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第百四話 試合会場現る

今回はちょっと短いです

「いやいや、これは確かに明日の試合が楽しみだねぇ」


 言ってフレアは両手を広げた。

 すると風真は顔を眇めながら、そういやよ、と口にし。


「試合ってのは、結局どこでやるんだ?」


 そう尋ねた。これは風真だけでなく、リディアとエンジも気になるところである。


「うん? ここだよ」


 するとなんてことはないようにフレアが応えた。その返事に皆が目を丸くさせる。


「ここですか? え? でもさすがにここじゃ……」


 リディアが不可解といった表情でそう述べ、顎に手を添えた。


「ふふん。その答えは……今、わかると思うよ」


 フレアが広場の方へ目を向けた。何かを期待しているような表情で、そこに注目をしている。

 その表情に、何があるのか? と全員が彼の視線の先に顔を向けた。


「お待たせいたしました~!」


 誰かの声が辺りに響き渡る。マグノリア守団の団員だろうか、とバレットは興味深く開けられた広場の中心に着目する。


 すると、ゴゴゴゴッ、という地響きと共に突如地面が揺れた。


「何? 地震?」

とリディアが目を丸くさせる。確かにそう思えるほど揺れは中々に大きい。


「いや、どうやら違うようさぁ」


 それに対し、バレットがハットのブリムを押し上げながら応えた。


「何だこりゃ」

「おお! チヨン! 凄いぞ! これは凄い!」


 風真が目を見開き、エンジが興奮したようにチヨンの腕を引いた。

 その子供のようにはしゃぎつつ自分の腕を引くエンジの姿に、チヨンは両手を頬にあて顔を赤らめる。が、その視線はしっかり目の前の現象に向けられていた。


「驚いた~こんな仕掛けよく作ったわね」


 その光景にリディアもどこか呆けた感じに言う。

 一行の目の前では、広場の中心が少しずつ下がりながら回転していく様が繰り広げられていた。


 噴水が水の流れを止めていたのはこの為か、とバレットも一人納得する。


 そして大地を小刻みに震わし、重苦しい音を奏でながら、遂に噴水の姿も見えなくなり、その場には円状の大きな穴が出来上がった。

 そして再び大地が揺れを再開し、今度は出来上がったばかりの穴から少しづつ何かがせり上がっていく。


 それは白い壁に覆われたコロシアムであった。広場の多くを封鎖し、誰も立ち入れないようにしていた理由がこれなのだろうと一行にも知る事が出来た。


 それから暫くの間、少しずつ現出していく建造物の姿に、誰もが興奮を抑えきれないといった雰囲気であり、そして完全にコロシアムがその姿を人々の前に晒した瞬間には、大きな歓声さえも沸き起こった。


「全く、大した物だねぇ」


 バレットが簡単の声を漏らす。


「でもこのためにわざわざこの仕掛を作られたのですか?」


 リディアが問うと、フレアが笑いながら。


「いやいや違うよ。このコロシアム自体は、随分前に作られていたんだよ。テミス女王の前までは頻繁にこういった行事は執り行われていたみたいなんだけどねぇ。陛下に変わってからは暫く使ってなかったんだけど、無事起動してよかったよぉ」


「え? じゃあぶっつけ本番だったって事ですか?」


「そうそう――なんて言うのは冗談で、実際は魔力の流れを確かめたり、地下にある状態で中を確認したりはしてるんだけどねぇ」


 ですよねぇ、とリディアが笑う。


「まぁでも、これで試合会場も整ったってわけだな」


 風真が腕を組んでどこか楽しそうに口元を緩めた。


「俺も今からワクワクしてきたぞ! いやぁ早く試合してぇなぁ!」


 エンジが握りしめた拳を胸の前に持って行き、身体を震わせた。

 その姿をみながらバレットが笑い、そしてコロシアムを見た。


 そう、もうすぐ――もうすぐ彼らの戦いが始まろうとしているのだ。



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