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 日記をつけるという習慣がまだ身に付いていないようだ。研究に夢中になっていたせいでもあろう。

 アイは今、私の腕に抱かれている。慎重に扱わないといけない、それは分かっているのだが、もう一度直に触れたくてしょうがなかった。日記が書きづらいのは気にしない。

 アイの身体には生々しい傷跡が数ヶ所あった。腕のあった場所、脚のあった場所、尾が生えていた場所。ねじ切れたような、吹き飛ばされたような、そんな傷跡。しかし既に新たな皮膚は形成され、急激な身体の成長と共に凄まじい速さで修復されつつあった。そうやって眺めていると、アイがすい、と首をあげて私を見てきた。

 アイの口はまだ未熟なのだろうか。開く事すらしようとしない。牙のように固いギザギザとした口のラインを見る限り、肉くらいならいとも簡単に噛み千切れそうにも見えるのだが。まだ固形物を消化できるほど、消化器官が発達していないのだろうか。

 そういえば、アイはまだ、生まれて1度も排泄をしていない。という事は、取り込んだ栄養は全て、身体の一部としているわけだ。普通なら有り得ない、効率の良さだ。肉を摂取した方が得られるエネルギーは確実に多いのだが、まだ胃や腸の働きが不十分なのだろう。まだ生まれ変わったばかりだ、無理もない。

 しかし、口吻の先端は時折金属のように硬化するようで、そこはまるで幼体とは思えない。強化ガラスでなかったら、このガラス管もとっくに割られているのかもしれない。

 彼女はどう進化していくのだろう。今、この瞬間にも私の腕の中で確実に細胞分裂し、未知の成長を続けている。

 私は身震いした。

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