エピローグ
「第二試合が終わりました。次の試合の選手の方、どうぞよろしくお願いします」
「あ、はい」
リディアが声を上げる。そしていよいよ私の出番か、と息を整えた。
「あ、それとリディアさんにはお届け物がありまして」
すると、案内係がリディアに水筒を一本手渡してきた。
「こちらでも確認いたしましたが、特に危険はなさそうなので、それに、あのエイダ様からの差し入れのようですからね。いや、それにしても驚きました。まさか――」
流石エイダは王都でも有名である。とは言え、一体なぜ水筒なんかを? と疑問に思うリディアであったが。
「ま、いっか――」
そう一言呟くと、会場に向けてトコトコと歩き始めた。
◇◆◇
「さぁ、ここからは注目の一戦! 皆さんお待たせいたしましたーーーー! 舞台の西に立つは、なんとあの伝説の大魔導師エイダ・メルクールの孫である、超絶キュートな魔法美少女リディア・メルクールーーーー!」
フレアによる、大げさな選手紹介によって会場がどよめき、そして一気に歓声が爆発した。
それに応えるように手を軽く振るリディアだが、表情は若干固い。
「あの馬鹿、なんて紹介の仕方をしているんだい」
「ハハッ、リディアも困ってるようだねぇ~」
苦笑中のリディアを眺めながらバレットが言った。
観客席からは、照れちゃってリディアちゃん可愛い~、などという女性の声も聞こえてくる。
老若男女問わず注目を浴びてしまっているのは、エイダという高名たる祖母を持ってしまったが故か。有名税と思って諦める他ないだろう。
そしてリディアの相手はあの酒場で会った白髪のスワン・ホワイトであった。彼女は風と雷の魔法の使い手であり、リディアは苦戦を強いられることとなる。
だが、ここでリディアが真の力を解放。物理魔術は不得意なリディアであったが精霊魔術に関してはエイダ譲りの才能を発揮。エイダから預かっていた水筒の水を使い、水精霊を巧みに操り勝利した。
一回戦最後の試合はラル・スケルが勝利。そして翌日は第二回戦へ突入。ここで風真はあの怪しい男、ラース・ブライトと対戦、奇妙な魔法を駆使する相手に面白くなってきた! と高揚感に包まれたところでなんとラースは自ら負けを宣言した。
納得がいかない風真であったが試合はそのまま進み、リディアはラル・スカルに敗北。
こうして決勝は暫くの休憩を挟んで風真とラルの対戦に決定。
だが、ここでバレットは既に敗戦したアグ・ディス、ラース・ブライト、スワン・ホワイト、ダイモス・スキヘッドの怪しい動きを察し、リディアと一緒に追跡する。
彼らはなんと王国でのテロを計画していた。地下水路に移動し特殊な魔法陣を発動させようという考え。
しかも途中で風真達が捕まえた筈の賊が王都に乱入し、奇妙な武器で暴れ始めパニックに。同時に魔法陣が発動、決勝を見に来ていた女王も含めて全員が会場に閉じ込められた上、魔力を持つものはラル・スカルを除き全員動きを封じられた。
一方市街ではエンジとチヨンが動き、王国守護団と協力し悪漢達の排除に回っていた。
水路でも巨漢のゼムがダイモスを下し、シンバルに後を任せ魔法陣発動前に動いていたフレアがアグを倒した。だが、一足遅く魔法陣が発動されたあとであった。
そしてバレットとリディアはラースとスワンを追い詰めるも、相手をしていたのが影であったことを知る。
一方会場ではラルが魔眼の力で女王を暗殺しようと動く、が風真がソレを止めた。なぜ動ける! と喚くラル。だが、風真には魔力の元となるマナそのものが通っていない。魔法が効かないのである。
しかも風真は別に王国を救おうとか女王を助けようなどとおもっていなかった。ただ純粋に決勝戦でラルを倒す、それだけを考えていた。
最終的に禁忌を行使し化物に落ちたラルであったが風真の風雷流奥義を受け敗北。女王の護衛であったシバの粋な勝利宣言によって風真の優勝が決定した。
テロを計画した主犯であるアグとラスは親子であり、本名はアグルとラゲルであった。顔も変えていたがふたりともかつての大戦で危険な人体実験を繰り返したということで指名手配を食らっていた戦犯者であった。しかしふたりはそれを逆恨みしダイモスらを引き入れてテロをくわだてた。
だがそれも風真とバレットの活躍で失敗に終わる。この活躍を認められ風真とバレットは王国から叙勲されることとなる。
そして――風真は宴の途中で城を抜け出し、あのラースと対峙する。だが、風真はラースには勝てなかった。
立ち去っていくその背中を見ながら、俺は更に強くなってテメェを倒すと誓う。
それから一ヶ月後、風真とバレットは王国の用意した船の前にいた。彼らは王国の英雄だが、風真もバレットも一つの国にとどまる気はなかった。
風真はより強者と出会う日を夢にて、バレットは元の世界に戻る方法を探すためにより大きな国へと旅立つのだ。そう大海原を越えて――二人の旅はまだまだこれからなのだから……。
終わり
サムガンはこれにて完結となります。どうもありがとうございましたm(_ _)m




