♥ 提案 1 / 安条 智沙
?
「 ねぇねぇ、今から皆で、イストリゲームしようよ〜! 」
そう言い出したのは友人の1人── 仲良しこよしの友達ではなく、大して親しくない方 ──の安条智沙だった。
智沙は私達の中で、1番背の低い── 低いと言っても、146cmだけどね ──女の子だ。
無邪気な笑顔が可愛い智沙は、皆の妹的存在だったりするんだけど……、好奇心旺盛で偶に突拍子もない事を言い出しちゃう困ったちゃん── 私から見てだけど ──でもある。
なもんだから、私達は何故だか智沙の言い出した “ 椅子取りゲーム ” なる遊びをする事になったのだ。
本っ当に迷惑な提案だよ!
全く以てやりたくない!!
椅子取りゲームって、子供の遊びじゃない?
学生でもないのにしたくないんですけど!!
何で椅子取りゲームなの?
態々集まってする程の遊びですか〜?
時間の無駄過ぎて有り得ないよ!
阿っ呆らしいったらありゃしない!!
毎回毎回、智沙の思い通りになっちゃうのには、いい加減ウンザリしちゃうよ!!
まぁ……でも、それも仕方無いのかも知れない──と思う。
可愛い子の特権みたいな?
私はさっさと帰りたいけれど、私を自宅まで送ってくれる運転手サマは〜~~………。
そう思いながら視線を動かしてみると────。
居〜ま〜し〜た〜〜〜、私の運転手サマ。
案の定、やっぱりか!
生憎にも智沙にベッタリとされていたぁぁぁぁああああああああ!!!!
珍しく他人の提案に乗り気な私の運転手──克慈。
彼の腕には、智沙が細い腕を絡めて喜んでいる真っ最中です!!
智沙の胸は克慈の腕に「 これでもかっ! 」って、ぐらいに押し当てられている。
………………うん、あれは態とだ。
態と見せ付けているに違いない。
あんなに堂々と異性の腕に自分の腕を押し当てる女子が居ますかー?
…………克慈が、どうかは知らないけれど、智沙は克慈の事を余程気に入っているんだろうな。
「 克慈さん好き好き 」オーラが小柄で華奢な智沙の身体から半端なく放たれているもんね〜……。
智沙が克慈を狙っているって、見た人ならそれとなく感じられると思う。
克慈に対して積極的なアプローチをしないのは、もしかしたら私に遠慮をしているのかも?
………………ははは、そんなわけ無いか。
だってあの智沙だもんねぇ。
私に遠慮してくれるような奇特な子じゃない事を私はちゃんと知ってるんだからね!!
?
「 惠美、惠美も勿論行くでしょ? 」
智沙に腕を絡められたままの克慈に声を掛けられた。
…………ははは、克慈めぇ!!
すっげぇ満更でもない顔してやがるよ!!!!
フェロモンですか?
智沙の華奢な身体から醸し出される女性フェロモンに殺られてるんですか!?
惠美
「 行かないよ!
克ちゃんは私の運転手でしょ?
椅子取りゲームなんかに参加しないで、私を家に送ってよ!
私は家に帰りたいよ!! 」
ふふん、言ってやりましたよ!!
河豚みたいに両頬をプクッと膨らませた智沙が、憎々しげに私を睨んでいる。
おおっ、こわい、こわい。
智沙は私を睨みながら、更に胸を克慈の腕に押し当て始めた。
克慈の腕に自分のフェロモンを擦り付けるように、胸を上下に揺らしながら、上目遣いを忘れずに、克慈へ何かを伝えている。
雌犬のマーキングですか?
智沙は克慈に一体何を吹き込んでいるのだろうね?
克慈ってばぁ〜〜〜、鼻の下は伸ばしてないけど、すっげぇ嬉しそうにニヤニヤしちゃってぇ〜〜〜、厭らしい!!!!
男はそんなに胸が好きなのか?
胸なんて脂肪の塊じゃんかよ!!
…………何だ、コレ。
これじゃあ、まるで私が智沙を敵視して、ヤキモチ妬いてるみたいじゃんか!!
最っ低だ〜〜、有り得ないよ、自分!!
智沙は普段でも異性への猫被りっ子度は高いけど、克慈に対してだけは、その数倍の猫被りっ子を披露してくれている。
私には到底真似は出来ないし、しようとも思わないけれど、あの猫被りっ子度に対しては言葉も出ないんだっちゃ……。