猫しお&こしょう
僕様達たくさんの兄弟は、雪と雨が混じって降っていた日に、「どーぶつびょーいん」の入口の前に、小さな箱にぎゅうぎゅうに入って置かれてたんだって。
ぎゅうぎゅうって、とっても温いんだよ。
時々、小さな箱の小さな隙間から、冷たい匂いがビューって頭や体を撫でてきて、体がちょびっとブルブルッてなっても、僕様や兄弟達が小さな箱の中で、もっともっと小さくぎゅうぎゅうしたらとってもとっても温かくなったんだよ。
どーぶつびょーいんで、俺君達兄弟を「もらってください」ってゆう紙をたくさん配ったり貼ったりしていたんだって。
たくさんのヒトが、俺君や兄弟達を抱き上げたり撫でたりしてくれたよ。
ヒトから一目散におへやの中を逃げ回っていた兄弟が、1番さいしょに、ヒトと一緒に居なくなって帰ってこなくなったよ。「おうち」に行ったんだって。よくわからないけど。
あ、また今日もヒトが来たよ。
「、、、引越しの時に引き出しから発掘した賞味期限13年前の荒挽き胡椒を思い出す色だなあ。」俺君を抱っこしたヒトがよくわからないこと言ったよ。
一緒にいたもうひとつのヒトも兄弟を抱っこしながら「ちょうどこの子は塩っぽい色してるね、、、いいね、ついでに名前も決まりだね。」とまたよくわからないことを言ったよ。
「おうちに帰ろうか。」ヒトが言ったよ。
俺君を抱っこしたまま、ヒトが「どあ」をパタンって鳴かせたよ。抱っこは、ぎゅうぎゅうしなくても温かかったから、兄弟達が見えなくなっても何だか平気だったよ。
うとうとと眠ってしまいそうになっていたら、兄弟の泣く声がきこえて、急に淋しくなってぱっちり目が開いたのに、すぐにまたうとうとしてそのまま眠っちゃったよ。温かいって眠いことだね。
「うん、帰ろうか。」ヒトが言ったよ。
もうひとつのヒトの後から少し遅れて、僕様を抱っこしてるヒトは、僕様を抱っこしたまま「どあ」をパタンって泣かせたよ!耳元で「どあ」が泣いてびっくりしたよ!兄弟達も見えなくなって、何だかとっても悲しくなったよ。僕様は「どあ」よりもたくさん泣いてしまったよ。抱っこは温かいけれど、ぎゅうぎゅうは出来ないんだね。
何日もしてから覚えたのだけど、僕様の名前は「しお」なんだって。
何日もしてから気がついたのだけど、俺君の事を「こしょう」って呼ぶから、きっとそれが名前だね。
そういえば、たまに飼い主様が「おうち」の「おだいどころ」で、「あ!しおこしょう買い忘れた!」ってまとめて名前を呼ぶんだよ。