ジェイとアイ
ラブサーフィン
ほとんど有り得ないと思われていた真実の愛を知ったふたりには、この世でいちばん忌わしい理である死でさえ、ふたりのために、あったのではと思われるのであった。
再会
『###ジェイ!』
夜中、暗い部屋の中で寝ていた時、自分のむかしの名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
目が覚めて、周りを見回したが、誰もいない。
『###ジェイ!』
頭の中に聞こえてきている。そこで誰かわかった。
『###アイか!?』
ジェイは 、口を開かず、こころの中で叫んでいた。
『###やっとつながったわね。そうアイよ。わたしよ。』
『###久しぶりね。』
###の後は、前の世での言葉であり、『』は、こころで話している。
そして数分間の沈黙がながれた。
『###ということは、ふたりとも、この能力を持って来たということか!それにしても、こちらに来てはじめて前の世界の言葉を聞いたよ。しかし、こちらの言葉を使う事にしよう。前の言葉を使うと、この世の今から離れそうだ。』
『ところで、アイは、女だよね。』
『そう、願い通り女よ。ジェイはおとこ?』
『ああ、男だ。アイの声を聞きたいな。ケイタイで話そう。番号を教えてくれ。』
直ぐに、ジェイはアイに連絡を取った。アイは直ぐにでて、弾んだ声で話した。
「ジェイ、この世で、は・じ・め・ま・し・て!」
「あ、あ、はじめまして。いい声してるね。こっちはどうだい?」
「ええ、すごくいい声よ。前よりいいかも。前が悪いって意味じゃないわよ。やさしい声だわ。」
「前の世界では、戦いばかりだったからね。じゃ、後は直接、会ってから話そうか。顔も見たいし、前と違うだろ?」
「うーん、あまり期待しないでね。」
「こっちもそうだよ。心配するなよ。アイはアイだ。愛してる。」
「わたしも愛してる。・・・そうだ、いま、写真送る。?会って、びっくりするより、会う前に分かってたほうが良くない?」
「いや、はじめて逢って解るほうが会う楽しみが増えると思うな。」
「合言葉を決めよう。ぼくがアイと言うから、アイはジェイということ。これでいいかな。」
渋谷のラーニンという喫茶店であうこととした。
「分かったわ。凄い楽しみ!。あさって朝12時までということね。遅くなっても待ってて。」
喫茶 ラーニン
ラーニンは、5階建のビルの4階にあった。アイは外が見えるエレベーターで行き、中を見回したが、お客はカップルだけだったので、窓際の空いてる席に座ることにした。
精一杯の化粧をして、いちばん気に入っている服を着て、一生で一番、最高の時を迎える準備はできているアイであった。
エレベーターが空いた音がした。さっぱりしたスーツを着た普通のサラリーマン風の若者であった。
アイは彼だと確信した。絶対に彼だと。
彼は,アイの座っている席へと真っ直ぐ進み、アイの目を見ながら、静かにアイの前のイスに座った。
しばらく、ふたりは、話をしないで、互いを見つめあい、この空間は時間が止まっているような雰囲気であった。
『久しぶり、アイ』
『ひさしぶり、ジェイ』
ふたりは、じっと見つめあったままであった。
そしてジェイは、テーブルの上に手を置き、人さし指と中指だけを伸ばして、2をあらわした。
それを見たアイは声を発した。
「わたしは、仕事休んで来たけど、トイはこれから大丈夫?」
すると、ラフな格好のウエイターらしき男が横に来ていて、
「マスター、何にしますか?」とジェイの方を見て尋ねた。
「エミ、ここはぼくの店なんだ。ああ、ナポリタンとグリーンナポリを頼む。」
「了解しました。マスター。」と言って、厨房の方へ入っていった。
「そう、ここが職場なんだ。じゃ大丈夫ね。」
そして、まあ他愛ない話をし始めた。
この世界での名前は、ジェイがトイ、アイがエミであった。
そしてテーブルの2の意味はこころを二つにして話していこうということである。
『うーん、ジェイ、さっぱりしてるわね。前はひげがあって少しむさ苦しかった。でも今より凛々しかったよね。わたしは普通の女の子でしょ。』
『自分の顔は、気に入ってる。アイは普通になったな。最後の時の悲しげな顔が忘れられない。
でも、アイはアイだ。何も変わってない。顔が変わっても同じだ。』
『わたしたち、この世界では、すごいわね。こころが二つ自然と使えて、こころで人を気にせず、ふたりだけで話せる。最高!』
『ぼくは、いやおれは、今、悪いが最高の三つを使ってるんだ。本当に悪いが、アイにはできない心に入る技を、この前使ってしまった。この世での君を知りたくて、アイの心に入った。全てがわかったよ。こ店をやる意味も、これから起こるだろうことも。やらなければいけないことも。』
『心に入ったことは、別にいいわよ、今の状態では仕方ないわ。でも、ジェイはやっぱり頭いいわね。
わたしは1年近くも考えてた。ひとりでどうすればいいか。わかんなかった。前の世界で、ふたり一緒に殺されたんだから。』
『それに、おれを殺した者の最後の言葉が、頭から離れない。』
「このスパゲッティ最高ね。」
「韓国ドラマやろうか。1本を両方から食べていこう。」
ふたりはキスの状態となり、かなりの時間キスをしていた。
『アイ、感じてるかい。』
『キスもそうだけど、それより強い憎悪が近ずいているみたいね。』
『そう、君の前の彼氏だよ。ここはぼくに任せてくれ。アイは絶対に手を出さないでくれ。』
その時、階段を駆け上がってきた青いジャンパーの若い男が、キスをしていたふたりの前に現れた。