♥ 提案 3 / 嵩橋 善朋
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「 惠美ちゃん、家までは送れないけど、最寄り駅までなら送って行こうか? 」
有り難い言葉を掛けてくれたのは、私と共通の趣味友達の善朋。
友達の少ない私のプライベートで親しい唯一の異性友達で、貴重な存在なんだよね。
私に関しては趣味と言える程ではないかも知れないけど、善朋は私以上に好き者なの。
雑誌,漫画,グッズ,フィギュア,ゲーム,CD,DVD…等々を集めるくらい、特撮モノを愛し過ぎちゃってるんだ。
私が特撮モノを好きになったのは、兄の影響が大きいと思うんだよね。
兄も善朋と同様に、ウルトラマンシリーズ,スーパー戦隊シリーズ,メタルヒーローシリーズ,仮面ライダーシリーズ,怪獣シリーズ…等々の特撮モノが好きだった。
未だ私が小さかった頃、しょっちゅう兄の後ろにくっついて、兄の横に座っては、一緒に特撮モノのTVを夢中で見ていた。
兄の横は何時だって、私の特等席だったんだ。
…………そう、彼奴が来る迄はね──。
彼奴の事は、どぅでもぇぇよね?
思い出したくもない奴だから!!!!
話を戻そう────。
高校を卒業しても、私ときたら特撮モノから卒業する事は、なかなか出来なくて……、今でも録画をして後から見たり、時間があればTVで見たりしている。
善朋が特撮モノを好きだと知ったのは、高校2年生の夏休みだったな〜。
克ちゃんに付き添って貰って、一緒に≪ 特攻戦隊ガンダマン ≫の映画を観に行った時にモ◯ラ映画館でバッタリ会っちゃったんだ。
善朋とは、それ以来の仲なのだ。
女子で特撮モノが好きなんて、クラスメートに知られたら確実に笑い者か苛めのターゲットにされていたんじゃないかと思うんだ……。
善朋も学校内では、特撮モノ好きだと知られないように振る舞っていたし、御互いに軽い挨拶くらいで済ませて、接点が無いようにしていたっけ。
…………懐かしいなぁ。
惠美
「 ありがと〜、朋ちゃん♪
……でもねぇ、最寄り駅から自宅までは、バスで50分くらい掛かるんだよね……。
最寄り駅に着けた頃にはバスも走ってないから、駅で野宿をする事になっちゃうんだよ〜。
……声を掛けてくれたのに御免ね 」
善朋
「 あ〜……そっか。
最寄からバスに乗らないと帰れないんだっけか。
確か、バス停から自宅までは徒歩……だっけ? 」
惠美
「 ううん、自転車で10分だよ。
徒歩だと25分くらい掛かるの。
バス停に設置されてる自転車置場は屋根が無いから、雨や雪が降ると自転車がベトベトに濡れちゃうんだよね。
いい加減、屋根を取り付けてほしいよ! 」
善朋
「 切実な願いだね。
う〜ん……そうなると、僕の家に──ってわけにもいかないしな…… 」
蓉子
「 ねぇ、善朋君は智沙に興味は無いの? 」
惠美
「 蓉子ったら〜。
男の人が皆、智沙を好きになるわけじゃないよ? 」
善朋
「 相手にされたとしても、僕は断るよ 」
蓉子
「 どうしてなの?
善朋君 」
善朋
「 そんなの、別にいいだろ?
好みじゃ無いだけだし。
それ以外に理由がいるの? 」
蓉子に対して善朋の口調がキツい。
善朋は智沙が嫌いだから、蓉子の質問にカチンと来たのかな?
…………これは話題を変えた方がいいよね?
惠美
「 ねぇ、朋ちゃんも椅子取りゲームしてくの? 」
善朋
「 勿論、帰りたいよ。
けどなぁ……季喜が参加する気満々なんだ。
だからさ、僕も参加するしかないんだよ…… 」
惠美
「 あぁ、そっか。
朋ちゃんはトッキーと来てたんだもんね。
帰りも送って行かなきゃ、だもんね〜 」
善朋
「 まぁね、仕方無いって諦めるしかないよな…… 」
惠美
「 朋ちゃんの気持ち分かるぅ〜!
私も直ぐにだって帰りたいもん!! 」
蓉子
「 智沙を克慈さんから離す事が出来たらいいのにね。
克慈さんは惠美の彼氏なのに智沙ったら、見せ付けるように腕を組んだりして!!
惠美は彼女なんだから、遠慮しないで智沙にビシッと言ってあげたら? 」
蓉子は胸の下で腕組みをして、溜め息混じりに言ってくれる。
くぅぅっはぁぁぁああああっーーーーーーーーーー!!!!
蓉子さんの大きなお胸たんがタユンと揺れるよぅ……。
うっ、羨ましくなんか…………ないんだからねっ!!!!
惠美
「 蓉子、それはいいから。
克ちゃんは大人だし、弁えてると思うから…… 」
蓉子
「 惠美………… 」
惠美
「 もう、蓉子ってば〜心配のし過ぎだよ〜。
それに克ちゃんと私は、蓉子が思っているような関係じゃ── 」
善朋
「 惠美ちゃん!
ちょっと此方に来て!」
惠美
「 えっ?
朋ちゃん?? 」
突然、善朋に手首を掴まれて、引っ張られた。
惠美
「 朋ちゃん、どうしたの? 」
善朋
「{ …………富茅は知らないんだろ?
惠美ちゃんと瀬戸瀬さんが付き合っていないって事をさ。
言わない方がいいんじゃないかって思ってさ }」
惠美
「 …………朋ちゃん 」
善朋は唯一、克慈と私が付き合っていない事を知っているから、心配してくれたみたい。
なんて優しい友達なのぉ!