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研究机を整理していたら、懐かしいものが出てきた。数年前、私が研究に没頭していた頃の名札だ。今より少しだけ初々しい顔写真と……私の名前だ。
「“久瀬 響”……」
気がつけば、私は自分の名前を呟いていた。自分以外の人間がいないこの研究所、この空間で人生を終えようとしている私にとって、これが自分の名前を聞く最後の機会になるのかもしれない、と思った。
アイはガラス管をしきりに小突いている。ここから出たいのだろうか。私も出してやりたいが、まだ彼女の身体が不安定なのが心配だ。研究所の敷地内……というかこの島には森もある。彼女を自由にさせて、存分に生きる楽しさを早く知ってもらいたい。