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アイ

 ちぎれた腕は、それでも注射器の中身を注入していく。アイの身体に薬品が注射されていくのを見ながら、私はこの4ヶ月を思い返した。


 亜依が死んで、4ヶ月。アイが生まれて、4ヶ月。

 全てはあの発見からだった。夢のような出来事が可能になるはずだったはっきり。それが引き起こした、思い出したくない事件。あいつが原因で……そして私が原因で、彼女を――亜衣を殺してしまった事件。私のせいで、亜依は殺された。

 だから、償おうと思った。怒りと絶望の中、1つの誓いを自らの中に立て、死んだ亜依を生き返らせようとした。


 私の関わった実験で犠牲になった亜依を、私の手で完全なる存在にしてやる、と。


 研究仲間は皆反対した。引き留めようとした。当然だった、下手をすれば亜依は地球上で最も危険な存在になりかねなかったからだ。私を殺してでも、止めようとする者が現れてもおかしくない状況だった。

 だが、私はこの島に残った。

 この島で、私の属していた研究グループは新種のウィルスを研究考察し、データを集めていた。医療に革命を及ぼしかねないほどの期待を胸に、皆研究に勤しんでいた。しかしその研究は中止となった。研究グループの1人が、亜依の身体を使い生体実験を行ったからだ。亜依は怪物と化し、そしてあっさりと死んだ。

研究グループのメンバーはウィルスの流出感染を恐れ、この島を投棄する事にし、去った。

 しかし無理やりこの島に残ったのが私だった。私は亜依の亡骸と共に、研究室にこもった。

 何日間、亜依の亡骸を相手に手術を施し続けたのだろう。無心で、ただただ亜依の息を吹きかえらせる事だけを考えていた。亜依の身体は化物……“歪獣”と化していたため、すぐに腐敗する事もなく。

 アイとして生き返る事ができた。



 注射器の中身がなくなったのを見て、私はこの4ヶ月を思い返すのを止めた。


 アイは空を仰ぎ見たまま動かない。大粒の雨がアイの顔に降り注ぐ。この薬品の効果はすぐに出る。アイの体内では既に薬品が効果を発揮し、アイの理性を崩壊させているはずだ。早く私を怨め。敵だと思え。殺してくれ。

 私が崩壊する前に、お前が命の灯火を消してくれ。

 歪獣と化した私の身体は強制的に組み替えられ、壊れ、崩れていく。嫌だ。こんな死に方は嫌だ。死ぬのなら、死ぬのならアイ、お前に殺されたい。

 アイはびくりと身体を震わせた。小さく喉を鳴らす。

 激しい音と共に落雷が起きた。暗かった世界が刹那、光の世界と変わる。

 光が消え去り視界を取り戻すと、アイが私を見ているのが分かった。じっと見つめてくるその目には怯えがない。恐れがない。

 圧倒的な、威圧感がある。

 本来の姿に戻った。美しい。私を掴む手の力が強まるのを感じる。そうだ。そしてアイはそのまま、私を一気に――




 ――一気に、私の身体を抱きしめた。

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