され、行くことになってしまった。神龍はどのような龍なのだろうか?



 *





「着きましたよ」


 彼女の移動魔法により到着した場所は、神殿のような場所であり、空気の薄さからとても高い場所にあるのが分かる。下は見ない方が良さそうだ。

 そして、レヴィアさんの言った通り強い風が吹き荒れており、体が吹き飛ばされそうになる。彼女の防御魔法を通してでも、身体を突き刺すような風が進行を妨げる。


「なんで、こんなにも風が強いんですか!?」


「ダンジョンの難易度を上げるためだとか、神龍様がスイッチでコントロールしているそうですよ」


「電動なの!?」


 レヴィアさんに手を引かれながら、長い階段を上がる。

 ダンジョンのモンスター達はレヴィアさんを見ると「お疲れ様です、レヴィアさん!」と元気に挨拶をしていた。俺はとりあえず、軽く会釈をする。


 階段を上り切ると、少し開けた空間に出る。風が強く俺は下を向いていたのだが、しゃがれた声が聞こえ上を向いた。


しんりゅうが あらわれた! ▼


「ほう、よく来たのぅ……もうそんな時期じゃったか」


 神龍と呼ばれるその龍はその大きな巨体をうねらせ、舌を器用に使い漫画のページをめくっていた。


「なんでだよ!?」


「ほほ、若いの元気がえぇの……ふむっ」


 先ほどまで吹き荒れていた風が止み、曇っていた空が晴間を見せる。

 神龍は長い髭のようなものを「ひょろ、ひょろ」とされながらこちらに向き直り話し出す。


「今日は客人が来ると聞いてな、強に設定しておいたんじゃよ。おかげでほれ……マンガのページも読みたい部分をめくってもすぐに別のページになってしまうのじゃ……」


 確かに、神龍の言う通り風でマンガのページがペラペラとめくれていた。


「あの、どうして漫画を読んでいるのですか?」


「面白いからじゃよ、ほれ見てみぃ」


 そう言うと神龍は、器用にリモコンのスイッチを押して……


『魔法少女!マジカルみやびん!始まりますわよ〜!』


 Blu-rayレコーダの電源を入れた。


「なんでだよ!?」


「このテレビというものはページをめくらなくていいからのぉ……」


 神龍はそう言いながらテレビの画面を尻尾で指す。

 呆れていると、レヴィアさんが魔王城から持ってきたお中元を渡そうと神龍に近づく。


「神龍様つまらない物ですが、こちらお中元になります」


 神龍は「おぉ、いつもすまないのぉ」といいながら器用にレヴィアさんが持って来たお中元の"ハンバーガー"を頬張り始めた。


「だから、なんでだよ!?」


「若いの本当に元気がえぇ……ふむ。お主からは何やら懐かしい感じがするのぉ」


 人間界の事だろうか、神龍様は俺と同じような趣味をお持ちのようだ。


「……マジカル☆みやびんなら自分も見ていました。少女向けアニメなのに、戦闘シーンの派手さが魅力的ですよね」


「おぉ!若いの、語れるではないか……そうじゃ これをやろう」


 神龍から薄い本を手渡された。どこかで見た事があるような本だ。


(コミケにでも行って来たのだろうか、この神龍様は……)


「わしが書いたんじゃよ」


「はぁ––––––––––––!?」


「ここに辿り着いた勇者にはこの本を渡しておるのじゃ、この前のコミケでも完売したらしいのぉ」


「そのお金でお車を購入する事が出来ました」


 レヴィアの教えてくれた事に俺は驚き、思わず汗を拭う。


「あの車、この漫画の売り上げで買ったんですか?」


「えぇ、他にもパソコン、タブレットPCなども」


 以前、魔王様に給料を円に変えられないかと尋ねた時にGはかなりあるのだが、円は限られていると言っていた。

 どうやら現実世界の物は、神龍様の書いた漫画の売り上げによって購入されていたようだった。なるほど、お中元とはそういう事だったのか……。

 つまりは神龍の稼いだお金が、現実世界で使える通貨となっているようであった。


「どれ、わしはちょっと横にならせてもうかのぉ……」


 神龍様は大きな巨体を寝そべらせながら、横になる。しかし、尻尾で何かのリモコンを「ぽちっ」と押してしまったようである。

 その事を神龍様に伝えようとするが、突如突風が吹い俺の足は地面を離れ、体は宙に舞い上がった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


「カズキさん!? カズキさーん!! 大変魔王様に連絡しないと……」


「すまんのう、うっかりスイッチを押してしもうたわい」



カズキはしんでしまった!▼




………



……







「僧侶さんこの人の復活のお願い出来るかしら?」


「復活場所はいかがなされますか?」


「魔王城でお願いするわ、セーブもしてあるわよ」


「かしこまりました、では代金の300万Gをお支払いください」





To Be Continued







セーブをすると話数が切り替わるのは作者の遊び心です。とくに深い意味はありません!

開幕のつづきからも演出になります、はじめからを選択する事はありません。




〜登場キャラ!〜



【神龍】


職業、神龍と漫画家。

前魔王様の代から神龍を務める。アニメと漫画が大好き。

好物はハンバーガー! 魔王様の異世界グラムに毎回イイネを押してあげている。





【次回予告】



「……あなたは?」


「あーし? あーしはねぇ〜この世界を担当する神だよ〜! みたいなっ」



次回、第9話『ギャル神様』

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