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☀ イストリゲ~ム  作者: 雪*苺
第五週【 異変 】
70/156

異変2 飲食店

 

 克慈と立ち寄ったのは、ちょっとリッチな飲食店だ。


 

惠美

「克ちゃん、……お財布に優しい(安い)飲食店にしようよ。此処のお店は見るからに高そうだよ……」

 

克慈

「俺が出すからいいでしょ」

 

惠美

「返す側の私の事も考えてよ〜!」

 

克慈

「ほら、入るよ」

 

惠美

「……、は〜い……」


 

 拒否権の無い私は、克慈に言われ、渋々と店内に入った。

 

 店員さんに席へ案内される。

 

 道路が見える窓側だ。

 

 テーブルの上には三枚のメニューが置かれている。

 

 メニューを見て選んでいると、店員さんがお絞りと水の入ったコップを置いてくれた。

 

 今時珍しい温かいお絞りの封を切り、手にを取った克慈は、お絞りを広げて顔をふきふきしている。

 

 ……克慈は彼女の前でも同じ事をするのだろうか?

 

 ……う〜ん、しないかも知れない?

 

 異性と向き合っているのに、躊躇いもせずにお絞りで顔を拭く行為を堂々とする克慈は、やはり私を異性としてではなく妹だと思っているからだろうか?

 

 まぁ、別に私は何も言わないけどね。

 

 残念ながら(?)、私の周りにお絞りで顔を拭く異性は克慈しか居ない。

 

 勿論、同姓にだってお絞りで顔を拭く子は居りませんよ。

 

 お絞りで顔を拭く人が、私には物珍しかったりする。

 

 見ていて面白いから、スルーするんだ。

 

 面白いと感じたり、不快な思いがしないのは、相手が克慈だからだろうか?

 

 克慈がもし、善朋だったら私はどう感じていただろう……。


 

惠美

「克ちゃん、お絞りさ、もう一袋貰う?」

 

克慈

「なんで?」

 

惠美

「だって、お絞りって手拭き用じゃない? 顔拭いたお絞りで手を拭くの?」

 

克慈

「何時もそうだけど」

 

惠美

「……顔を拭くのと手を拭くのって分けた方が良くない?」

 

克慈

「必要ないよ」

 

惠美

「そうなの?」


 

 どうやら、もう一袋は要らないらしい。

 

 ……、手拭き用に出されるお絞りで顔を拭くのって、本当の所はどうなんだろう?

 

 衛生面的に大丈夫なのだろうか?

 

 店員さんに『手拭きお絞りで顔を拭いても衛生面的に大丈夫なんですか』って聞いてみたいけど、何か恥ずかしいや(////)

 

 まあ、いっか、私の顔じゃないんだし。

 

 うん、人の顔だもんね。

 

 気にしない、気にしない。

 

 別に私が言わなくとも、克慈の彼女が何か言うだろう。

 

 既に言われているかも知れない。

 

 ……お絞りで顔を拭いた人とキスするのって、どうなんだろう?

 

 克慈の彼女は、克慈がお絞りで顔を拭いても気にしないのだろうか?

 

 気にせずに克慈とキスが出来るのだろうか?

 

 寧ろ、お絞りで顔を拭く克慈の行為を好きだったりして、受け入れているかも知れない。

 

 ……心の広い彼女で良かったよね、克慈。

 

 私は……彼女である私の前で、さも当然の如く、当たり前にお絞りで顔を拭く彼氏は━━嫌だなぁ。

 

 私が居ない時に拭くのは構わないけど……。

 

 だって何か女性に対して失礼な行為じゃない?

 

 ふう……、私は心の狭い女なんだっちゃ。


 

克慈

「惠美、決まった?」

 

惠美

「うん、何が?」

 

克慈

「何にするか決めたの?」

 

惠美

「え、ああっ、メニュー? うん、決まってるよ(////)」


 

 いけない、いけない。

 

 お絞りの顔拭きについて考えてたら忘れてた!


 

克慈

「何にするの?」

 

惠美

「う〜んとね……」

 

克慈

「決めてなかったの?」

 

惠美

「そんな事ないよ(////)……あっ、これにする! とろろとチーズのオムライスグラタンの梅ソース」

 

克慈

「惠美は食いしん坊だね」

 

惠美

「そんな事ないよ! お腹空いてるから━━。克ちゃんは何にするの?」

 

克慈

「何だと思う?」

 

惠美

「知らないよ。なぞなぞみたいに言わないで!」


 

 メニューを聞きに来てくれた店員さんに、克慈がメニューを伝えてくれる。

 

 克慈はカレーライスを注文していた。

 

 そう言えば、カレーが好きって言ってたっけ。

 

 福神漬けがあれば幾らでも食べれるとか……。

 

 注文していた料理が運ばれて来た。

 

 克慈のカレーライスは、沢山のキノコが入ったキノコ尽くしのカレーライスらしい。


 

惠美

「やっぱりさ、お腹が空いた時はご飯がいいね。お米食べてるとホッとする」

 

克慈

「俺が米派だからでしょ」

 

惠美

「違うしっ! 然り気無く“俺が”とか言わないでよ。私の家族は元からお米好きなんです〜!」

 

克慈

「味も分からないのに?」

 

惠美

「しょうがないじゃん。お母さんの実家のお米しか食べてないもん。売ってるお米を食べる機会ないもん」

 

克慈

「オムライスのご飯の味、分かる?」

 

惠美

「……、分かりません〜。ご飯の味は分からないけど、美味しいよ♪」

 

克慈

「お米の味が分からないなんて、お祖父さんとお祖母さんが聞いたら落胆するだろうね」

 

惠美

「そんな事ないよ。お母さんもお米の味『分からない』って言ってるもん。お父さんは『美味しい』って言ってるけど、嘘か本当か分からないし」

 

克慈

「どうして?」

 

惠美

「だってさ、お母さんの実家から送られて来るからお米代はタダじゃん。タダで食べさせて貰ってるお米に『不味い』なんて言える? そんな事を言っちゃったら、二度とお米を貰えなくなっちゃうかも知れないじゃん? お母さんって、ああ見えて結構厄介な性格してるんだよ。下手な事を言って地雷踏んじゃった時なんて……。考えたくないよ」

 

克慈

「ふぅん、地雷ね……」

 

惠美

「そうだよ。お母さんのご機嫌損ねないように生活してるの」

 

克慈

「大変だね」

 

惠美

「笑いながら言わないでよ〜」

 

克慈

「賑やかで羨ましいよ。寂しくないでしょ」

 

惠美

「……あっ、……うん、そうだよね……。ごめんね……」


 

 そうだった。

 

 克慈はずっと鍵っ子だから、親と接する機会が無いに等しいの。

 

 私の家族みたいにガヤガヤ煩くないんだ。


 

克慈

「……出来る事なら俺も一緒に暮らしたいくらいだよ」

 

惠美

「……克ちゃん。……本当にごめんなさい……」

 

克慈

「いいよ。悳司さんの味方になりたいだけだからね」

 

惠美

「どういうこと?」

 

克慈

「女性二人に挟まれてさ、頭を抱えて苦労してるんじゃないかなって思うからかな」


惠美

「お父さんが?」

 

克慈

「惠美が美加さんと喧嘩してる時、悳司さんはどんな感じで居るか考えてみた事ないの?」

 

惠美

「……ない、かも……。だってお父さん、テレビ見てるし……。お風呂に入りに行ったり……って、何で家の話になってるの!」

 

克慈

「惠美は流され易いからね」

 

惠美

「もう〜っ、家の話は終わり! それより、明日は寺社に何しに行くの? やっぱりお祓い?」

 

克慈

「お祓いはしないって」

 

惠美

「じゃあ……あっ、先輩? この前、会えなかった先輩に?」

 

克慈

「そう言う事でいいよ」

 

惠美

「むぅ、何その言い方〜。気になるんですけど!」

 

克慈

「着いてからの楽しみでいいでしょ。帰るよ」


 

 夕食を終えると克慈は真っ直ぐレジに向かい、私の会計も済ませてくれた。


 

惠美

「あのっ、ありがと(////)」

 

克慈

「いいよ。俺がそうしたいからしただけ。たまにはいいでしょ? それに給料日に返してくれるんでしょ」

 

惠美

「そうだけど〜」


 優しさが台無しだよ!!!!


 店を出て、克慈の車に乗り込む。

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